2026年がスタートして、気分一新、新しい仕事や勉強を始めようと思ったのに、なんだかうまくいかない・・・・実はこうした症状は、その人の気持ちや「やる気」の問題ではなく、脳の「初期設定」なのだと、言語学者で明治大学教授の堀田秀吾先生は教えてくれた。
新しい行動を始めるのが億劫なのは、人間の脳がそういう仕組みになっているから。では、その初期設定を、どう上書き&変更したら良いのか。堀田先生は「習慣化」が重要なカギになっていると考えている。
「習慣化には意志力は要りません。仕事、ダイエット、健康管理、勉強を成功させるためのカギは習慣化です」という堀田先生。最近はTVコメンテーターとしても活躍中だが、「人は習慣化すればなんでもできる」という考え方を広めるために、このほど「ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科」(SBクリエイティブ発刊、定価1760円)を発刊した。
今回は堀田先生にピックアップしてもらった、仕事を効率的に進めるための21の習慣化の実践方法について、具体的に紹介する。
習慣化には3つの原則がある
「習慣化に意志力はいらない」という堀田先生だが、実は習慣化には3つの原則があると解説している。習慣化を身に着ける前に知っておくべき大前提である3つの原則の、1つ目は「まず動く」である。
体が先で脳が後。人間のやる気を生み出す脳の部位は「側坐核(そくざかく)」という部分で、これは人が行動をし始めない限り、働きだすことができないということが、脳科学の研究で明らかになっている。つまり、やる気はスイッチではなく、エンジンと考えること。まず動き、やってみることで、エンジンが働いていく。
習慣化の原則2は「すでに備わっている習慣にくっつける」。ハビット・スタッキングと呼ばれる原則である。すでに備わっている習慣(ハビット)に新しい行動をくっつける(スタッキング)することで、精神的な負担を少なくしながら、新しい習慣をすぐに身に着けることができる。
例えば寝る前の歯磨きと、英語単語の暗記を紐づけるのは、英単語だけを単独で覚えるよりも身に付きやすい。歯磨きは誰もが必ず行う習慣なので、それに持続的な癖をつけるだけで、1年後や3年後の自分が全く変わってくる。
原則3は「環境を利用する」である。堀田先生は、「人間の意思決定は私たちが考えている以上に、環境に依存し、最善の妥協をする形で行なわれています。裏を返せば、環境が人間の意思決定を左右するということは、意志の強さ・弱さとは無関係に、人間の行動は環境によって変えることができるということです」と、教ええてくれた。
2017年、アメリカの行動経済学者リチャード・セーラーはノーベル経済学賞を受賞したが、彼が主張した「ナッジ」という行動経済学用語が注目された。これは行動科学の知見を利用して、人々の選択の自由を損なうことなく、環境を変えることで、本人や社会にとって好ましい行動を実現させる方法である。
ダイエットをしようと思っても、家に美味しいお菓子があれば、つい食べたくなるのが人間というもの。でも、お菓子が無い環境に身を置けば、人はその環境に順応する。スーパーやコンビニにお菓子を買いに行くのは面倒なので、自然にダイエットができる。
人の行動は環境に左右されるのである。これを行動経済学ではナッジと呼んでいる。ナッジで意図的に環境を整備することによって人間の意思決定や行動を良い方向へと導くことが可能となる。
これらの原則を踏まえた上で、科学的に証明された仕事の効率化が実現する21の習慣を紹介しよう。
21の仕事の効率化習慣
1)時計の針を速める
集中力を高め作業効率を上げたい場合時計の運針速度を1.5倍速にしてみると作業効率が上がる。時計の針をコントロールできるスマホの機能を使うと、クオリティを下げずに作業は速くなる。個人的には、この「実際の時間よりも早く進む時計のアプリ」は、次の予定があるのにギリギリまで作業をして遅刻しそうになる人にも、ぜひお勧めしたい。
2)先延ばしグセをなくす
