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なぜ、あの人は絶対に謝らないのか?「謝ったら死ぬ病」と呼ばれる心理の正体

2026.03.25

会議室の空気が一瞬で凍る。明らかなミスなのに、なぜかその人は絶対に謝らない。周囲は「言い訳の前にまず謝罪でしょ」と思いますが、本人には謝れない深刻な心理的背景があるのです。

実は、その人たちにとっての謝罪は、単なるマナーや手続きではありません。非を認めることが、まるで自分の存在すべてを否定されるような、言葉にできないほどの恐怖や苦痛を伴うものになっています。

本記事では、謝ることを極端に恐れてしまう心理状態の正体を、心理学とメンタルヘルスの視点から解き明かします。

なぜ謝罪ができないのか

周囲から見れば一言で済むはずの謝罪が、なぜ謝れない人にとってはこれほどまでに高いハードルになってしまうのでしょうか。まずは、心の中で何が起きているのか、その内情を探っていきます。

■謝罪=自己の崩壊という誤変換

一般的に、仕事上の謝罪は、起きたミスを認め、関係を修復するための手続きとして捉えられます。

しかし、謝れない人たちにとって、謝罪の意味は大きく異なります。

その人たちの脳内では、非を認めることが自分の行為の誤りを認めることではなく、“自分という人間そのものが無価値になること”へ飛躍して変換されてしまっているのです。これには、一見自信があるように見えても、実は内面が非常に傷つきやすく、自分を守ることで精一杯になっているという心理状態が関係しています。

■「理想の自分」を守るための防衛システム

本人たちは心の奥底で、「自分は完璧でなければならない」「常に正しくなければならない」という強い思い込みを抱いていることが少なくありません。この“完璧で正しい自分”というイメージは、現実の自分を支えるための唯一の支柱になっています。

そのため、一度でもミスを認めて謝ってしまうと、その瞬間に理想の自分像が崩れ、自分という人間が維持できなくなるような強い不安に襲われます。次々と出てくる言い訳は、この脆い自分を守るための、必死の防衛システムと言えるでしょう。

■人間関係を勝ち負けで捉えるバイアス

謝れない人は人間関係をフラットな協力関係ではなく、常に上下や、勝ち負けの権力構造で捉える傾向があります。なので、その人たちにとって謝罪とは、相手に対して降伏を宣言し、自分を負けの立場に置く屈辱的な行為なのです。

ビジネスの現場であっても、ミスを認めれば相手にマウントを取られ、二度と立ち上がれなくなるという強い不信感が頑なな拒絶へと向かわせてしまっています。

謝れない人の脳内はどうなっているのか

謝れない人の頭の中では一体どのようなことが起きているのでしょうか。その思考のプロセスを見ていきます。

■責任を他人に転嫁する思考

ミスが発覚した瞬間、謝れない人の脳内では、自分を守るための強烈な反応が起こります。自分が悪いという事実を受け入れる苦痛から逃れるために、無意識のうちに“他人のせいにする理由”を猛スピードで探し始めるのです。

「指示が曖昧だったから」「システムが使いにくいから」といった、他人や環境に原因を求める外罰的な思考が、反射的に言い訳となって口をついて出ます。本人にとっては嘘をついている自覚すらなく、本気でそう思い込んでいることも少なくありません。

■ミスの指摘が人格否定に聞こえてしまう

仕事上の単なるミスの指摘であっても、それを自分という人間に対する攻撃だと受け取ってしまう傾向があります。

本人の中では「仕事のやり方が間違っている」という事柄へのアドバイスが、「お前という人間はダメだ」という人格否定にすり替わって聞こえてしまうのです。このとき頭では、ミスを反省する余裕などなく、自分の存在が粉々に壊されるような強い恐怖を感じています。

その恐怖から身を守るために、過剰に攻撃的になったり、いわゆる逆ギレの状態に陥ったりしてしまうわけです。

■自信のなさを守るための防衛反応

一見頑なに謝らない態度は、周囲からは自信家に見えているかもしれません。しかし、実はその正反対である自信のなさが謝れないことにつながっているのです。謝れないという行為は、崩れそうなほど脆い自己肯定感を必死に支えようとする、切実な防衛本能の結果でもあります。

また、過去の失敗で激しく責められた経験などが影響し、謝罪を、取り返しのつかない破滅と結びつけてしまっているケースも考えられます。

職場にいる謝れない人への対応策

謝れない人の心理背景がわかったところで、次に必要なのは現場での具体的な対応策です。周囲のストレスを軽減しつつ、業務を滞りなく進めるための現実的な関わり方を解説します。

1.責めるのではなく事実のみを伝える

相手のミスを指摘するときは、人格や責任を問う言葉を避け、起きている事実だけを淡々と伝えることが重要です。

「なぜこんなことをしたのか」という問い詰めは、相手を生存の危機に追い込み、さらなる言い訳を引き出す逆効果にしかなりません。

「ここが現状こうなっている」という客観的な状況報告に留めることで、相手が過剰に防衛的になるのを防ぎ、解決策に意識を向けさせやすくなります。

2.謝罪を求めず目的の共有を優先する

頑なな相手から謝罪の言葉を引き出そうと躍起になるのは、得策ではありません。

謝らせることにこだわると、相手は負けを回避しようとますます態度を硬化させ、不毛な押し問答に時間を費やすことになります。

謝罪をゴールにするのではなく、「これからどうリカバーするか」という共通の目的に話をスライドさせることで、実務上の停滞を最小限に抑えることができます。

3.適切な距離感で自分の心を守る

相手を変えようとエネルギーを注ぎすぎないことも、大切な対応策の1つです。

そもそも他人の性格や行動は、本人が自ら「変わりたい」と願わない限り、周囲が変えられるものではありません。謝れないという頑なな態度を無理に直そうとすれば、こちらの労力が削られるだけでなく、相手の反発を招く結果に終わります。

「この人はこういう防衛システムを持った人なのだ」と割り切り、心理的な距離を置くことで、こちらのストレスを軽減できます。相手の抱える問題と自分の仕事を切り離し、必要以上に深く関わらない姿勢が、自分自身のメンタルを守ることにつながります。

もし自分が謝れないと感じたら

他人の振る舞いについて読み進めるうちに、自分自身の中にある謝ることへの抵抗感に気づいた方もいるかもしれません。もし、非を認めることに恐怖や苦しさを感じるのであれば、それは性格の問題ではなく、あなたの心が必死に自分を守ろうとしているサインです。自分を責めるのではなく、その仕組みを理解し、少しずつ心を緩めていくためのステップをお伝えします。

1.完璧ではない自分を許容する

謝れない背景には、「常に正しく、完璧でなければならない」という自分への厳しい縛りがあります。

まずは、ミスをしたからといって、あなたという人間の価値が損なわれるわけではないことを自分に言い聞かせてください。「間違えても大丈夫」と自分を許せるようになると、謝罪は自己崩壊の危機ではなく、単なる状況改善のための手続きへと変わっていきます。

2.小さな非を認める練習から始める

いきなり大きなミスを謝るのは勇気がいります。まずは、日常生活の中の些細な行き違いから「ごめんね」や「失礼しました」と口に出す練習をしてみてください。

実際に謝ってみると、案外周囲は自分を攻撃してこないこと、むしろ関係がスムーズになることに気づくはずです。

謝罪が負けではなく、自分を楽にするためのツールであると体感することが、頑なさを解く第一歩となります。

文・構成/藤野綾子

精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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