格安航空会社ピーチ・アビエーションがアイドルグループ「嵐」のラストツアーに向けて臨時便の運航を決めました。3月13日から15日にかけての札幌公演を受けたもので、ライブに合わせて航空会社が増便するというのは異例。嵐人気の熱狂ぶりを物語っています。
地方都市を中心に、ラストツアー開催日のホテルはどこも高騰。経済効果は計り知れません。
JRも特急列車の臨時増便を予定
ピーチ・アビエーションの臨時便は関西国際空港と新千歳空港を結ぶもので、13日から15日は午後8時35分に大阪、14日から16日には午前2時に札幌を出発するというもの。これを使えば、ライブ当日に宿泊をすることなく関西圏からの移動が可能になります。
ツアー日程中の札幌のホテルはすでに価格が高騰。普段は1~2万円程度で泊まれるビジネスホテルであっても、10万円近くまで上がりました。
チケットはファンクラブに優先権が与えられており、1月13日に先行抽選が行われました。SNSでは多くの落胆することが聞こえています。通常、ビッグイベントの抽選がある場合、ファンは当選する・しないに限らず、あらかじめ宿泊する場所を抑えておくのがセオリー。抽選に外れたらキャンセルするわけです。
しかし、例えば3月14日の札幌のホテルは現在でももうほとんど空き部屋がなく、あっても10万円を超えるようなものばかり。宿泊場所の予約を取れなかった人は、ピーチの増便を歓迎するのは間違いありません。
実はJR北海道も特急列車の臨時増便を予定しています。札幌発、旭川行きの列車。札幌ではなく旭川方面で宿泊する人が多く出ることを見越した対応です。嵐というグループの凄まじいまでの人気を物語っています。
11月の宿泊を伴う中国人旅行者は10月比で1万人減少
札幌ドームはライブ公演でおよそ5万人を収容できます。
2015年に宮城県で嵐の復興支援コンサート企画が立ち上がった際、県は経済効果を試算しました。1公演で5万人、4公演で経済効果は93億円としました。
今回の北海道公演は3公演で、宮城県の試算額を当てはめると単純計算で70億円。インフレで2026年の商品やサービスの価格が2015年比で1.2倍程度になっていたとすると、80億円は軽く超える計算です。
札幌市周辺の産業に多大な影響をもたらすのは間違いありません。
一方で、札幌は中国人観光客多いエリアの一つ。足元では中国政府の渡航制限の影響を受けています。2025年10月の宿泊を伴う中国人観光客の数は9万8000人近くいましたが、2025年11月は8万8000人まで減少しました。渡航自粛を呼びかけたのは2025年11月14日で、今後は更なる減少も懸念されます。
しかも、春節の2月中旬は厳しい冷え込みが予想されます。中国メディアによると、春節の人気海外旅行先だった日本は、上位10位から外れました。中国政府が自粛を呼びかけたことが強く影響していると見られています。
嵐のライブは中国観光客の依存度を高めていた都市に対して、新たな旅行需要をもたらす可能性が高いのです。
地方活性化との相性が良いエンタメビジネス
エンターテインメントで地域を活性化させるという取り組みは以前から活発化していました。ポニーキャニオンは2015年に地域活性化事業を立ち上げ、エンタメと観光を掛け合わせるビジネスの強化を図りました。2014年に石破茂前首相が地方創生担当大臣に任命され、このころは地域の活性化が頻繁に取り沙汰されていた時期でした。
ポニーキャニオンは観光地などを中心とした映像制作、イベント、コンテンツ制作など多岐に渡る企画を実施しました。
ぴあも日本政策投資銀行と協力し、エンタメ産業に関する調査・研究報告を継続的に行っています。音楽やスポーツ観戦などのエンタメイベントを通じて、地域との交流を促す方策を探っているのです。
旅行業界はインバウンドに沸いていますが、観光客が何らかの要因で急減する、為替が円高に振れて外国人から見た日本の魅力が相対的に低下するなど、予想できない難しさがあります。また、海外観光客の行き先は東京都や京都府、大阪府、北海道、福岡県など人気の場所に限定されてしまいます。
一方、エンタメは嵐のコンサートのように集客力があり、どの程度の経済効果が生まれるのかを算出しやすいという特徴があります。
そして、ここに推し活のトレンドが重なりました。
矢野経済研究所は、アニメやアイドルなど「オタク」の市場規模を1.3兆円程度と試算しています(「「オタク」市場に関する調査を実施(2025年)」)。アイドルが2600億円、VTuberが1260億円、アニメが4100億円。
推し活消費が世間に広まり始めたのは2010年ごろと言われています。嵐は2009年に紅白歌合戦に初出場し、2010年に日本ゴールドディスク大賞の邦楽部門にて史上初となる10冠を達成しました。推し活とともに成長したとも言えるグループで、その消費トレンドが盛り上がりを見せる中でのラストツアーとなりました。
日本中の注目を集める一大ツアーが間もなく始まります。
文/不破聡







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