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売り手と買い手で考え方はどう変わる?「支払いサイト」の基礎知識と取引先との一般的な決め方

2026.02.16

支払いサイトとは、取引先に代金を支払うまでの期間のことです。一般的には30日間ですが、契約によってはより長くなることもあります。支払いサイトに関する基本的な知識について解説します。

支払いサイトとは?

企業間取引において、物品の購入や発注に関する支払いまでの期限は経営に影響を与える要素の一つです。まずは、支払いサイトの基本的な知識について解説します。

■支払いサイトとは取引先への入金までの猶予期間

支払いサイトとは、商取引において取引代金の締め日から、実際に代金を支払う期日までの猶予期間を指す言葉です。例えば『月末までに納品された品物の金額を翌月末に払う』などの形で取り決められます。

支払いまでの期間は、原則として取引先同士の合意によって決まりますが、下請法などの法律で上限が設けられる場合もあります。

売り手にとっては、売り上げを現金化できるまでの期間であるため、資金繰りという観点から企業経営に影響を与える要素の一つといえるでしょう。期間は、業界の慣例や取引先との力関係によっても変わることがあります。

■売り手と買い手別の支払いサイトの考え方

支払いサイトの長さによるメリットは、売り手と買い手で異なります。売り手にとっては、短いほど有利です。売上金を早く回収することで資金繰りが安定し、次の仕入れや投資に資金を回せるためです。

一方、買い手にとっては長いほど有利になります。猶予期間が長くなれば、その間手元資金を運用できるため、キャッシュフローに余裕が生まれるでしょう。

このように相反する利害関係があるため、支払いサイトは取引の交渉において重要なポイントとなります。

一般的な支払いサイトの長さと特徴

カレンダー
(出典) pixta.jp

支払いサイトには、さまざまな種類があります。一般的な例としては、30日サイト・60日サイトに加え、手形取引による長期サイトなどがよく挙げられます。ここでは、代表的な三つのパターンと、その特徴について見ていきましょう。

■30日サイト

30日サイトは、支払いサイトの中で代表的な例です。『月末締め翌月末払い』とも呼ばれ、多くの企業で採用されています。例えば、4月1日から30日までに発生した取引を4月30日に締め切り、翌月末日である5月31日に支払われるというものです。

売り手・買い手の双方にとって経理管理がしやすく、債務や売り上げを月単位で把握できるため、財務管理が整理しやすくなるというメリットがあります。特に売り手にとっては、次の事業サイクルに円滑に資金を投入できるのが利点です。

■60日サイト

60日サイトは、『月末締め翌々月末払い』という支払い条件を指すのが一般的です。例えば、1月に発生した取引を1月末に締め切った場合、実際の支払いは3月末です。この支払い条件は、買い手として交渉力の強い大企業側で採用されるケースが多く見られます。

1月分の売り上げが入金される3月末には、すでに2月分と3月分の取引も完了している状態です。最大で約3カ月分の売り上げが未回収状態となるため、中小企業の場合は資金繰りへの影響が大きいことに注意が必要です。

■手形取引のサイト

手形取引における支払いサイトは、90日・120日といった、比較的長い期間に設定されるケースも多いのが特徴です。通常の支払いサイトに加えて、手形の振出日から支払い期日までの期間が上乗せされるためです。

支払いサイトが長期化すると、売り手側は売掛金の回収までに長い期間を要することになり、資金繰りに大きな影響を与えます。利益を計上していても実際の入金が遅れることで、いわゆる黒字倒産のリスクも高まるでしょう。

90日以上の長期サイトを利用している企業は、資金繰りや取引先への負担を踏まえ、支払い条件の見直しを検討する余地が大きいといえます。

支払いサイトの決め方

契約書にサインをする
(出典) pixta.jp

適切な支払いサイトを設定するためには、自社の財務状況を正確に把握し、取引先との関係性も考慮することが大切です。ここでは、具体的な支払いサイトの決定方法について解説します。

■自社が許容可能な支払いサイトを考える

まず、自社が許容可能な支払いサイトを考えることが肝心です。キャッシュフロー分析を行い、運転資金がどれだけ必要かを把握しましょう。

支払いサイトが30日の場合は最大で2カ月分、60日なら最大で3カ月分の売り上げが未回収になります。その間の資金繰りを、維持できるかどうかが重要です。

例えば、月商1,000万円の会社がサイトを30日から60日に延長した場合、追加で1,000万円の運転資金が必要になります。自社の財務状況を冷静に分析し、無理のない期間を設定することが経営安定化の鍵です。

■取引先の合意を得る

支払いによるトラブルを防ぐためには、取引先の合意を得る必要があります。相手側の合意を得るには、交換条件を提示するのが効果的です。

交換条件として提示する内容は、売り手側・買い手側によって異なりますが、できるだけ具体的にするのがポイントです。一例としては、売り手側がサイト短縮と引き換えに、一定の値下げを提示する方法もあります。

長年の取引実績がある場合は、過去の信頼関係を基に交渉するのも有効です。買い手側からの交渉であれば、「これまで5年間一度も支払い遅延がなかった実績を踏まえ」といった前置きで提案すると、相手も安心して検討できるでしょう。

■書面に記載して明確にする

交渉が成立したら、その条件を必ず書面に残しましょう。口頭での合意だけでは、後々『言った・言わない』のトラブルに発展するリスクがあります。

書面化する際は、『変更後の支払いサイトがいつから適用されるのか』を明確に記載した覚書を作成するか、新しい契約書を交わすことが重要です。

書面化することで、社内の経理処理も円滑になります。特に大口取引先との条件変更は、会社の資金繰りに大きな影響を与えるため、経営層の承認を得た上で、正式な文書として残しましょう。

