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軽商用BEVはここまで進化した!ダイハツ「e-アトレー」に乗って感じた電動化のメリット

2026.03.13

乗用軽自動車と変わらない快適な乗り心地

さて、ここでは内外装の質感にもこだわったという346.5万円のe-アトレー(4シーター)を、男性2名の乗車で実際に走らせてみた。電動動力源は一充電走行距離257km(WLTCモード)のトヨタ・ダイハツ・スズキの共同開発によるBEV(バッテリーEV)システム「e-SMART ELECTRIC」(ECU、eAxle、バッテリー)である。駆動方式は後輪駆動のFRのみで、タイヤは専用開発された145/80R12サイズのヨコハマブルーアースVANだった。

汚れや水気に強い撥水機能付きファブリックシート表皮を用いた運転席への乗降は、床下にバッテリーを敷き詰めてあるとはいえ、サイド部分のたわみ加減によってスムーズだ。ガソリンモデルに対する高さはとくに感じない。左右のAピラーにアシストグリップが備わっているのも、乗降の助けになるだろう。視界は全方向、ルーミーだ。

しかも、BEVということで、寒い時期に電費、航続距離を悪化させるエアコンの暖房への負担を低減できるシートヒーター付きである(運転席、助手席)。かけ心地はさすが、定評あるダイハツの軽商用車だけに、座面のクッション性、背もたれのフィット感ともに優秀。乗用軽と変わらない快適感が得られるように思えた。メーターにしても7インチフル液晶メーターが備わり、今どきの軽商用車、とくに内外装の質感にこだわったというe-アトレーなら、軽乗用車と大きく変わらないインテリアデザインが与えられ、オートエアコンなどの装備も標準で装備されているから満足できる。

もちろん、気になる航続距離はエアコン未使用時、使用時ともにメーター中央に大きく分かりやすく表示され、インフォメーションには電池温度や瞬間電費、平均電費の情報も得られるから安心だ。

走り出しのスムーズさ、トルク感、力強さ、静かさはBEVならではだ。何しろ最大トルクは同じアトレーのガソリン車の9.3 kg-mに対して12.8kg-mと大きく上回っているため(あくまで空荷の試乗。大人2名乗車=総体重約150kg)、加速性能にも不満なしだ。平坦路での乗り心地はシートのクッション性の良さもあり、軽商用車とは思えない快適感がある。が、一般道走行で段差、うねり路面、荒れた路面を超えると、車体はひょこひょこ揺すられる。つまりフラット感に欠ける乗り味だ。しかしこれは空荷であることが原因のようで、開発陣に聞けば、150kgの荷物を荷室に積んだ状態で乗り心地、挙動をセッティングしているそう。空荷でそうなるのは致し方ないというところだろうか。

市街地の交差点を右左折するときのクルマの挙動は、1990mmもの全高を感じにくい自然なもの。床下に重量物のバッテリーを積んでいることで得られる低重心化によって車体前後左右のぐらりとしがちな姿勢変化は最小限。ステアリングに伝わる路面からのインフォメーションもとくに不足なし。そして速度を上げていっても車内で耳に届くのはほぼロードノイズのみという静かさが保たれる。都内の試乗中、ダイハツ開発陣の自信の現れと言っていい急坂が試乗ルートに設定されていたのだが、ガソリン車ではエンジンが大きく回転を上げ、騒々しく悲鳴を上げるような場面でもe-アトレーは静かなまま、涼しい顔でスイスイ、グイグイと登っていくことができた。平坦路はもちろん、急こう配の登坂路でも静かに、余裕たっぷりに走ってくれるということは、ドライバーの運転疲労低減にも大きく貢献してくれるに違いない。

BEVには回生機能があり、アクセルオフで電気を貯めることができ、同時にブレーキを踏むことなく減速してくれるのだが、このe-アトレーでそれを試すと、減速Gはガソリン車のアクセルオフとあまり変わらず、電気自動車らしくないな・・・と思いつつも、考えてみれば、アクセルオフのたびに強いGがかかると荷崩れする原因にもなり、あえてそれを考慮した設定ということになるのだろう。つまり、その点ではガソリン車から乗り換えても違和感なしということだ。

ところで、シフターを操作していて「あれっ、この部品、どこかで見たことがある・・・」。そう思ったのも当然で、なんとトヨタ・ノア&ヴォクシーのエレクトロシフトマチックのシフターなのである。ダイハツとトヨタの関係を思い出せば、そんなこともアリかも・・・だが、Mクラスボックス型ミニバンのシフトパーツを、ダイハツの軽商用車に流用するのは意外だ。

トヨタ・ノア&ヴォクシーのシフター
e-アトレーのシフター

首都高に乗り入れても、車内の静かさは相変わらずだ。80km/h走行でも耳に届くのはほぼロードノイズのみ。トレッドの狭い軽自動車は軽乗用車でも直進性やレーンチェンジに気を遣うクルマがあるものの、e-アトレーは不安のない直進性を発揮。カーブ、レーンチェンジでも急激なステアリング操作をしない限り、低重心、ガソリン車に対して約300kgの重量増もあって姿勢変化は最小限。終始、リラックスした運転が可能だった。ただし、市街地走行で述べたように、空荷の状態では路面のジョイントなどを超えたときのひょこひょこした挙動はそのまま。落ち着き、フラット感に欠ける乗り心地となる。つまり、働くクルマとして使い、ダイハツの設計基準となっているかも知れない150kg程度の荷物を荷室に満載した時には乗り心地が改善されるとしても、すべての荷物を下ろした帰りには、そうした乗り心地になってしまうということだ。ひょこひょこした乗り心地は運転視線の上下にもつながり、喜ばしいことではなく、運転疲労にもつながるので、この部分については、今後の要改善ポイントとして挙げておきたい。

そうそう、内外装の質感にもこだわったというe-アトレーの346.5万円という価格にちょっとびっくりした人も少なくないはずだ(ガソリン車のアトレーはもっとも高いグレードでも200万円以下)。が、フルオートエアコンやシートヒーター、AC100V/1500Wコンセントなど、充実した装備を備えた上で、ガソリン車にない国からの補助金 ((現時点では2026年の補助金は未定とのこと。2025年度基準では最大58万円)があることを忘れてはいけない。とくに荷物運搬用として黒ナンバー登録にすれば、その補助金額はかなり大きいものになる(100万円超えか?)。というわけで、事業者のみなさん、働き方改革、地球環境、そして深夜早朝の静かな走りによる騒音低減のためにも、軽商用車の電動化、e-ハイゼットカーゴ、e-アトレーの導入を考えてみたらいかがだろうか。もちろん、装備充実のe-アトレーなら、AC100V/1500Wコンセントの装備もあって、一般ユーザーのアウトドア、車中泊ユース、軽キャンへのカスタマイズベースにもうってつけかも知れない。

e-ハイゼットカーゴ/e-アトレー

文/青山尚暉
写真/青山尚暉 ダイハツ

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プロミュージシャンからいきなり自動車専門誌の編集者を経験した後、モータージャーナリストに。新車試乗記や自動車関連コラム、防災記事などを幅広い媒体で執筆。クルマのパッケージング、洗車”オタク”でもある。また、ドッグライフプロデューサーとしても活動。愛犬とのドライブ術、ペットと泊まれる宿厳選紹介、ドッグフレンドリーカー選びについて多方面で情報発信中。著書に「ぼくたちの外車獲得宣言」(リヨン社刊)、「すごい海外旅行術」(講談社刊)、「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)など。輸入車の純正ペットアクセサリーの開発にも携わっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員(1994年~。現在は小学館DIME推薦)。

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