事実を確認しただけなのに、「そんな話はしていない」「考えすぎだ」と否定され続ける——それが繰り返されているなら、ガスライティングの可能性があります。本記事では、職場で起きやすいガスライティングの具体例と、その影響、見極めるための視点を解説します。
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職場で、事実を確認しただけなのに、「そんな話はしていない」「早とちりしないで」と否定されたことはありませんか?
話がかみ合わず、何度確認しても答えがはっきりしない。
そのうち、「また自分が間違っていたのかも」と感じて、確かめること自体をためらうようになる。
もし、それが何度も続いているとしたら、たまたまのすれ違いではないかもしれません。相手が、否定を繰り返すことであなたの判断を揺さぶり、主導権を握ろうとしている可能性があります。本稿では、職場で起きるガスライティングの典型的な事例と、その影響について詳しくお話します。
ガスライティングとは何か
では、ガスライティングとは何でしょうか。具体的に見ていきましょう。
ガスライティングとは、相手の「そう思った」「そう理解した」という感覚を繰り返し否定し続ける関わり方です。立場に差があり、距離を置きにくい関係で起きやすくなります。
具体的な言い方としては、こうです。
「そんな話はしていない」
「考えすぎだよ」
「被害妄想じゃない?」
否定されるやり取りが続くと、「何を信じて話せばいいのか」がわからなくなり、違和感を口にしなくなっていきます。
否定する相手は、何があったかを一緒に確かめようとはせず、「そう思うほうが変だ」と話の焦点をずらしていきます。こうして、主導権は、否定する側が握ることになります。これが、ガスライティングで起きていることです。
■職場におけるガスライティング事例:優秀な部下を脅威に感じた上司のケース
ここでは、評価され始めた部下を「脅威」と感じた上司が、主導権を保つために相手の自信を削っていくケースを紹介します。
その部下は、仕事が早く、ミスも少ない。会議では要点を押さえて発言し、クライアントからの評価も安定していました。
やがて、上層部から名前が出ることが増え、上司より先に意見を求められる場面も出てきます。
それを境に、上司の関わり方が変わります。「その捉え方、ズレてるよ」「君、前から勘違いが多いよね」「話、ちゃんと聞いてた?」修正点を尋ねても、「そこじゃない」とはぐらかされる。
部下の発言が減ってくると、今度はこう言われます。「君は言われたことだけやってくれればいい」こうして、仕事の裁量が少しずつ奪われていきます。
部下は「自分の理解が足りないのかも」と思い、言葉を選び直します。それでも、「だから、何回同じこと言わせるの?」と否定する発言ばかり。
上司は、部下の仕事ぶりや発言が目立つ場面になるほど、会議では話を振らず、重要な判断は自分のところで止めるようになります。
自分より評価されそうな相手に、主導権を渡したくない。その恐れが、否定を繰り返す関わり方として現れてきます。
結果、部下は次第に発言を控えるようになり、ある時期を境にまったく話さなくなる。そんな変化が、現場で実際に起きていたという話も少なくありません。これが、優秀な部下を脅威に感じた上司によるガスライティングの典型例です。
これはガスライティングか?を判断するチェックポイント
ガスライティングかどうかを見極めるポイントを4つ紹介します。実際のやり取りに当てはめてみてください。
(1)否定が繰り返される
「前にも言ったよね」「またその話?」こうした否定や揶揄が、何度も繰り返されていませんか?「もう聞かないほうがいいかも」と感じているなら、その時点で、対等なやり取りが成立しなくなっています。
(2)事実を確かめようとすると話が止まる
「議事録を見てみましょう」「記録を整理して確認しませんか」そう提案したときに、「そこは問題じゃない」と話を切られていませんか?
事実を確かめようとしているのに、自分が責められる流れになっている場合、健全なやり取りとは言えなくなっています。
(3)話の論点が「出来事」ではなく「受け取り方」にすり替わっている
「君の理解、ズレてるよ」「考えすぎなんじゃない?」確認しようとした内容そのものではなく、「あなたの受け取り方や性格」のほうに話がずれていないでしょうか。
「自分が変なのかな」とばかり考えてしまうなら、論点が意図的にずらされている可能性があります。
(4)一人で抱え込む状態になっている
「そう思ってるのは君だけ」そんなふうに言われて、誰かに相談しづらくなっていませんか?「大げさだと思われそう」と、一人で抱え込む時間が増えているとしたら、その時点で、対等なやり取りからズレ始めている可能性があります。
ガスライティングを放置すると、職場で何が起きるか
一見、当事者間の問題に見えるガスライティングも、仕事の進め方や責任の所在に影響を及ぼします。
(1)決める人がいなくなる
否定される経験が続くと、ちょっとした判断でも指示を待つ場面が増えます。結果、決める人がいなくなり仕事のスピードが落ちてしまいます。
(2)優秀だった人から黙っていなくなる
発言を控え、必要最低限の返事しかしなくなります。やがて、異動や退職という形で静かに職場を離れることもあります。
(3)責任の所在が曖昧になる
決定事項が共有されず、「誰が決めたのか分からない」「聞いていない」というやり取りが増えていきます。その結果、問題が起きても原因を振り返れなくなります。
ガスライティングは「すれ違い」ではない
ガスライティングは、ただのコミュニケーションのズレや、考え方の違いとは性質が違います。
そこには、相手をコントロールしたい、自分が上の立場でいたい、そうした意図が含まれていることが多いからです。
「おかしいかも」と感じたら、この記事の見極めポイントを当てはめてみてください。早めに気づけるかどうかで、その後の関係や仕事のしやすさは大きく変わります。今回の記事が、その判断の助けになれば幸いです。
構成/高見 綾
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