プロジェクトのタスク群の中で、最も長い時間を要する経路のことを『クリティカルパス』といいます。経路にあるタスクが遅延すると、その後の作業も遅れるため、納期に直接影響を及ぼします。
目次
クリティカルパスとは?
クリティカルパスは、プロジェクトの中で最も時間を要する経路のことをいいます。経路上で発生した遅れは、そのまま納期に影響するため、プロジェクト全体の所要期間を決定付ける重要な概念です。
まずは、どのような概念なのか具体的に見ていきましょう。
■プロジェクトにおける作業の最長経路
クリティカルパスとは、プロジェクト全体で発生するタスク群のうち、最も長い時間を要する経路のことを指します。該当する経路上にあるタスクが終わらなければ、次の段階に進めないため、工程管理において非常に重要な要素です。
例えば、建築現場の場合、建物が完成してからの内装工事より、基礎工事や鉄骨の組み上げなどの方が作業に時間がかかります。
また、基礎工事や鉄骨の組み上げが遅れてしまうと、その後の工程も予定した通りに進めません。この場合のクリティカルパスは、基礎工事から鉄骨組み上げまでの一連のタスクが該当します。
■クリティカルパスの重要性
クリティカルパスが重要とされるのは、プロジェクトの最終期限を決定するためです。経路上にあるタスクに遅れが発生すれば、たとえ他の工程に余裕があっても、納期が大きく遅延する可能性があります。
例えば、クリティカルパス上のいずれかの作業が1日遅れると、その遅れ分だけプロジェクトの完了予定日も後ろ倒しになるケースが少なくありません。そのため、経路上のタスクにどの程度の時間を要するのか、正確に見極めることが求められます。
また、想定と実際のクリティカルパスの差異を検証し、今後のプロジェクトに反映させることで、進行管理の精度向上につながります。
クリティカルパスに類似した管理手法

実際の現場では、類似した他の管理手法が併用されることも少なくありません。ここでは、クリティカルチェーン・ガントチャート・WBSという、関連する三つの手法を紹介します。各手法の特徴と活用方法について、詳しく見ていきましょう。
■クリティカルチェーン
クリティカルチェーンとは、クリティカルパスをベースに、リソース制約も考慮した管理手法です。クリティカルパスが作業工程上の依存関係のみに注目するのに対し、クリティカルチェーンでは、人員や設備の取り合いといった現実的制約も踏まえて計画を立てます。
クリティカルチェーンの大きな特徴は、人員の病欠や機械の故障といった不確実なリスクに備えられる点です。各タスクに必要な最小限の期間を設定し、個々のタスクに分散していた余裕時間を、プロジェクト全体のバッファとして1カ所にまとめます。
バッファを集中管理することで、個々のタスクの遅延が直ちに納期遅れに直結するのを防ぎ、プロジェクト全体として遅延を吸収しやすくなります。
■ガントチャート
ガントチャートは、タスクを横棒で表現し、プロジェクトの進捗やスケジュールを視覚的に把握できるスケジュール管理用のグラフです。各タスクの開始日・終了日・期間を、一目で確認できる点が特徴です。
ガントチャート上でクリティカルパスを強調表示すると、プロジェクト内の重要タスクが分かりやすくなります。進行中も時系列で状況を追いやすく、遅延の兆候に早い段階で気付けるでしょう。
ガントチャートの視覚的な分かりやすさと、クリティカルパスによる論理的な分析を組み合わせることで、より効果的なプロジェクト管理が可能になります。
■WBS
WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクト全体の成果物と作業内容を階層構造に分解し、必要なタスクを漏れなく洗い出すための手法です。クリティカルパスを特定する上では、前提となる作業整理が重要となるため、正確なWBSの作成が欠かせません。
WBSによって作業内容が整理されていると、各タスクの所要時間を見積もりやすくなり、結果としてクリティカルパスの特定精度が向上します。
さらに、両者を組み合わせて活用することで、リソース配分の最適化や進捗管理の効率化といった相乗効果も期待できるでしょう。
クリティカルパスの特定方法

