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「就活ルール」は誰のため?見直し議論の陰で学生が抱える3つの不安

2026.01.31

 政府は、2029年卒業予定者から「就活ルール」の見直しを検討していることを明らかにした。企業の広報活動や選考開始時期を定めてきたこのルールは、長年にわたり実態との乖離が指摘されてきた。

 では、今回の見直しは学生にとって本当に意味のあるものなのだろうか。本記事では、就活ルールの現状と見直しの内容を整理したうえで、実際の学生の声をもとに、制度と現場の間に生じているリアルをひもといていく。

就活ルールの現状

現行の就活ルールでは、企業の広報活動の解禁が大学3年生の3月、選考解禁が4年生の6月、内定は10月以降とされている。これは、学生が学業を疎かにすることを防ぎ、公平・公正な採用活動を促すことを目的に定められてきた。

重要なのは、この就活ルールが企業に対する「要請」にとどまり、法的な拘束力を持たない点である。もともと経団連が中心となって定めてきたが、経団連に加盟していない外資系企業やベンチャー企業が、優秀な学生を確保するためにインターンや説明会を通じた早期選考を行うようになったことをきっかけに、形骸化が進んだとされている。

現在では、就活ルールは建前に過ぎないものとなっている。多くの企業が早期選考や前倒し日程で採用を行っており、就職みらい研究所の調査によれば、2025年卒業予定者の82.4%が6月1日時点で内定を得ている。こうした実態を見る限り、就活ルールは現実の就活と大きく乖離していると言わざるを得ない。

就活ルールの何が変わる?

こうした状況を受けて、政府は就活ルールの見直しに乗り出した。もっとも、今回検討されているのは、就活の早期化を抑えるために新たな規制を設ける改革ではない。むしろ、現行の就活ルールと実際の就活とのズレを認め、実態に即したルールへと変更する動きとみるのが近い。

具体的には、広報活動の解禁を大学3年生の3月、選考解禁を4年生の6月、内定時期を10月以降とする現行ルールを、それぞれ1カ月程度前倒しする案が浮上している。また、2~3月の春休み期間に説明会や選考を実施することで、授業期間中の就活を減らし、学業への影響を抑える案も検討されている。

いずれの案も「実態に即した見直し」を掲げてはいるものの、必ずしも現場の実情を十分に反映しているとは言い切れない。すでに就活が大きく前倒しで進んでいる現状を踏まえると、1カ月程度の調整で現実とのズレが解消されるとは考えにくいからだ。こうしたズレを抱えたまま進む就活ルールの見直しは、現場で就活に向き合う学生たちに新たな戸惑いをもたらしている。

就活に振り回される学生たち

政府と企業の間で就活ルールの見直しが議論される一方で、制度と実態のズレの中に置かれているのが、ほかでもない就活生だ。就活生たちは次のような悩みを抱えている。

学業との両立

就活の早期化により、学生が「授業か就活か」の選択を迫られる場面が増えている。面接や企業説明会の多くは平日の昼間に実施されるため、学生は授業を欠席して就活に臨まざるを得ないのが現状だ。大学3年生の時点では、多くの学生が週4~5日登校しており、両立は容易ではない。

こうした状況を受け、大学側も対応に苦慮している。都内の大学で教鞭をとる教授は次のように語る。

「就活で授業を休むという学生が増え始めたのは、コロナ明けくらいからです。大学としての明確な対応方針が定まっておらず、欠席扱いにするか、追加課題などで対応するかは、教員の判断に委ねられているのが現状です」

このように、就活の早期化は学生個人の問題にとどまらず、大学教育の現場そのものにも影響を及ぼしている。

周囲の早期内定による心理的負担

SNSや友人との会話を通じて、早い段階で内定を得ている同級生の存在を知ることで、「自分は出遅れているのではないか」と焦りを感じる学生は多い。特に内定時期が早いとされるコンサルティング業界や外資系企業を志望する学生の間では、「4年生になる時点で内定がないのはまずい」という空気が強い。

こうした心理的圧力の中では、「自分は何をしたいのか」「どんな働き方を望んでいるのか」を十分に考えないまま就職活動を進めてしまうことも少なくない。本来は時間をかけて行うべき企業の比較や自己理解が後回しになり、就活そのものが「いかに早く内定を得るか」という競争へと変わってしまうことも、学生にとって大きな負担となっている。

情報格差への不安

就活の早期化に伴い、学生の間では「どこまで情報を持っているか」が結果を左右するという意識が強まっている。早期選考の存在や実質的な選考開始時期といった情報は、企業の公式発表だけでは把握しきれず、口コミに依存せざるを得ないのが実情だ。

実際に筆者自身も、「カジュアル面談」という名目で企業の人事担当者と面談する機会に参加したことがある。後になって振り返ると、その場での受け答えや態度は明らかに評価の対象となっており、形式上は面談であっても、実質的には選考の一部だった。その面談を通過した学生のみが次の段階である早期選考に進める仕組みであり、こうした「非公式な選考」の存在を知っているかどうかが、結果を大きく左右している現実がある。

就活ルールの見直しは、実態とのズレを認めた点では前進と言える。しかし、学生の不安がこれだけで解消されるわけではない。就活ルールはいったい誰のためのものなのか、改めて考える必要がある。

文/宮沢敬太

Author
2003年生まれの22歳、慶應義塾大学在学中。現役大学生の視点から若者文化や最新トレンド関係の記事を執筆。

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