『納品』は、受注者が発注者に対して商品・サービスを提供することを指します。『検収』は、発注者が納品されたものを確認・検査することです。主体や目的、タイミングなどが異なります。
目次
納品と検収の基礎知識と違い
企業間取引において、納品と検収は密接に関連しながらも、主体や目的が異なる重要なプロセスです。まずは、それぞれの基本的な定義と特徴、両者の違い、企業間取引における一連の流れを説明します。
■納品は受注者による商品・サービスの提供行為
納品は、受注者(売り手)が発注者(買い手)に対して商品・サービスを提供する行為を指します。具体的には、契約内容に基づいて製品を届ける、またはサービスを完了させる手続きです。
単なる物理的な配送だけではなく、契約履行の重要なステップになります。事前に契約で取り決めた、納品方法・場所・期日に従って実施される計画的な行為であり、これらの条件を満たすことが重要です。
また、納品のタイミングは資金繰りにも大きく影響します。例えば、『20日締め翌月20日払い』などの支払いサイクルを設けている企業も多く、納品日や検収日が締め日を1日過ぎるだけで支払いが1カ月先送りになることがあります。
このため、特に請求の締め日や月末近くの納品は、経理処理や資金繰りの観点から非常に重要です。
■検収は発注者による確認・検査のプロセス
検収は、納品された商品・サービスが、発注内容と一致しているかを発注者が確認・検査するプロセスです。取引の品質保証において、重要な役割を果たします。
検収では主に、商品やサービスの種類・数量・品質などを、事前に定めた基準に照らし合わせて検査します。この工程を経ることで、依頼した内容と異なる商品・サービスが納品されるリスクを防ぎ、取引の信頼性を保てるのです。
実務では、受注者から納品を受けたら速やかに検収を行うことが大切です。
■納品と検収の違い
納品は受注者の責任で行われる一方、検収は発注者が実施するというように主体が異なります。目的も異なり、納品は契約履行のため、検収は納品物が発注内容に適合しているかを確認するためのプロセスです。
また、タイミングにも違いがあります。納品は契約で定められた納期までに完了すべきものですが、検収は納品後に発生し、検収期間が別途設けられるのが一般的です。
多くの場合、検収が完了すると、納品物の責任は受注者から発注者へと移行します。ただし、検収後に見つかった不具合の対応や費用負担については、瑕疵担保条項や保証期間など、個々の契約条件によって異なります。
■発注から支払いまでの流れ
企業間での取引における発注から支払いまでの流れは、一般的に以下のステップで進みます。
- 発注者が見積もりを取得して内容を確認し、発注書を作成・送付する
- 受注者が注文請書を返送して契約が成立する
- 受注者が商品の準備や製造を行い、納期までに発注者へ納品書とともに納品する
- 発注者が商品・サービスが発注内容と一致しているか検査をし、検収書を発行する
- 受注者が請求書を発行する
- 発注者が支払い条件に基づき代金を支払う
納品書と検収書の違いを詳しく解説

二つの書類の基本的な違いと役割、また各書類に記載すべき項目について詳しく解説していきます。正確な経理処理や円滑な取引のために、これらの違いを理解し、適切に取り扱うことが重要です。
■納品書の役割と記載すべき基本項目
納品書は、商品・サービスの納品時に発行する重要な書類です。法的な発行義務はないものの、取引が行われた事実を証明し、納品内容を確認するためのものです。多くの場合、所有権や責任の移転時期は、契約書や約款で別途定められます。
納品書が必要な主な理由は、注文内容と納品物の照合を容易にし、双方の取引をスムーズにする点にあります。一般的に記載される基本項目は、以下の通りです。
- 納品先名
- 納品番号
- 納品書発行日
- 書類作成者の氏名・名称(自社情報)
- 取引年月日(納品日)
- 取引内容
- 納品者情報
- 発注者情報
これらに加え、納品書番号・商品の数量・単価・小計・消費税・合計金額なども、記載するとよいでしょう。正確な情報を記載することで、取引における認識のずれを防ぎ、円滑な商取引の基盤となります。
■検収書の役割と記載すべき基本項目
検収書とは、発注者が納品された商品・サービスを確認し、発注内容と一致していることを証明するために発行する書類です。検収書には、基本的に以下の項目を記載します。
- 発注者情報
- 発注番号
- 発注日
- 受注者情報
- 件名
- 納品期日
- 納品場所
- 商品項目
- 合計金額
検収書作成時には、商品と記載内容の一致確認、数字の正確性、見積書との整合性のチェックが重要です。検収書は取引の透明性を確保し、後々のトラブルを防止する重要な役割を果たします。
納品日と検収日の違いと会計処理に与える影響

