2028年までに全事業所での実施が義務化されるストレスチェック制度。本制度は労働者自身がストレス状態を把握し、早期の対処や医師の面接指導、職場改善を通じてメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としている。
しかし、制度導入から10年が経過した現在、精神障害の労災支給決定件数は導入時の2倍以上に増加しており、メンタル不調の「未然防止」という本来の目的が十分に果たされているとは言い難い状況だ。
そこでSmart相談室は、従業員50名以上の企業に勤務しており、直近3年以内にストレスチェックを受検した経験がある会社員430名を対象に、「ストレスチェック受検者の認識と行動に関する実態調査」を実施したので、結果を紹介しよう。
ストレスチェック受検者の3人に1人が高ストレス判定経験あり。ストレスチェックをすべて“本音”で回答している人は35.3%
「Q1. あなたは、ストレスチェックに対してどのようなイメージを持っていますか。最も近いものをお選びください。」(n=430)と質問したところ、「自分の状態を知る良い機会」が36.0%となり、制度の目的の一つである従業員のセルフケアの促進には一定の理解が得られているといえる。
一方、「形式的であまり意味がないもの(18.6%)」、「義務的に受けているだけのもの(12.1%)」という回答が続き、制度の形骸化が課題として浮き彫りとなった。
「Q2. あなたはストレスチェックを実施する中で「本音」で回答していますか。」(n=430)と質問したところ、「すべて本音で回答している」と回答した人は35.3%という結果に。
正確なストレス状況を把握するには本音での回答が不可欠だが、6割以上の従業員が本音ではない回答をしているという実態が見えてきた。
本音で回答しない理由、「会社が形式的にやっているように感じる」「産業医面談を受けないといけなくなる」が各27.3%で同率1位
Q2では「あまり本音で回答していない」「ほとんど本音で回答していない」と回答した人に対して、「Q3. ストレスチェックに本音で回答していない理由を教えてください。(複数回答)」(n=66)と質問。
「高ストレス者と判定されると産業医面談を受けないといけなくなるから」が27.3%、「会社が「法令遵守」のためだけに形式的にやっているように感じるから」が27.3%、「高ストレス判定されると人事異動や今の仕事から外される可能性があるから」が25.8%という回答が得られた。
ここから、従業員側が抱く「調査への不信感」や「不利益を被ることへの不安」が、回答を躊躇させる主な要因となっていることが推察される。
Q2で「あまり本音で回答していない」「ほとんど本音で回答していない」と回答した人に対して「Q4. どのような環境や仕組みがあれば、ストレスチェックに本音で回答できるようになると思いますか。(複数回答)」(n=66)と質問したところ、「完全に匿名で、会社の人には知られない保証」が25.8%、「ストレスチェックを受けるメリットの明確化」が22.7%という回答となった。
多くの従業員は、結果が評価や処遇に直結しないという心理的安全性の担保と、自分自身の健康維持に役立つという受検意義の共有を望んでいる実態が浮かび上がった。
「Q5. あなたは、これまでのストレスチェックにおいて、高ストレス判定を受けた経験がありますか。」(n=430)と質問したところ、「ある」が33.7%、「ない」が62.1%という回答となり、受検経験者の約3人に1人が「高ストレス判定」を経験していることが判明。
Q5で「ある」と回答した人に対して、「Q6. あなたは、高ストレス判定を受けた後、何か具体的な行動をしたことがありますか。」(n=145)と質問したところ、「ある」が51.7%、「ない」が47.6%という結果に。
高ストレスと判定されながらも、約半数が適切なケアや対処を行っていないという実態が見えてきた。
Q6で「ある」と回答した人に対して「Q7. 高ストレス判定を受けた後に実施した具体的な行動を教えてください。(複数回答)」(n=75)と質問したところ、「高ストレス判定を受けて案内される産業医面談を受けた」が52.0%、「社内の相談窓口を利用した」が36.0%という回答となった。
Q6で「ない」と回答した人に対して「Q8. 高ストレス判定を受けた後、具体的な行動を起こさなかった理由を教えてください。(複数回答)」(n=69)と質問したところ、「相談しても状況は変わらないと思ったから」が43.5%、「ストレスチェック自体が形式的なもので意味がないと思ったから」が31.9%、「いきなり産業医に相談するのはハードルが高いと感じたから」が23.2%という結果に。
高ストレス判定を受けていない受検経験者でも4割超がメンタル不調を経験!従業員が求めるサポート、「いつでも気軽に相談できる窓口」が最多
Q5で「ない」と回答した人に対して、「Q9. これまでに、ストレスチェックで高ストレス判定は出なかったものの、実際にはメンタル面の不調や強いストレスを感じたことはありますか。」(n=267)と質問したところ、「よくある」が8.6%、「ときどきある」が33.0%という回答となった。
この結果から、ストレスチェックの判定結果のみを基準としたケアでは不十分であり、全従業員を対象とした包括的なサポート体制の重要性がうかがえる。
「Q10. あなたは、自分のメンタル面での不調に早く気づくために、会社や周囲にどのようなサポートがあれば良いと思いますか。(複数回答)」(n=430)と質問したところ、「不調でなくともいつでも気軽に相談できる窓口」が38.1%、「匿名で相談できる窓口」が25.6%という回答となった。
■臨床心理士 四方陽裕氏による解説:高ストレス者の約半数が対処せず。社内リソースの限界と社外相談窓口の必要性
ストレスチェックの実施自体が目的化してしまい、本来の目的であるメンタルヘルス不調の予防に取り組めていないという課題は、人事・労務のご担当者のみなさまからも頻繁に伺う内容です。
メンタルヘルス対策として、ストレスチェックや産業医面談、人事・労務担当者等による相談窓口の設置は多くの企業で採用されています。
その一方、高ストレス判定を受けた方の約半数(47.6%)が「何も行動していない」という結果や、その理由として挙げられた「相談しても状況は変わらないと思ったから」(43.5%)という諦め、「いきなり産業医に相談するのはハードルが高いと感じたから」(23.2%)、「会社や上司に知られたくなかったから」(15.9%)という社内相談への心理的ハードルの高さを鑑みると、従業員の多様化する悩みに対して、社内のリソースだけで対応することには構造的な限界があるといえます。
厚生労働省の定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」においては、社内外に支援の網を広げることにより、メンタルヘルス不調になった後のケアだけでなく、不調になる前からのケア(未然防止)が推奨されます。
今回、従業員が企業に求めるサポートとして「不調でなくともいつでも気軽に相談できる窓口」(38.1%)や「匿名で相談できる窓口」(25.6%)が挙げられたことからも、事業場外資源の活用によって、従業員が健康なときから「社内の評価を気にせず安全に」相談できる環境を企業が提供することの価値はますます高まっているといえるでしょう。
調査概要
調査名称:ストレスチェック受検者の認識と行動に関する実態調査
調査方法:インターネット調査
調査日:2026年2月19日
有効回答:従業員50名以上の企業に勤務しており、直近3年以内にストレスチェックを受検した経験がある会社員430名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない。
関連情報
https://smart-sou.co.jp/counseling
構成/Ara







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