■連載/ヒット商品開発秘話
学生にとってマストな筆記具といってもいいのが蛍光ペン。ペンケースの中にはつねに、色違いで複数本常備されていることだろう。
しかし、よく使うだけに不満も多いのではないだろうか? そんな学生に向き合い、蛍光ペンの不満解消に乗り出したのがパイロットコーポレーション。挙がってきた不満を解消する対策を盛り込んだ『KIRE-NA(キレーナ)』を2024年10月に発売したところ飛ぶように売れていった。2025年末時点で国内・海外合わせて1000万本以上が出荷されている。
時代が進んでも変わらない蛍光ペンの不満
開発に6年要した『KIRE-NA』は、こすると消える蛍光ペン『フリクションライト』に次ぐ主軸商品として企画された。
「蛍光ペンは競合他社が非常に強いので、強力な商品を企画・開発し、『フリクションライト』との2本立てで市場を獲ることを目指すことにしました」
『KIRE-NA』の企画・開発経緯をこのように明かすのは、グローバルマーケティング本部グローバル企画部 筆記具企画第一課 課長の伴野晃氏。新たな蛍光ペンの特長にできることは何かを見定めるため、学生を対象に蛍光ペンに対する不満を調査したところ、次のような結果になった。
1位 線がまっすぐ引きにくい
2位 ペン先が汚れる
3位 インクが乾きにくい
4位 手や紙が汚れる
5位 文字が滲む
6位 インクがすぐなくなる
蛍光ペンに対する不満の多くは1位と2位が多数を占め、3位以下は拮抗。1位と2位もほぼ差がなく、同率1位といっても差し支えないものだった。
この結果をどのように捉えたのか? 伴野氏は次のように明かす。
「企画の立場としては、『やっぱり』というのが素直な感想です。〈線がまっすぐ引きにくい〉〈ペン先が汚れる〉といったことは、私たちも実感していたところでしたので、時代が進んでも変わってないことを実感することになりました」
不満のトップ2を一気に解決
『KIRE-NA』の開発は、蛍光ペンに対する不満の1位と2位を必ず解決することを目指した。
最大の不満点であった線がまっすぐ引けないことについては、解決策を設計開発部門の中でディスカッションを繰り返し、アイデアを出し合った。通常であれば担当者を1人決めて設計を担当してもらうところだが、課題があまりにも大きかったため部門で知恵を絞った形だ。
さまざまなアイデアを比較検討して採用することにしたのが、ペン先の左右に「キチントガイド」と呼ばれるプラスチック製のガイドを設けること。紙面に「キチントガイド」が紙面に当たると筆跡と筆幅が安定し、まっすぐな線が引きやすくなるという。
また、よくしなる特殊なナイロンチップを採用。チップの全幅がしっかり紙面に当たるため、書き出しから書き終わりまで同じ線幅で安定した線を引くことができるようになった。
これらにより、曲面になりやすい教科書やノートなどの内側でもチップの全幅がしっかり筆記面に当たりキレイな線が引けるようになる。
「ペン先にガイドを設けた蛍光ペンなどこれまでなかったので、何度も試験を繰り返したと聞いています。線を引く時はペン先に荷重がかかること、紙面にペン先が当たる角度は人それぞれ異なることを踏まえつつ、ペン先が汚れることの改善も視野に入れなければなりませんでした」
『KIRE-NA』のペン先についてこのように語る伴野氏。試作検証の段階ではペン先に荷重がかかりすぎ、「キチントガイド」が潰れてしまうようなこともあった。
ペン先の汚れ防止については、「キチントガイド」でペン先にかかる荷重を逃すことと、新開発のインクで実現した。新開発のインクは速乾性が高いのが特長で、ボールペンのインクの滲みが抑えられてペン先を汚れにくくするほか、手や紙面も汚れにくくした。
親指と人差し指がかかるところを平たくしたのも、線をまっすぐ引くための工夫だ。持ちやすくすることで筆記時にペン先にかかる荷重を逃す効果がある。親指がフィットするため、力が入りすぎることなくまっすぐスーッと線を引くことができるようになるというわけである。
「キチントガイド」がついたペン先を初めて見た時に「『えっ』と思った」と明かす伴野氏。「不満の1位と2位を同時に解決しようとしたことが、開発を難しくしました。線をまっすぐ引けるようにするだけであれば、『キチントガイド』には至らなかったかもしれません」と話す。







DIME MAGAZINE

















