若者の胃袋をつかめ!想定外を味方につけて生まれた未来ののり弁、ほっかほっか亭「ワンハンドBENTO」のチーム戦略
2026.03.16
想定外をも味方につける常務取締役の「逆転の発想」
ほっかほっか亭総本部『ワンハンドBENTO』は、「のり弁当」など定番のお弁当の具材をご飯に載せ、片手で食べられる設計。大阪・関西万博で22万食超を売り上げた。1個500円~。

大阪・関西万博で22万食を突破!ほっかほっか亭が挑んだ未来の弁当「ワンハンドBENTO」開発秘話
10月13日に閉幕した大阪・関西万博。一日中、歩き回って腹ペコな来場者の楽しみといえば、会場内で食べられる多彩な「万博メシ」であった。皆さんは召し上がっただろう…
「万博の神グルメ」「コスパ最強」とSNSで話題になると『ワンハンドBENTO』はさらに人気となった。メディアからの取材申し込みも殺到──にもかかわらず悩みを深める人物がいた。
常務取締役の飯沼俊彦だ。
「500円という価格は期間限定で、ある程度の認知を得たら適正価格にするつもりでした。ところが、我々の想像以上に話題になり、今さら『一時的な価格だったんです、ご理解ください』とは言いにくくなってしまったんです」
普通なら万博の店舗の前にお詫びの貼り紙でもして幕引きを図るだろう。しかし飯沼は「世間の声は強い味方」と考えていた。きっかけがある。彼は今や北海道有数の観光地にもなった日本ハムファイターズの本拠地球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の立ち上げに携わった人物。この施設は、事業を「みんなのもの」と考えるのが特徴だったと言う。
「例えば、利用者の不満をX(旧Twitter)で集め、解消する取り組みを行なっていました。企業は時に失敗もお客様と共有することで応援してもらえる存在になると思うんです。そこで我々は『誤算でした。なので数量限定ですが、500円のまま販売します』と公表することにしたんです」

小丸友我(こまる・ゆうが/右)
マーケティング部 デザイン・ツール課 課長。現場の声を反映した販促ツールやポスターの改廃を万博期間中に24回実施。
飯沼俊彦(いいぬま・としひこ/中央右)
常務取締役 商品企画統括本部 統括本部長。万博出展を主導、機敏な経営判断で22万食を売る大ヒットを牽引した。
植﨑正淑(うえさき・まさとし/中央左)
事業戦略部 係長。ほっかほっか亭万博店では店長を務め、新メニュー提案等に貢献、現場主導の改善を進めた。
永岑しおり(ながみね・しおり/左)
マーケティング部 広報PR課 課長。メディアとの折衝やPR戦略を担い、商品の話題性を最大化させる情報発信を行う。
試作は数百回。見た目もいいし意外と持ちやすくゴミも少ないんです


代名詞の元祖「のり弁当」を再構築
一口目から「のり弁当」を感じる配置を導き出し、伝統の味を〝未来の形〟で表現した。
老舗が「箸」を捨て、狙ったのは若年層
このように、すべては迷いながら決まっていった。2024年初夏、ほっかほっか亭は大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンに出展する企業の最後の一枠に入った。しかし、何をやるかは決まっていない。パビリオンのテーマは「未来」だったから「お米へのこだわりを伝えるためブース内で稲を水耕栽培しよう」という案も出たが、技術的に難しく断念。次に健康志向を意識した「機能性弁当」の販売も検討されたが、素材を安定的に調達しにくく、メインテーマにはなりにくかった。
そんな中、妙な意見が出た。広報の永岑しおりが振り返る。
「プライベートで様々なテーマパークや観光地を訪ね歩いていた商品開発者が『片手で食べられる、箸を使わないお弁当を販売するのはどうか?』と言うのです。周囲は『それ、おにぎりとどう違うの?』という雰囲気でした」
発案者は「一口目からおかずが口に入ってくるもの」「テーマパークで食べ歩きをするとゴミ箱が少なくて困るけど、これなら大丈夫」と説明する。飯沼は聞きながら、むしろこれこそ未来のお弁当ではないか、と思った。
「パビリオンの入場待ちの行列に並びながら食べられるから、特にタイパを重視する若い世代には嬉しいはずです。この世代はご家庭で作られたお弁当を食べた経験が少なかったり、お弁当の専門店とのタッチポイントがなかった方もいますので、商品を手に取っていただく機会にもなるはずです」
すなわち、ブースでモノを売って利益を出しつつ、取り込みたかった若年層向けのブランディングにもなる、というわけだ。飯沼は人づてで様々な出展企業に連絡を取り、このアイデアが他社とかぶらないことを確認、方向性を決めた。しかし次は、迷いながらの開発だった。取材に同席したメニュー開発担当者が話す。
「お弁当は、まずおかずを食べ、次にご飯を適量口に入れ……と食べる人が味の調和を作れます。でも『ワンハンドBENTO』は具材もご飯もタレも一度に口に入ってくるので、すべてを細かく設計しなければならないのです」
単純に具を載せると塩辛さが強くなった。具のバランスを間違えると食べにくくなる。24年年末、彼らは来る日も来る日も試作を続けた。社内の若手に「写真は撮りやすい?」「SNSでシェアしたくなる?」とヒアリングを重ね、社内の最終関門である社長の試食を迎えた。飯沼が話す。
「緊張の瞬間です(笑)。社長は味について一切妥協しません。試食後はほとんどの場合、愛情がこもった指摘が入ります」
固唾をのんで見守る面々。ところが社長の口から出てきたのは絶賛だった。飯沼が話す。
「本当に、『のり弁当』のあのおいしさが、片手に収まっているんです。社長は『これ、すごいな……』と呟いていました。本気がしっかり形にできたのだと思います」
会期中は計24回、メニューや看板を改修!

現場の提案で急遽導入されたローストチキンと、持ちやすさを改善したボックスセット。すべて現場主導かつ爆速で準備。
現場と本部がひとつになれた、最高の半年間でした


会期終盤、スタンプラリーが流行。これを受け急遽制作した記念スタンプは、来場者たちの思い出に彩りを添えた。







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