■連載/阿部純子のトレンド探検隊
生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラの物流だが、ドライバーの担い手不足や、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されたことによる、「2024年問題」といわれる輸送能力不足による物流危機が懸念されている。
深刻なドライバー不足、小口や多頻度化による負荷の増大、カーボンニュートラルへの対応、災害時の代替輸送手段の確保など、現代の物流課題の解決策として期待される大規模インフラプロジェクトが、国土交通省道路局が取り組む「自動物流道路(オートフロー・ロード)」 。
道路に専用のスペースを設け、24時間無人で自動輸送する新たな物流システムで、東京・大阪間の約500kmを専用空間でつなぎ、2030年代半ばの完成を目指す。
現在、本事業は採択事業者による実証実験を実施しており、成田空港建設センター内にて、Cuebus社のリニアモーター技術を応用した輸送システムの実証実験がプレスに公開された。
都市型立体ロボット倉庫「CUEBUS」で培った技術を「自動物流道路」に応用
国土交通省による「令和7年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」における「ユースケース2 本線単路部:搬送機器の自動走行」の実施者に採択されたのが、都市型立体ロボット倉庫システム「CUEBUS(キューバス)」を提供するCuebus株式会社。
ユースケース2は、速度や貨物重量の異なる搬送機器の自動走行の状況や、必要な道路幅、走行環境、貨物への影響などの検証を行う。
「CUEBUSは世界初のリニアモーターを使用した都市型立体ロボット倉庫で、商品をロボットが運んでくることで、商品を取り出す効率を高める自動走行システムです。通路が不要で、天井ギリギリまで収納できる高い格納率があり、すべての棚を即座に動かすことができます。
地面に設置をしてあるものが、我々が独自に開発したリニアモーターユニットの“タイル”と呼んでいるものです。地面側にリニアモーターユニットを設置して上を走行する台車にはマグネットと車輪だけといった非常にシンプルな構造になっています。
保管効率がよくきっちりと詰めている状態から商品を取り出すときは、奥や手前のものが邪魔になりますが、一気に全体を同時に動かすことができるので、通路を作りながら商品を取り出し、保管効率と取り出し効率の両立を実現できているのがCUEBUSの特徴です。シンプルな構造なので、設置も非常に簡単です。
我々の自動倉庫で培ったリニアモーター技術を用いて自動物流道路を実現しようと計画しています。一般的な自動運転車両は走行する車両の方にマグネット、回転モーターやバッテリー、ギア、通信機器等と非常に多くの部品を搭載していますが、弊社のリニアモーターの場合、走行する車両はマグネットと車輪だけになります。
1日15万トンの物量を東京・大阪に運ぶ際には、車両はできる限りコストを抑えることも重要になります。マグネットと車輪だけで構成されているCUEBUSは、充電も必要がないため、自動物流道路事業においては非常に大きな優位性があると考えています」(Cuebus株式会社 取締役副社長兼CTO 藤波亮太氏)
成田空港内道路での実証実験では、100mの区間に新型のリニアモーターユニットを設置。ユニット自体に直接貨物を載せることができないため、車両を上に置き貨物を載せる。従来のリニアモーターユニットは、輸送能力が100kgまでだったが、今回、新しく開発したリニアモーターユニットでは輸送能力が1tに拡張。
今回の実証実験では、花王の協力を得て生活用品660kgをパレットに積み車両に搭載、最高速度は時速50kmだが、風など屋外条件を考慮して実験では時速約10kmで走行した。
1tの貨物を100mで走らせた場合の、最高速度、貨物の揺れ・振動、複数台同時走行時の車間許容、位置取得精度などを評価。併せて屋外での速度や安定性も検証する。
「磁気の吸引力や反発力から機動力を得るリニアモーターと同じ構造ですが、地面側に設置をしてあるリニアモーターには非常に多くのセンサーが下側に敷き詰められています。敷設されているリニアモーター(下記画像の黒い部分)に全部ID番号が付いていまして、『○○番で止まれ』と指示するとそこで止まったり、ユニットごとにどこを走っているかすべて把握できます。また、カーブや勾配でも問題なく動きます。
5000台、1万台という大量の貨物が長い距離を移動していくわけですから、位置の正確性は非常に重要です。これらの貨物を完全にコントロールして輸送を行う自動物流道路は、世界でも類を見ない試みでとても夢のある話だと思います。
車両に付いているマグネットがリニアモーターの上を通るときに電流が流れるように制御されています。使用電力も今は評価中ですが、すでに倉庫で導入している弊社のリニアモーターのユニットは非常に省電力で家庭用の100Vの電源でも動くほど、消費電力としては低いものになります。
CUEBUSはもともと倉庫内の移動を想定して作られているので、長い距離を輸送することは今まであまり考えてなかったんです。実験では時速10kmほどと速度はあまり上げずに走っていますが、倉庫内での10 kmは速い方になります。
現時点ではマグネットを使っていることもあり、最高速度がどこまで上がるのかということは一つの課題としてあります。現在、マグネットを使わないタイプのリニアモーターの研究開発を大学と一緒に行っており、基本的な研究は成功しているので、そのタイプで最高速度を上げることや、レアアースに依存しない純国産のリニアモーターユニットを作るといったことをこれから目指していきます」(Cuebus株式会社 代表取締役社長兼CEO 大久保勝広氏)
【AJの読み】長距離を無人化・自動化で貨物を運ぶ夢のプロジェクト
国土交通省道路局では、2024年2月に自動物流道路の実現に向けて、「自動物流道路」の目指すべき方向性、必要な機能や技術、課題等を検討するため、第一段階として、有識者、関係団体及び関係省庁からなる検討会を新設、2025年7月まで10回の会議を重ねた。
同検討会による最終とりまとめを踏まえ、2025年7月~9月にかけて6つのユースケース実証実験参加企業の公募を行い、その中から9グループ12ユースケースを採択し、今回の成田空港内道路のほか国総研など複数の場所で実証実験を行っている。
道路空間に物流専用のスペースを設けて、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手段によって貨物を運ぶ「自動物流道路」は、物流危機の解決策として、大久保CEOが話すようにとても夢のあるプロジェクトだ。東京・大阪間のうち、一部先行ルートで2030年代半ばまでの運用開始を目指す。また、成田空港やその周辺でも導入が計画されている。
取材・文/阿部純子
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