若者の価値観や行動が理解できず、戸惑った経験はないだろうか世代間ギャップは、いまや職場での大きな悩みの種だ。そんな悩みに、意外な角度からヒントを与えてくれるのが恋愛リアリティショーだ。とりわけNetflixで話題の『ラヴ上等』は、若者が何を重視し、何に違和感を覚えるのかを、極めてストレートに映し出している。本記事では、『ラヴ上等』を手がかりに、ビジネスマンにこそ知ってほしい若者の価値観を読み解いていきたい。
『ラヴ上等』とは?

『ラヴ上等』は、元暴走族総長や元ヤクザなど、社会のはみ出し者として生きてきた男女が共同生活を送りながら、愛に真正面から向き合う恋愛リアリティショーだ。
元ヤンの登場人物を見ても、若者のことが分かるわけがないと感じる人も多いかもしれない。確かに、社会のはみ出し者の価値観をそのまま一般化することには無理があるようにも思える。しかし、実はむしろ逆だ。
ヤンキーは、感情や価値観を内側に隠すことが苦手な若者たちである。怒りも不安も好意も、極端なまでに表情や言葉、態度に現れる。だからこそ『ラヴ上等』は、若者の本音や価値観を観察するうえで、非常に優れた素材となっている。では、『ラヴ上等』から読み取れる若者の価値観とは、具体的にどのようなものだろうか。
若者の価値観①:信頼関係がなければ言葉は届かない
『ラヴ上等』を観ていて強く感じるのが、若者にとって「意見の正しさではなく、誰から言われるか」が重要だということだ。どれだけ正しい意見や論理的な主張であっても、関係性が浅い相手からの言葉は、若者にはほとんど刺さらない。これは、いわば若者あるあるだ。
例えば、第1話で塚原とミルクがぶつかり合うシーンでは、初対面で関係性が浅い段階では、二人は互いを「敵」として意識していることが見て取れる。しかし、物語が進むにつれ二人の関係は少しずつ変化し、やがて兄弟のような距離感へと近づく。ミルクが塚原を兄的存在としてリスペクトしていることも、言動の端々から伝わってくる。このように、関係性が築かれることで初めは届かなかった言葉やアドバイスも、徐々に意味を持つようになるのだ。
若手に何かを伝えるときは、正しさよりも先に信頼関係を築くことが重要だ。信頼がない状態での正論は、アドバイスとして受け取られるどころか、場合によっては「攻撃」として受け止められてしまう。
若者の価値観②:弱みでつながる
次に、『ラヴ上等』に顕著に表れる若者の価値観が、「弱さをさらけ出すことでつながる」という点だ。番組に登場する若者たちは、それぞれ壮絶な過去やトラウマを抱えている。彼らが急速に距離を縮めるきっかけは、武勇伝や成功体験ではなく、自分の弱さや傷を打ち明ける瞬間にある。
例えば、第1話で食卓を囲みながら互いの過去について話すシーンが象徴的だ。Babyが過去に借金の取り立てが家に押しかけてきたエピソードや、おとさんが過去の性被害について語ると、場の空気は一変する。互いの弱さを認め合うことで、表面的ではない本当の信頼や絆が生まれるのだ。
若者にとっては、「完璧な上司」よりも、弱さを見せられる上司のほうが信頼される。失敗談や迷いを語ることは、威厳を損なうどころか、親近感や共感を高める効果があるのだ。
若者の価値観③:「肩書き」ではなく「筋が通っているか」
『ラヴ上等』から読み取れるもう一つの若者の価値観は、過去の栄光や肩書きよりも、それらを経た人間として、現在の言動に一貫性があるか、筋が通っているかを重視する姿勢だ。番組には、元暴走族総長や元ヤクザといった経歴を持つメンバーが多く登場するが、彼らはその肩書きによって相手を無条件に尊敬することはない。むしろ厳しく見られているのは、今この瞬間の振る舞いに筋が通っているかどうかである。
筋が通っているか否かが評価を分ける場面は多い。例えば、現役ホストのてんてんは、複数の女性に同時にアプローチしながらも、その意図を明確に語らず、ミステリアスな人物として描かれる。その振る舞いは器用ではあるが、状況に応じて態度を変えるため、どこか信用しきれない存在として受け取られている。一方、塚原は「お前の過去も俺が背負う」と言い切り、言葉と行動の一致を通じて覚悟を示す。筋が通っていることこそが、彼の評価の根拠となっている。
「上司だから言うことを聞け」というスタンスは、若者には通用しない。一人の人間として、仕事にどう向き合い、何を大切にしているのかという「生き様」を見せることが、結果として彼らの敬意を勝ち取ることにつながる。
『ラヴ上等』に登場するメンバーは決して特殊な人々ではない。彼らは、現代の若者が何を大切にし、何を嫌がるかを体現する存在だ。「最近の若者は何を考えているか分からない」と嘆く前に、この泥臭い人間ドラマ一度観てみるのはいかがだろうか。そこには、ネットには載っていない、人付き合いのヒントが隠されているはずだ。
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文/宮沢敬太







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