スマートフォンやSNSの普及で誰でも手軽に情報の発信や収集が行える時代になり、消費者庁が発表した「消費者意識基本調査」でもSNSを情報収集目的で活用している人が84.1%ともっとも多かったという。多くの人がSNSから情報を得ており、企業はSNSやインターネット上にある悪評やクレームなどの書き込みが事業に悪影響を与えないように適切なレピュテーションマネジメントをして、社会からの評判の維持・向上させる必要性が増している。
AI与信管理サービスを提供するアラームボックスは、1万778社を対象に2025年下半期にSNSなどインターネット上で投稿された各企業に関連する口コミや評判の中から悪評・クレームを抽出して、「2025年下半期 インターネット上で悪評・クレームが多い上位10業種」を発表した。合わせてこの調査を開始した2022年以降の業種別の順位推移についても公開し、悪評・クレームが多い業種の実態を発表した。
2025年下半期 インターネット上で悪評・クレームが多い業種ベスト10
2025年下期の業種別ランキングでは、無店舗小売業が1位だった。無店舗小売業や通信業は消費者との接点が多く、取引や問い合わせが繰り返し発生する業界のためにクレームが多く見られたという。宿泊業、医療業、飲食店など接客や説明などを人による対応がサービス品質に影響しやすい業界も上位にランクインした。
業種別 インターネット上の悪評・クレーム件数と順位の推移
過去4年間のデータから順位や件数を比較すると1社あたりの平均クレーム数の推移では、全体平均は2022年上期の0.41件から2025年下期には1.42件へ上昇して、4年間でおよそ3.5倍も多くなっている。無店舗小売業は、2022年上期から2025年下期までの調査期ですべて1位だった。だが、上位10業種では順位に変動があり、宿泊業は調査期ごとに順位の上下が大きく、2023年上期には10位で落ち着いたが再び上位圏に復帰している。医療業は、2022年下期以降から継続して上位10位以内入りしており、直近では4位前後で推移している。通信業も2023年下期以降に上位化して、2025年下期にはトップ3になっている。
悪評・クレームが多いトップ5を分析!
ここからはランキングの上位5業種に関する情報を紹介していこう。
1位の無店舗小売業は、1社あたりの平均悪評・クレーム数は6.47件で、主な事業としては通販事業がある。多くの事業者がネット上で複数のECサイトを運営しており、顧客との接点が多いのでネット上の悪評・クレームの平均件数も多くなる傾向がある。投稿内容では、商品に関するものが多く、不満の内容では品質や状態への指摘に加えて、説明内容と実物の差異や期待していた内容との相違などが挙げられている。注文後の発送や配送に関する不満も一定数あるようで、到着までの期間や梱包状態など商品注文から届くまでの過程全体に対する評価が悪評につながっているようだ。さらに問い合わせへの対応や返品・交換・キャンセル時の対応に関する不満も多く、クレームでの頻出単語では「購入」、「商品」、「発送」、「連絡」、「対応」といった言葉が目立ったという。購入から発送までの進捗や対応方針を適切に伝えることで、不要な悪評・クレームの抑制につなげる必要がありそうだ。
2位の宿泊業は、1社あたりの平均悪評・クレーム数が6.15件。主な事業は旅館やホテルなど。宿泊業は悪評・クレームが2番目に多い業種になったが、投稿内容では客室や施設の状態に関する指摘が多く、清掃状況や設備、期待していた内容との違いに言及する意見があった。食事や温泉、共用設備など滞在中に利用するサービスに関する悪評・クレームも一定数あったようだ。フロントやスタッフの対応に触れた投稿も多く、接客時の印象や説明の受け取り方が評価に影響していた。クレームでの頻出単語では、「部屋」、「スタッフ」、「対応」、「残念」、「利用」などが挙がっており、宿泊体験全体に関わる内容が幅広く投稿されているようだ。
3位の通信業は、1社あたりの平均悪評・クレーム数は4.75件。主な事業は、携帯キャリア、ネット回線サービス、プロバイダ代理販売店など。投稿内容では、契約内容や料金体系に関する認識の違いや手続きの分かりにくさに起因する指摘が多かったという。契約変更や解約時の条件と請求内容に関する説明不足を背景とした不満が一定数あるようだ。問い合わせ対応に関する指摘もあり、解決までに時間を要したことや案内の分かりづらさも不満につながっているようだ。通信サービスそのものの品質というよりも、契約手続きや請求対応、サポート対応などに関心や不満が集中する傾向があるようだ。
4位の医療業は、1社あたりの平均悪評・クレーム数は4.51件。主な事業は、病院、美容クリニック、歯科矯正、医療脱毛など。町の病院や美容関連のクリニックを含む医療業も悪評・クレームが多い業種といえそうだ。投稿内容では、事前説明や対応姿勢、契約・料金に関する不満が目立ったという。診察やカウンセリングで要望が十分に聞かれない、医師や受付の対応にばらつきがあるといった指摘も多かった。美容・脱毛クリニックへの不満の特徴は、施術内容や効果、追加費用についての説明不足、後出しの条件提示に対する不信感など。勧誘の強さや広告表現と実態の乖離、患者の心理面への配慮を欠いた言動を問題視する声もあるようだ。
5位の各種商品小売業は、1社あたりの平均悪評・クレーム数は4.26件。主な事業は、百貨店や総合スーパーなど、衣食住にわたる各種商品を一括して販売する小売業など。投稿内容では、商品そのものよりも店舗での接客対応やアフター対応に起因する不満が多く発生していたという。店員の説明不足や対応のばらつき、問い合わせ時の態度、返品・交換対応やポイント、価格表示をめぐる認識の相違が不満につながっているようだ。売場ごとの対応品質の差や混雑時の案内不足を指摘する声もあり、対応のばらつきがクレーム発生に影響していることも推測できる。
1位となった無店舗小売業は、消費者との接点の多くがオンライン上で完結するため、悪評やクレームがネット上に表出しやすい特性がある。最近は1社あたりの悪評・クレーム件数が減少しており、対応体制の整備や情報提供の改善が進んでいる可能性はある。宿泊業や娯楽業など対面でのサービス提供を前提とする業種は、コロナ後の人流回復により利用者が戻ってきたことで、体験の質や対応への不満が再び表面化しやすくなっているようだ。コロナ禍で一時的に抑えられていた対面型サービスへの期待や評価が生活様式の回復とともに可視化されたことも上位になった要因かもしれない。通信業は、悪評・クレームが増加傾向にあり、これは仕組みの複雑さに加えて利用者への説明不足やトラブル発生時のカスタマーサポートの対応不足が背景に考えられる。
企業に向けられる悪評・クレームは、一時的なトラブルというわけではなく、企業の運営体制や顧客との信頼関係を映し出す中長期的なリスクを示唆する情報といえる。財務指標や公開情報では捉えきれない兆候を補完するものとして、ネット上の声を含む定性情報を与信管理や取引先の実態把握に活用していく視点も必要といえそうだ。
『2025年下半期 インターネット上で悪評・クレームが多い上位10業種』調査概要
対象企業:アラームボックスでモニタリングしていた企業のうちの1万778社
調査期間:2025年7月1日~2025年12月31日
対象データ:インターネット上に投稿された口コミのうち、アラームボックスが「悪評・クレーム」と分類したもの
構成/KUMU







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