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なぜ、マクドナルドは値上げしても客が離れないのか?20~30代ネット民の心を掴むマーケティング戦略

2026.03.18

マクドナルドが2月25日に一部商品の値上げを行いました。メニュー全体の約6割の商品が10~50円高くなりました。

驚異的なのは強気の値上げを断行しても客離れを起こしていないこと。マクドナルドの2月の客数は前年同月比で6.9%も増加しています。

集客力が落ちない要因は、巧みなマーケティング活動、タイムパフォーマンスを重視する顧客特性、メニューの再現難易度が高いという3つの観点から読み解くことができます。

ネットミームをプロモーションに起用

マクドナルドの2025年度の売上高は前年比7.2%増の8886億円でした。売上高は過去最高を更新。オープンから13カ月以上経過した店舗の既存店売上高も前年比5.7%の増加。41四半期連続で増えています。

飲食店の場合は新規オープンで集客効果が一時的に高まります。しかし、1年以上経過するとそれが抑制されて、本質的な客数へと落ち着く傾向があります。既存店というのはこの数字。マクドナルドは度重なる値上げを行ってきましたが、既存店の売上は継続的に増加中。客数ベースでみても、2025年度の既存店の客数は4.0%の増加でした。

高価格帯へと舵を切った「カレーハウスCoCo壱番屋」は集客力の鈍化が鮮明。単価アップで売上を支えています。値上げが一服した「ガスト」も客離れが進んで、一部の店舗を「資さんうどん」に転換する動きを加速しています。

強い集客力を維持しているのは「サイゼリヤ」のように安値での提供を続けている飲食店であり、値上げをしても集客力を維持しているマクドナルドは異例とも言える存在です。

集客の援護射撃を行っているのが、マーケティング活動。マクドナルドは、これが極めて巧みです。

例えば、2026年1月に仕掛けたのが英語の教科書に登場したキャラクターであるエレン・ベーカー先生を起用したプロモーション。このキャラクターは2016年ごろにSNSで話題になり、大量の2次創作が生み出されたことで有名。ミーム化しました。

一方で、当時Twitter(X)をしょっちゅう見ていたようなネット民以外には、あまり知られていません。このプロモーションのターゲットは20~30代の独身男性と、かなり絞り込んだものと想像できます。

マクドナルドのような巨大チェーンの場合、マーケティングはマス向けに固着しがち。しかし、テレビ離れなどの影響でマス広告の集客効果は弱まっています。

マクドナルドは「誰に来てほしいのか」というターゲットが明確になっており、その顧客属性も正確に理解している印象があります。

これだけ大きな組織にも関わらず、ネットミームをプロモーションに起用できる土壌が整っていることも、強さの秘訣だと言えるでしょう。

マクドナルドは顧客のどのような課題を解決しているのか?

顧客の特性も味方につけています。

中小企業基盤整備機構はハンバーガーショップの「市場調査データ」を公開しています。それによると、ハンバーガーショップを日頃から「よく利用している」と回答したのは20代と30代。どちらも19%です。これが40代になると4%にまで急激に落ち込みます。

これは感覚的にもわかりますが、マクドナルドのようなハンバーガーショップを頻繁に利用しているのは30代までの若い層。いわゆるZ世代が利用客の中核を担っています。

Z世代はドラマやアニメを倍速で見るような、タイムパフォーマンスを重視する世代。結論へと素早くたどり着きたいという意識を持っています。

マクドナルドは長い時間をかけて外食ブランドの圧倒的な地位を築きました。誰もが安心感を持って店に入ることができ、来店前からそこで食べる料理や過ごす時間を容易にイメージできます。わざわざスマートフォンで店のことを調査する必要があません。友人と一緒に飲食店選びをする際も、マクドナルドであれば合意形成はしやすいでしょう。つまり、マクドナルドは圧倒的にタイムパフォーマンスに優れているのです。

店舗はどこにでもあるため、探す手間もたいしてかかりません。ランチはもちろん、ディナー、カフェ利用まで様々なシーンにも対応でき、使い勝手が良く、目的の用途に対して失敗するリスクが低いという特徴もあります。マクドナルドは、結論を求めるZ世代の利用に最適化しているのです。

バーガーキングの復活劇や、ゼッテリアの台頭など、競合のハンバーガーチェーンの猛攻が始まりました。しかし、マクドナルドは失敗しないという安心感が大衆に染みついているため、不祥事などの特別なことが起こらない限り、長きに渡って強みを発揮し続けられるのではないでしょうか。

ハンバーガーと揚げ物を提供することの優位性

マクドナルドのメニューの再現性が低いことも客離れをしない大きなポイントです。

ラーメンやカレー、スパゲッティは即席やレトルト、冷凍食品が充実しています。しかし、ハンバーガーを家庭で食べようとしても、簡単に手に入れることはできません。ハンバーグをわざわざ焼いて、パンにはさんでまで再現しようとする人も少ないでしょう。

マイボイスコムは「揚げ物に関するアンケート調査」を行っていますが、30代が自宅で揚げ物をする割合はわずか6%。20代は1%です。一方で、40代からは2桁台に増えていきます。

つまり、ポテトやナゲットも若者は家で作ろうとはしません。マクドナルドは自宅で作らないメニューの宝庫でもあるのです。

文/不破聡

Author
大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融、経営戦略を中心とした記事を執筆中。得意分野は外食、ホテル、映画・ゲーム、エンターテインメント業界など。

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