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「にじさんじ」のANYCOLOR、売上の7割以上を物販が占め配信収入は1割未満に、今後の経営戦略は?

2026.03.24

VTuberマネジメント事務所「にじさんじ」を運営するANYCOLORが、3月11日に通期純利益の下方修正を発表しました。従来予想比で、4~5%程度下がる見込み。見通しを引き下げた主要因は在庫の評価損です。

今回の決算発表は、ANYCOLORが小売業の性格を強くしたことを示す印象的な内容でした。中期的には在庫管理の強化が必要になりそうです。

VTuberの過去のイベントグッズの販売は珍しくないが…

ANYCOLORは立て続けに通期業績見通しの上方修正を発表することで有名。それが株価の上昇要因になっていました。今年3月に見通しを引き下げたのは異例。昨年12月に上方修正を行っていただけに、経営陣も予期していなかった様子がわかります。

ただし、利益は引き下げたものの、通期売上見通しは3~5%程度引き上げました。従って、売上が落ちているわけではないのです。

ANYCOLORは第3四半期に9.7億円の棚卸評価損、第4四半期に15億円程度の評価損を計上する見込みです。これが利益を圧迫したのです。

棚卸評価損は、在庫の価値が仕入原価よりも下がった場合に差額を損失計上する会計処理。これまでANYCOLORは、今後の販売予定がないと判断した商品の評価損を計上していました。これはVTuberの卒業などにより、販売が難しい商品を指していると考えられます。

今回は数年前に開催したイベントのグッズなど、販売に適さないと判断されたものが中心。ANYCOLORの釣井慎也CFOは、「会計上は販売予定の有無に関係なく、一定の基準で評価損を計上することを検討しています」とコメントしています。棚卸資産の回転日数などを考慮する予定だといいます。

この表現は少しわかりづらいのですが、売れる・売れないに関係なく、今後は会計上の一般的なルールに沿って棚卸資産を評価しようと考えているものだと解釈できます。

「にじさんじ」の古いイベントのグッズが売れないのかと言えば、そうとも言い切れません。オフィシャルサイトには、過去のイベントのグッズが数多く掲載されています。

VTuberは推し活要素が極めて強く、何かのきっかけでファンになると、推し関連のグッズを買い漁ることは珍しくありません。過去のイベントのグッズは希少性も高いため、欲しいと感じる人もいるでしょう。特に「にじさんじ」はVTuberのライト層の開拓を得意としており、その魅力を知らなかった人が突如としてファンになり、推し活を始めるというケースが少なくないのです。

しかし、一般的な会計ルールの導入を検討しているというところに、ANYCOLORという会社のステージが変化していることを読み取ることができます。小売業の性格が強くなっているのです。

売れ筋は「ボイス」から「ぬいぐるみ」へ

ANYCOLORの2025年11月~2026年1月における物販の売上は107億円で、全体のおよそ7割を占めています。VTuberの主戦場とも言える配信収入は14億円ほど。1割にも達していません。売上構成比率上も小売店に近いものでした。

「にじさんじ」はもともと、デジタルコンテンツの販売に強みを持っていました。上場したばかりの2022年6月に公開した「事業計画及び成長可能性に関する事項」の「コマース(コンテンツ)領域」のページでは、「ボイス」と呼ばれる声を記録したデジタルコンテンツの紹介に多くを割いています。

デジタルコンテンツは在庫リスクが低く、原価も安いために運営会社にとっては力を入れて販売したい商品。しかし、ファン層に厚みがついてくると、特別感のあるグッズを販売してVTuberを取り巻く人々の熱量を高めなければなりません。

田角陸CEOは2026年3月の説明会にてファン数拡大について問われ、「施策の中ではぬいぐるみ商材や新しい展開などの反響が良く」と回答しました。ANYCOLORは2025年4月に初のリアル常設店舗「にじさんじ ぬいストア」を横浜ビブレにオープンするなど、すでにぬいぐるみの販売に力を入れていました。今年2月には8周年を記念した「にじまるっと」というぬいぐるみシリーズの販売も開始しています。

ANYCOLORの主力商品は、デジタルコンテンツからぬいぐるみへと着実に変化しているのです。それは一方で在庫リスクを抱えることを意味しており、事業の実態もより一般的な小売業に近づいていると言えるでしょう。

UUUMと同じ道を辿るのか?

小売業としての性格が強まった場合、在庫管理が欠かせなくなります。品切れと過剰在庫を防ぐため、高い精度で需要予測をしなければなりません。

かつてYouTuberマネジメント事務所のUUUMが7億円あまりの棚卸損を計上し、大赤字になりました。UUUMはショート動画の台頭によって収益性が落ちたため、急いでP2Cへと舵を切りました。P2Cとはインフルエンサーがその発信力を武器にオリジナルブランドの商品などを直接販売する手法です。UUUMはこれに大失敗しました。

ANYCOLORは物販のノウハウを長い時間かけて構築してきたため、UUUMと同じ轍を踏むとは思えません。しかし、在庫リスクがこれまで以上に高まったのは事実。

小売業を突き詰めると、ニトリやユニクロなどの企画から製造、物流、販売までを一貫して扱うモデルへと行きつきます。

「にじさんじ」の人気タレントが増え、大量の商品を扱うようになれば、ANYCOLORが自社工場を持つようになる日が来るかもしれません。

文/不破聡

Author
大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融、経営戦略を中心とした記事を執筆中。得意分野は外食、ホテル、映画・ゲーム、エンターテインメント業界など。

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