こんにちは。弁護士の林 孝匡です。宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
金融機関で働いていた社員Aさんが自死に至った事件です。
「バカじゃないか?」
「お前なんか給料もらう資格もない」
このような言葉を投げつけられ、自爆営業も要求されていたんです。
Aさんの父は労災申請をしたが棄却されました。提訴しましたが、地裁にも棄却さました。
しかし!控訴したところ、逆転勝訴しました。
高裁は「労災認定すべき事案」と判断。なぜ判決は覆ったのでしょうか?
以下、わかりやすく解説します。
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
登場人物
▼ 会社
金融機関
▼ Aさん
ある支店の得意先係。Aさんを追い詰めていったのが支店長です。
どんな事件か

支店長は、職員から「パワハラ支店長」「恐怖で人を縛るタイプ」と呼ばれていました。しかも、支店長室は……「説教部屋」と呼ばれていました。
以下、支店長がAさんを追い詰めていった状況を判決文から抜粋します。
■ 叱責
支店長は、残業をしているAさんに対して以下の言葉を投げつけました。
「仕事ができないからそこまで残っているんだろう」
「仕事もできないくせにこんな時間まで何やっているんだ」
「無駄に仕事してるふりしてるなら客をとってこい」
「案件取らぬ者は給料泥棒」
「バカじゃないか?お前なんか給料もらう資格もない」
案件が取れた場合でも
「こんな案件にどれだけ時間かけてんだ」
「お前の段取りが悪すぎるからじゃないのか」
という言葉を投げつけていました。
■ 自爆営業
支店長がAさんに自爆営業を要求しました。
具体的には、支店長がAさんに対して「おまえの家、金持ちなんだから親に頼んでどうにかなるだろう」「仕事を引っ張ってこい」と要求。この要求に応じ、Aさんは親族名義のクレジットカードを作るなどして、会費はAさんが負担しました。
■ 責任の押しつけ
ある住宅ローン案件についてです。Aさんはこの案件に慎重に取り組んでいたのですが、【支店長の指示によって】実現しなくなりました。
詳細は割愛しますが、支店長が不適切な指示をしたのです。にもかかわらず、支店長は自分のミスを棚上げして、全ての責任をAさんに押し付けました。
しかも叱責もしています(裁判所は「激烈」な叱責であったと認定している)。
■ 支店長の送迎
さらには、Aさんは、休日も含め、支店長のゴルフや飲み会の送迎をさせられていました。
■ 体調の悪化
Aさんは徐々に食欲がなくなっていき、食べる量が半分くらいになりました。夜は寝つきが悪くなりずっとリビングにいることもありました。
■ 妹の証言
Aさんは妹と仲が良く、妹には仕事のことを相談していました。妹によると、自死の1か月から2か月前には、Aさんは、目がうつろで死んでいるような顔になっていたのだそうです。また、悲しそうに泣き、覇気がなく、言葉がうまく出てこない様子で、「仕事を辞めたい、つらい、眠れなくなった」などと吐露していました。
妹はAさんに「今すぐ辞めたほうがいい、仕事なんて代わりは幾らでもあるから辞めたほうがいい」とアドバイスし、妹は父にも「絶対転職させるべきだ」と話しました。
■ 自死
しかし、Aさんは自死に追い込まれてしまったのです。
前日、Aさんは妻に「むちゃくちゃ言われるので会社に行きたくない」と話し、食事に手を付けませんでした。そして深夜にかけて「眠れない」といって外出を繰り返しました。その間、自死しようとしたが果たせず、翌日の朝、自死に至りました。
■ 遺書
Aさんの遺書には以下の言葉が書き残されていました(判決文より抜粋)。
・自分が弱いせいです。申し訳ございません
・ただただ、案件が中々取れない辛さ、期待に応えられない辛さが原因です
・ダメな旦那を許して下さい
・素晴らしい両親から、こんなダメ息子が生まれてしまって、申し訳ない
・僕が弱いせいです。生きていくのが、ホントに辛くなりました
・ヘリウム自殺失敗、もう飛び降りるしかない
・自分のわがままです。弱い自分を許して下さい
・全て、私の弱さが招いた事です。会社や、お客様には一切、関わりのない事です
■ 支店長が原因だ
Aさんが亡くなったあと、職員の中には「Aさんが亡くなった原因は、支店長の怒鳴るような叱責などが積み重なって、大きなストレスになった」と明言する者がいました。
しかも、Aさんの自死のショックが大きく、しばらく仕事に出てこれなかった職員もおり、顧客がAさんを訪ねてきたり、顧客からAさん宛の電話がかかってきたりすると、女性職員が泣きだしてしまうといった状況が長く続きました。
■ 労災申請
Aさんの父は労災申請をしましたたが、不支給となりました。
そこでAさんの父は提訴しました。







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