やる気が続かないのは性格や根性の問題ではありません。心理学の「自己決定理論」は、モチベーションの鍵は“自分で選んでいる感覚”にあると示します。本記事では、やる気を支える3つの要素と、仕事に活かす具体的なヒントをわかりやすく解説します。
CONTENTS
「やる気がどうしても出ない」
「目標を立ててもいつも三日坊主で終わってしまう」
そんな経験はありませんか?
実は、モチベーションが続かないのは、性格のせいでも努力が足りないからでもありません。心理学の視点で見ると、やる気の鍵は「自分自身の意志で選べているか」という点に隠されています。
今回は、仕事やプライベートの質を前向きに変えてくれる「自己決定理論」について、例を交えながらわかりやすく解説します。
自己決定理論とは?
私たちはよく「やる気が湧かない」と悩みますが、一方で、好きなことや興味のあることなら時間を忘れて没頭できることも知っています。この「やらされる苦痛」と「時間を忘れるほどの集中」の違いは、一体どこから生まれるのでしょうか。
ここでは、そのやる気の正体を解き明かしてくれる「自己決定理論」について見ていきましょう。
■自己決定理論とは“内側から湧き出る意欲”に注目すること
自己決定理論は、心理学者のエドワード・デシらが提唱したモチベーションに関する考え方です。
この理論では、やる気が「どこから生まれているか」を重視します。「ご褒美がもらえるからやる」といった外からの刺激よりも、「自分がやりたいからやる」という内側から湧き出る意志を大切にするのが大きな特徴です。
■やる気を支える「3つの心の栄養素」
私たちが「やる気」を自然に維持するためには、心を満たす3つの栄養素が必要です。これらが揃うことで、人は時間を忘れて物事に没頭できるようになります。
・自律性
心のハンドルを自分で握っている感覚のことです。「やらされている」のではなく「自分で選んでいる」という実感を指します。
ある状態:指示された仕事でも「どの順番で進めるか」を自分で決めて取り組めている
・有能感
「自分にはできる!」という手応えのことです。自分の能力を発揮し、一歩ずつ成長していると実感できる感覚を指します。
ある状態:以前は時間がかかっていた業務が、工夫次第でスムーズに終わるようになり、上達を感じる
・関係性
他者とのつながりのことです。周囲の人と信頼で結ばれ、お互いに認め合っているという安心感を指します。
ある状態:「この仕事はチームの役に立っている」と実感でき、仲間と支え合えている
やる気になるための条件とは?
「やる気」と一口に言っても、実はその中身はさまざまです。
まずは、やる気の“源”がどこにあるのかに注目してみましょう。心理学では、大きく分けて2つのやる気の種類があると考えられています。
そのやる気の2つの種類とは、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」です。
「外発的動機づけ」は報酬や罰、あるいは義務感といった、自分の外側にある何かのために動くことを指します。例えば、給料をもらうために働くことや、叱られたくないから勉強するという状態がこれにあたります。
もう一方の、「内発的動機づけ」は、その活動自体が楽しくて、自分の内側からやりたい気持ちが湧き出ることを指します。例えば、趣味の料理に没頭するときや、知的好奇心で本を読み漁るときのように、損得抜きでワクワクしながら取り組めている状態です。
理想的なのは後者の内発的な状態ですが、現実の仕事や家事では、どうしても外発的な動機からスタートせざるを得ない場面も多いでしょう。
そこで大切になるのが、自分のやる気が今どの位置にあるのかを知る、6つのステップという考え方です。
■心のハンドルを握る「6つのステップ」
実は、やる気は外発的なのか内発的なのかの2択だけではありません。自己決定理論では、心のハンドルをどのくらい自分で握っているかによって、やる気を以下の6つの段階に分けて考えています。
1.やる気がまったくない(無動機)
なぜそれをしているのかわからず、ただぼーっとしているような状態。
2.ご褒美やバツのため(外的調整)
「お小遣いがもらえるから」「怒られるのが嫌だから」と、完全に外側に動かされている状態。
3.プレッシャーを感じて(取り入れ的調整)
「やらないと申し訳ない」「恥ずかしい」という、自分へのプレッシャーで動く状態。
4.自分にプラスだと納得して(同一化的調整)
「自分の成長のために必要だ」と、その活動の価値を自分で認めて取り組む状態。
5.自分らしい生き方として(統合的調整)
「これをやるのが自分だ」と、自分の価値観と活動が重なっている状態。
6.ただ楽しくて(内発的動機づけ)
損得抜きに、やること自体が楽しくてたまらない最高の状態。
1.はやる気がまったくない状態で、2.から5.までは「外発的動機づけ」の段階です。数字が大きくなり下に行くほど、心のハンドルを自分で握る感覚が強まっていきます。そして最後の6.が、最も理想的な「内発的動機づけ」の状態です。
自己決定理論を仕事に活かし、自ら動く自分に変わる方法
自己決定理論の仕組みがわかると、無理に自分を奮い立たせる必要がないことに気づけます。大切なのは根性で頑張ることではなく、先ほどお伝えした「3つの心の栄養素」を、今の仕事環境に少しずつ足していくことです。
ここからは、日々の業務を前向きに取り組むためのヒントをご紹介します。
1.「やらされている」を「選んでいる」に変換する
たとえ上司からの指示であっても、その中に「自分で選べる余地」を作ってみましょう。
例えば、「今日中に資料を作って」と言われたときにはただ従うのではなく「集中したいので、午前中に一気に仕上げますね」というように、進めるタイミングや手順を自分から提案して決めてみることが効果的です。
仕事の一部でも自分の主導権で動かしている実感が自律性を刺激します。
2.小さな「できた!」という手応えを見逃さない
大きな成果を出すことだけを目指すのではなく、日々の些細な成長を自分で認めてあげることが、心のエネルギーになります。
1日の終わりに「今日はあのお客さんに丁寧な返信ができた」「昨日よりスムーズにタスクを処理できた」など、自分のスキルが発揮できた瞬間を振り返ってみましょう。
小さな上達の自覚が有能感を育み、次の意欲へとつながります。
3.「誰の役に立っているか」というつながりを意識する
目の前の作業が、巡り巡って誰の役に立っているかを想像してみることも大切です。
一見すると孤独に見えるデータ入力などの作業も、その先にいる担当者がスムーズに仕事をするための大切なバトンだと捉え直してみましょう。
「自分の仕事が誰かの安心や喜びに貢献している」という実感が関係性を満たし、孤独な作業を意味のある活動へと変えてくれます。
【参考】『公認心理師必携テキスト 改訂第2版』,学研メディカル秀潤社, 2020年3月
文・構成/藤野綾子
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