売り手側が支払いサイトを短縮する方法

スマホを見ながら考える人物
(出典) pixta.jp

売り手側にとって、支払いサイトの短縮は資金繰り改善の鍵となります。特に中小企業では、売掛金の回収期間短縮が経営安定につながります。以下、具体的な事例を交えながら、支払いサイトを短縮する方法を見ていきましょう。

■早期支払いの特典を用意

早期に支払うことを条件に、買い手側に特典を提供する方法があります。例えば、『10日以内の支払いで、請求額から2%割引く』といったインセンティブを設けるのもよいでしょう。

『10日以内の支払いで2%割引、20日以内で1%割引』のように段階的な割引率を設けると、より効果的な資金回収が可能になります。

売り手が債権を早急に現金化できるだけでなく、買い手にとっても経済的メリットがあるため交渉が成立しやすく、双方にとってWin-Winの関係を構築できるでしょう。

■取引方法の切り替えや自動決済の導入

取引方法の切り替えや自動決済システムの導入も、サイトの短縮に効果的です。長期サイトになりがちな手形から現金へ取引方法を移行することで、回収までの期間を大幅に短縮できます。

また、自動決済システムの導入によって、支払いが遅延するリスクを低減できます。特にサブスクリプションモデルを活用すると、一度の設定で継続的な自動決済が可能になるため、請求書発行や入金確認などの手間を大幅に減らせるでしょう。

システム導入には初期コストがかかりますが、安定したキャッシュフローの確保と業務効率化によるリターンが期待できます。

買い手側が支払いサイトを延長する方法

デスクワーク
(出典) pixta.jp

短期間の支払いサイトでは資金繰りが難しい場合、取引先に交渉し、サイトを延長してもらうことが可能です。取引先との信頼関係を損なわず、スムーズに交渉する方法を二つ挙げて紹介します。

■大量注文や継続発注を条件に交渉

支払いサイトの延長で効果的な方法の一つが、大量注文や継続発注を条件にした交渉です。安定した売り上げ確保は、売り手側にとって大きな魅力となるため、交渉の有効な切り札となるでしょう。

例えば、「年間発注契約を締結する代わりに、支払いサイトを現行の30日から60日に延長してほしい」といった提案は、双方にメリットがある建設的な交渉です。

交渉の際は取引全体の価値向上を意識し、一方的な要求ではなく、お互いの事業発展につながる提案を心がけることが重要です。

■分割払いの提案や法人カード決済の活用

分割払いの提案や、法人カード決済の活用という方法もあります。分割払いを依頼する際は、具体的な理由と実現可能な支払い計画を提示することが重要です。

法人カードによる決済にすれば、取引先は通常より早いタイミングで入金を受けられる一方、買い手側はカードの支払いサイトを活用できます。さらに、カード会社が提供する分割払いオプションを利用することで、資金負担を平準化できるのが利点です。

提案を行う際は、取引先との信頼関係を損なわないよう、誠実なコミュニケーションを心がけ、後々のトラブルを防ぐために合意内容を書面で残すことが大切です。

支払いサイトについてのポイントと注意点

ポイント
(出典) pixta.jp

支払いサイトに関する注意点についても、しっかり押さえておきましょう。最後に、法的な規制や資金繰り改善の手段に関する二つのポイントについて解説します。

■中小受託事業者への支払いは60日以内

これまで、いわゆる下請事業者の利益を保護するために設けられていた『下請法』が改正され、2026年1月から『中小受託取引適正化法(取適法)』として施行されました。

『取適法』では発注者側に対し、中小受託事業者(旧下請事業者)への支払い期日を、60日以内のできるだけ短期間に設定することを義務付けています。

60日の起算点は検収日ではなく、『給付を受領した日』です。例えば、4月10日に納品を受けた場合、4月10日から数えて60日目の6月8日までに支払いを完了させる必要があります。期間が60日を超えると、違法となるので注意しましょう。

出典:2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります | 政府広報オンライン

■債権の早期現金化にはファクタリングも有効

支払いサイトが長い場合、資金繰りに困難が生じるケースがあります。そのようなときは、ファクタリングの活用を検討するのもよいでしょう。

ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に現金化するサービスです。最短即日で、資金調達が可能なケースもあります。

自社の財務状況が一時的に悪化していても、売掛先の信用力があれば利用可能なため、急な資金需要に対応できるのもポイントです。ただし、手数料が発生するため、メリット・デメリットを考慮した上で活用を検討してみるとよいでしょう。

支払いサイトは資金繰りを左右する重要な要素

パソコンを操作する手元
(出典) pixta.jp

支払いサイトは取引先への入金までの猶予期間のことで、企業の資金繰りに大きな影響を与える重要な要素です。

支払いまでの期間について、売り手は短く、買い手は長く希望する傾向にあります。期間についての交渉では、早期支払いの特典提供や大量注文を条件とする方法が効果的です。

また、2026年1月から施行された『取適法』による60日以内の支払い義務や、ファクタリングによる債権の早期現金化など、法的制限や対応策についても理解しておきましょう。

構成/編集部

技術書の校正、クレジット会社のバックオフィス・飲食業・配達・IT系流通会社の営業事務など、さまざまな職種を経験し、2019年にライターとしての活動を開始。 ビジネス・医療・教育・地域振興といった幅広い分野で、取材や記事執筆を担当。 わかりやすく丁寧な文章で読者に寄り添う記事作りを心がけている。 英検準1級、化粧品検定1級、食生活指導士2級。趣味は映画鑑賞と音楽。 現在は弾き語りを目標にギターを練習中。

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