納品日と検収日のずれは、会計処理のタイミングに大きな影響を及ぼします。特に月末納品・翌月検収のケースでは、採用する会計基準によって処理方法が異なります。ここでは、納品日と検収日の違いが会計に与える影響について見ていきましょう。
■納品日と検収日はなぜずれが生じるのか
納品日と検収日にずれが生じる理由は、それぞれの行為が異なる主体によって行われるためです。
実務では、納品した商品・サービスが、契約通りの品質・数量・仕様を満たしているかを確認するために、発注者側が十分な検査時間を必要とするケースが一般的です。特に大量の商品や複雑なシステム開発などの場合、検査に数日から数週間を要するケースもあります。
また、発注者の社内手続きや承認フローの影響も無視できません。多くの企業では、検収プロセスに複数の部署・担当者の確認が必要となり、決裁権限者のスケジュールによって検収日が左右される場合もあります。
■月末納品・翌月検収のケースでの会計処理
月末納品・翌月検収の場合、会計処理は採用している売り上げ計上基準により大きく異なります。
『出荷基準』では、商品を出荷した時点で売り上げ計上するため、月末に出荷した場合は当月の売り上げです。『納品基準』を採用している企業では、商品が相手先に届いた日を基準とするため、月末に納品されれば当月の売り上げとして処理されるのが一般的です。
一方、『検収基準』を採用している場合は、相手先が品質や数量を確認し、検収が完了した時点で売り上げ計上します。そのため、月末納品・翌月検収のケースでは、売り上げが計上されるのは翌月です。
業種別で異なる納品と検収の基準

業種によって、納品と検収の進め方は大きく異なります。ここでは、代表的な業界における納品・検収プロセスの特徴と、実務上のポイントを見ていきましょう。
■ITサービス業界
ITサービス業界における納品と検収は、サービスの無形性ゆえに独特の特徴があります。
検収の流れは一般的に、受注者によるシステム納品、発注者による動作チェック、合否判定という3つのステップで進むケースが多く見られます。システム開発の複雑さに応じて、中間検収・分割検収・最終検収など、多段階の検収が行われることも珍しくありません。
重要なのは、検収の合格条件を検収仕様書などで事前に明確化しておくことです。システム開発はオーダーメード性が高いため、発注者・受注者間で認識のずれが生じやすいためです。
多くのシステム開発契約では、検収期間内に不合格通知がなければ自動的に合格と見なされること、また不合格通知には合理的な理由が必要とされることも重要なポイントになります。検収仕様書の内容を十分確認し、それに忠実な納品物を制作することが欠かせません。
■建設・工事業界
建設・工事業界では、長期間にわたるプロジェクトの性質上、段階的な検収方法が採用されています。特に大規模な建設工事では、工期が長期化するため、工程を複数に分けて契約し、個々に成果物を引き渡す『分割検収』が採用されることが多いようです。
例えば、50戸の建売住宅建設では、1戸ごとに引き渡して検収を行い、その都度工事代金を支払うような契約形態を取ることがあります。この方法は単なる『出来高払い』とは異なり、実際の成果物の引き渡しを伴う点が特徴です。
分割検収のメリットは、双方にあります。発注者側はリスク分散ができ、工事の進捗を段階的に確認できるため、問題点の早期発見が可能です。また、予算管理もしやすくなります。
受注者側にとっては、キャッシュフローが改善されるのがメリットです。







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