プロジェクトの進行を管理するには、全体の流れの中でどのタスクに最も時間がかかるかを、正しく把握することが必要です。ここでは、クリティカルパスを特定するための方法や、適切に活用するためのポイントを紹介します。
■タスクを洗い出し依存関係を把握する
まず、プロジェクト内のタスクを漏れなく洗い出します。この段階でWBSを活用すると、作業を階層的に分解できるため、抜け漏れを防ぎやすくなるでしょう。
次に、タスク間の依存関係を明確にします。例えば製造プロジェクトであれば、『部品調達が完了していないと組立作業を開始できない』といった前後関係や、『設備準備と部品調達は同時並行で進められるか』といった並行可否を一覧で整理します。
この関係が曖昧なままだと、後工程で手戻りが起きやすくなるため、この段階で関係性を丁寧に詰めておくことが重要です。
■PERT図を作成し所要時間を見積もる
タスクと依存関係が整理できたら、PERT(Program Evaluation and Review Technique)図を作成します。PERT図は作業の流れをネットワーク図として表し、タスク間の依存関係を視覚化できる点が特徴です。
各タスクの所要時間を見積もるには、三点見積法が効果的です。『楽観値(順調に作業が進んだ日数:O)』『最頻値(通常の作業日数:M)』『悲観値(トラブルが起きた場合の日数:P)』の三つを設定し、『(O+4M+P)÷6』の計算式で加重平均を求めます。
例えば、Oが3日・Mが5日・Pが10日の場合、(3+4×5+10)÷6=5.5日になります。この方法を用いることで、単一の数値で見積もるよりも現実に近い値を出しやすくなり、不確実性の高いプロジェクトではリスク管理の面でも有効です。
■クリティカルパスを特定しスケジュールを調整する
各タスクにかかる時間を割り出した後は、それぞれの作業経路の合計所要日数を比較しましょう。まず、作業の開始から完了までに考えられる経路を全て挙げていきます。
次に、それぞれの経路について、含まれるタスクに必要な日数を合計します。こうして算出した経路ごとの合計日数のうち、最も時間が長くかかる経路がクリティカルパスです。
この経路は、どこか一つでも遅延が発生すると、プロジェクトの完了時期に影響を及ぼします。そのため、該当する経路上にあるタスクについては、人員配置などを優先して検討することが重要です。
クリティカルパスを活用するメリット

最も時間のかかる経路を特定することによって、どのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、主なメリットを三つ紹介します。
■タスクの優先度を明確に把握できる
どのタスクを最優先で進めるべきかが明確になり、現場の迷いが減ります。遅延が許されないタスクには経験豊富な人材を配置し、並行的に進められるタスクには余力のあるメンバーを割り当てるなど、戦略的な人材配分もしやすくなるでしょう。
さらに、フロート(余裕時間)を把握できるため、多少遅れても全体に影響しない領域を見極められます。結果として、遅延がそのまま納期に影響する工程に、限られたリソースを集中しやすくなります。
■スケジュールを効率的に管理できる
プロジェクト全体の、スケジュール管理の効率化が期待できます。どの工程が遅延に直結するかが分かるため、進捗管理の観点がぶれにくいのも利点です。
締め切りが前倒しになった場合でも、どこを短縮候補として扱うべきか検討しやすくなるというメリットもあります。
例えば、作業の依存関係を見直して同時並行で進められるタスクを増やしたり、クリティカルパス上の工程に追加要員や外部パートナーを投入したりすることで、全体のリードタイム短縮を図ることも可能です。
これらを状況に応じて使い分ければ、納期順守やコスト最適化につながるでしょう。
■ボトルネックが分かりやすい
ボトルネックが、分かりやすくなるというメリットもあります。プロジェクトの成功には、ボトルネックの早期発見と対策が不可欠です。
PERT図を作成することで、どのタスクが遅延原因になりやすいかを視覚的に特定できるため、問題発生前に対策を講じることが可能となります。
例えば、建設プロジェクトで内装工事がクリティカルパス上にあり、進捗遅れが見込まれる場合には、内装班の人数を一時的に増やしたり、夜間・休日作業を追加したりといった対策を前倒しで検討できます。
さらに、遅延によって全体の進行が遅れるポイントを、チームで共有しやすくなるでしょう。







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