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なぜ、正論は人を黙らせるのか?職場を壊す「正論ハラスメント」の正体

2026.02.17

最近、部下とのやり取りで、自分は間違ったことは言っていないはずなのに、なぜか相手が沈黙してしまうと感じることはありませんか?

ビジネスにおいて論理的に正しいことは大きな武器になります。

しかし、その正しさは時として相手の逃げ道を塞ぎ、心理的な負担となってしまう「正論ハラスメント」の側面を持っているのです。

産業カウンセラーとして相談を受けていると、悪意のない正しいアドバイスが、結果として組織の活力を奪っていると感じることがあります。

正論が武器になってしまう理由、そして正しさを維持しながら部下と適切な関係を築くための向き合い方について、心理的な観点から考えていきます。

正論が持つ二面性

正論は、組織を正しい方向へ導くための不可欠な要素である一方、使い方を誤れば人間関係を損なう道具にもなり得ます。正論が持つ本来の意味と、ハラスメントへと変質する境界線について見ていきます。

■正論とは

正論とは、一般的に道理にかなった正しい主張、あるいは非の打ち所がない意見を指します。客観的な事実に基づき、誰が見ても反論の余地がないほど論理が整っている状態のことです。

■ビジネスにおける正論の必要性

ビジネスの現場において、正論は意思決定の精度を高めるために不可欠な要素です。

個人の感情や憶測に流されず、正しい論理に基づいて議論を進めることは、組織が目標を達成するための重要な指針となります。

■正論がハラスメントに転じる境界線

正論がハラスメントへと変質するのは、相手の状況や感情を無視し、正しさのみを押し付けた瞬間です。

その正しさが相手を追い詰めるための道具となり、建設的な対話ではなく一方的な攻撃へと変わったときに正論ハラスメントが生じます。

なぜ正論は武器になってしまうのか

正論そのものは決して悪いものではありません。しかし、伝え方や状況によっては、相手を追い詰める道具になってしまうことがあります。なぜ正しいはずの言葉が、時に相手を傷つけてしまうのか、その理由を挙げていきます。

■正論は相手の心の部分を見えなくする

正論を言われると、相手はたとえ納得がいかなくても、その正しさの前に何も言えなくなります。言い返せば自分が間違っていることを認めることになるため、自分の気持ちを出す場所を失ってしまうのです。

ミスを指摘されたときに正論で返されると、相手は自分の悪さを認めると同時に、自分の気持ちは聞き入れてもらえなかったという寂しさを抱くこともあります。

人間関係において正論は、相手の心を保護する余白さえも奪ってしまうことがあるのです。

■正しさに隠れた優越感

正論を伝える側は、多くの場合「相手のため」という意識を持っています。

しかしその裏側に、自分の正しさを証明したいという欲求や、無意識に相手を自分の思い通りに動かしたいという支配欲が隠れていることも少なくありません。

アドバイスという形をとっていても、実際には自分の優位性を確認するための行為になってしまえば、それは対等なコミュニケーションではなくなってしまいます。

■共感を拒絶する壁としての正論

円滑なコミュニケーションには、相手の状況を理解しようとする共感が不可欠です。

しかし、正論は論理や事実という客観的なデータのみを優先し、相手がなぜその状況に至ったかという背景を切り捨ててしまう傾向があります。

正論に固執することは、相手の感情を置き去りにし、人と人をつなぐはずの対話を遮断する壁となってしまいます。

正論ばかりが飛び交うと職場はどうなるのか

正しいことしか言えない空気になると、一見仕事はスムーズに見えても、職場のチームワークは少しずつ崩れていきます。

■部下は自分で考えるのをやめてしまう

いつも上司から「正解はこれだ」と正論を突きつけられ続けると、部下は自分で試行錯誤するのを諦めてしまいます。「どうせ何を言っても無駄」という空気が広がり、自ら工夫して動こうとする人がいなくなってしまいます。

■悪い情報が入ってこなくなる

ミスや悩みを打ち明けたときに正しさだけで返されると、部下は「困ったことを相談しても責められるだけだ」と感じるようになります。

すると、自分に不都合なことを隠したり、形だけの報告で済ませたりするようになり、本当に話し合うべき大事なことが共有されなくなります。

■トラブルに弱いチームになる

正しさを優先してばかりいると、誰かが失敗したときに「なぜ正しくできなかったのか」と相手を追い詰める空気になりがちです。

お互いに正しさを押しつけ合って責めるばかりでは、助け合いや新しい発想は生まれず、チームとして立ち直る力が弱くなってしまいます。

正論を“成長を促す言葉”に変える方法

正しい指摘が相手に届くかどうかは、言葉そのものよりも、伝える側の準備や添えられる一言で決まります。ここでは、上司から部下に対して、正論を“成長を促す言葉”に変えていくための向き合い方について触れていきます。

正しいことを言う前に、部下との間に信頼という土台があるかを確認する必要があります。自分の言葉が、部下を動かすための武器になっていないか、それとも部下を助けるためのものになっているか。一呼吸おいて、自分の心の向きを確かめることが大切です。

その確認ができたところで、次に部下とのコミュニケーションに次の2点を取り入れてみてください。

1.正しさに共感を添える

部下の行いが間違っていたとしても、いきなり間違いを指摘するのではなく、まずは部下が費やした時間や努力に目を向けてみてください。

それがたとえ結果が伴っていなくても、「ここまで頑張ったのはわかっているよ」という一言があるだけで、部下は心の緊張がほぐれ、その後のアドバイスを素直に受け入れやすくなります。

2.結論を急がず、考えるプロセスを共有する

すぐに正解を突きつけるのではなく、部下が自分の考えを整理できる時間を大切にしましょう。一方的に答えを押しつけるのをやめて、「この部分、何か迷ったところはある?」といった、部下の視点に寄り添う聞き方に変えてみてください。

正論を一方的に浴びせるのではなく、解決までの道のりを一緒に歩もうとする姿勢を見せることで、正論は部下を追い詰める刃ではなく、進むべき方向を指し示す道標に変わります。

文・構成/藤野綾子

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精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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