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キャラが描かれた野菜の袋を集め続けた数は500以上!その研究が想像以上に奥が深いものだった

2026.03.30

日本は、名実ともにキャラクター大国。世界的に知られる有名キャラもいれば、身近にありながら目に留まりにくいキャラもいる。

「農キャラ」は、後者の代表格だろう。これは、野菜や果物のパッケージに描かれているキャラのことだ。

多くの方は、「あ、そういえば、そんなキャラがあったなぁ」と思われるはず。でも、具体的にどんなキャラかは、なかなか思い出せない。

それほど存在感が希薄だが、われわれの日常にしっかり根付いている……そんな農キャラを研究する、おそらく日本で唯一の人にお話を伺った。

頭がピーマンの恐竜が心に刺さる

その方は、奈良市在住の田辺藍さん。農キャラの名付け親であり、在野の研究者であり、その成果を発信する日々を送っている。

興味をもったきっかけは 10年ぐらい前だという。神奈川県で大学生として一人暮らしをしていたある日、スーパーで買い物をしたときに目に飛び込んできたのが、ピーマンの入った袋。田辺さんは、そのときのことを次のように語る。

「その袋にはグリーンザウルスという名の、頭はピーマン、体は恐竜のキャラがいました。こんなキャラいたんや。シンプルに可愛いなと思いました。なんとなくその袋を捨てられず、むしろキャラの入った袋を次々と集め出して、次第にのめり込んでいきました」

田辺さんの心を捉えたグリーンザウルス

食べるとワンセットの収集道

こうして田辺さんが集めたパッケージは500袋を超える。とはいえ、世の中にある農キャラは、それよりはるかに多く、収集活動は道半ばにも達していないそうだが、理由がある。

「中身をおいしく食べることも研究の一環なので、簡単には数を集められないですね。特に、収集の旅で転々とすると、買うたびに全部消費するのは無理です。

それで、宅配で自宅に送ったり、ゲストハウスで調理して食べたり、工夫はしていますが、なかなか難しいものがあります。

それに、スイカのようにすぐに食べきれない大きさで高価なものだと、何個も買えません。どうしても安価な野菜に偏ってしまいがちになりますね」

そんな田辺さんだが、現時点での農キャラ研究は、分類学的なことを主体にしているそうだ。

「一口に農キャラと言っても、落書きのようなユルすぎるキャラもあれば、漫画やアニメ作品のしっかりしたキャラのコラボなど、多種多様です。

顔だけのキャラ、胴体もあるキャラといった形状や、『シャキシャキやで!』といったセリフの有無など、分類していくことで、新たな知見を得られ、考察が深まっていきます。

このように研究を続けていると、農キャラの背景にある様々な物語が見えてきます。また、野菜のパッケージデザインには、社会情勢や大衆文化の変遷が関わっていて、社会学的に見ても興味深いですね」

田辺さんのコレクションの一部

JAから個人経営の農家まで多様な作り手

ところで、農キャラはそもそも誰が生み出しているのだろうか? 一番気になる点を田辺さんに聞いた。

「JAが作成したキャラが最も多いと思われます。全国に約500のJAがあり、『JAキャラクターランドWebサイト』に掲載されているものだけで62体あります。実態としては、それよりずっと多くのJA発農キャラがあります。

もう1つ目立つのが、自治体が作ったキャラです。熊本県のくまモンが、様々な農産物のパッケージに使われているように、既存のマスコットキャラが農キャラになることもあります。

それらとは別に、農産物のPRのために生まれたキャラもたくさんいます。有名なのが、2005年にやなせたかし氏がデザインした、高知野菜をPRする「高知の野菜11人きょうだい」。

野菜の特徴をとらえたユニークなキャラが11体もいて、華やかです。これらは高知県のほか、県下のJAグループなど複数の団体が共同制作したものです。単に商品作物そのものだけでなく、地域全体のPRをねらったものも多いですね」

やなせたかし氏がデザインした「高知の野菜11人きょうだい」

「公的な組織だけでなく、種苗とか作物の生産工場を持つ企業も農キャラを生み出しています。

おそらく最も有名な例が、ゼスプリのキウイブラザーズ。誰もが一度は目にしたことがあるかと思います。そして、キノコ生産大手のホクトのキノコキャラ「きのこ組」も知名度は高いですよね。

それに、個人経営の農家さんの作ったキャラもバラエティーに富んでいて、素朴だけれど印象に残るものも結構あります。

また、デザインのノウハウのない農家向けに、農キャラの制作・印刷を請け負うところもあって、そうした企業発のキャラも数えきれないほどあると思います」

個人経営の農家がつくったキャラの例

田辺さんのお話を聞けば聞くほどに、農キャラのディープな世界にはまり込んでいく。インタビューの当初は、「野菜の包装にゆるすぎるキャラがある」以上の話は引き出せないかと思ったが、存外大きな広がりをもつカルチャーだとわかり、ちょっと得した気分になった。

さて、その田辺さんだが、農キャラの研究成果をZINE(ジン=個人制作の冊子)として刊行している。自身の公式サイトのほか、文学フリマといった即売会でも販売されているので、興味のある方はチェックしてみるといいだろう。

公式サイト:https://no-chara.com/wordpress
Instagram:https://www.instagram.com/nochara_nolife

取材・文/鈴木拓也

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老舗翻訳会社役員を退任後、フリーランスの仕事人となる。ライターとして手掛けるテーマは、トラベル、ガジェット、著名人取材、アートなど幅広い。また、クリエイターとしての活動にも力を入れている。ライフワークは秘境と神社仏閣めぐりで、撮った写真をInstagramに掲載している。 https://www.instagram.com/happysuzuki

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