どうしても先延ばししてしまう癖がある人はご褒美を用意して、やらざるを得ない環境を整え、不安を取り除くこと。先延ばしグセの改善策はそうしたくなる、あるいはそうせざるを得ない、という状況や環境をいかにして作り出すことができるかがポイント。堀田先生は先延ばしグセは簡単に治せるもので、次にあげる3つを実践すれば、だれでもすぐにクセを取り除けると教えてくれた。1)報酬を用意、2)環境を整える、3)不安を取り除く、この3つで、先延ばしクセは激減する。
3)別の作業をちょくちょく挟む
人間の集中力は、持続しない。25分間ごとに休息を入れたり、作業の途中でちょくちょく別のことを挟んで、脳を飽きさせないようにする。
4)ツァイガルニク効果を利用する
ツァイガルニク効果とは、ロシアの研究者ツァイガルニク氏によって提唱されたもので、「人間は未完の出来事のほうが記憶に残りやすい」という習性がある。作業はあえてキリの悪いことでやめて、次回、すぐに取り掛かれるようにするのがコツである。
5)ボーッとする
ワシントン大学の研究によると、脳のエネルギー消費の大部分は、特別な作業をしていない安静時で既に使われていることが、証明された。そして、新しい課題に取り組むときのエネルギー増加は、わずか5から10%程度しかなかった。つまり、ボーッとしている方が、脳が働き、脳の血流が均一になって、エネルギーが脳のいろいろな時にところに行き渡り、ひらめきやすくなるのである。
6) 30分以内の昼寝をする
NASAの研究によると、26分の仮眠をとることで、パフォーマンスが睡眠前よりも36%向上することが証明された。パフォーマンスをアップさせたいならば、思い切って昼寝をしてみよう。
7)コーヒーナップをとる
コーヒーナップ(昼寝)とはコーヒーを飲んだ後30分程寝ると頭が冴える。ラフパラ大学の研究で明らかになったもので、コーヒーを使った昼寝の習慣化が勉強や仕事の効率を上げる。コーヒーの香りには睡眠不足や、疲労の原因とされる活性酸素によって破壊された脳細胞を修復するという、良い効果もある。
8)歯磨きでリフレッシュする
脳が疲れたら、歯を磨いてリフレッシュする。脳が疲れた後にする歯磨きには、脳を活性化させる効果があることが、千葉大学と花王ヒューマンヘルスケア研究センターの共同研究で明らかになっている。
9)ラムネを食べる
ラムネなどブドウ糖を摂取すると注意力が上がる。仕事や作業勉強中にイライラしたり、注意力が散漫になってきたら、ラムネでエネルギーチャージをすると良い。
10)かわいい写真を見る
可愛いものを身の回りに置くことで、作業効率を上げることができる。これは広島大学で学生約130人を対象に行われた実験の結果、明らかになったもの。集中力が途切れたら、スマホで1分から1分半ほど、かわいい赤ちゃんや子猫・子犬などの写真を見ると脳が活性化される。
11)ステルス性ストレスに注意する
自分でも気づかぬうちに蓄積され、行動に反映されてしまうのが「ステルス性ストレス」である。例えばイスラエルの刑務所で一年に下された仮釈放についての研究では、午前中の早い時間から審査された受刑者は約65%が仮釈放を認められたのに対し、時間がたつにつれその確率が0%近くまで下がっていった。決断力が落ちる時間帯には決断しないように注意することが重要となる。逆に、スティーブ・ジョブズが黒のタートルネック以外は着用しないと決めたように、決断しなくていいオートマチック化を取り入れることも、効果的である。
12)あえて乱雑な場所で仕事をする
アイディアが求められるような仕事は、あえてものが置かれた机や場所で行ってみると、アイディアが浮かびやすい。日常業務的な仕事をするのであれば、整頓されるデスクのほうが好ましいが、発想力を求められるような仕事においては、デスクの周辺にさまざまなものが置かれている方が、アイディアが浮かびやすい。
13)カフェで仕事をする
雑音がある方が、アイディアが湧き、パフォーマンスが上がる。イリノイ大学の研究によると、比較的静かな環境よりも、適度な周囲の雑音(70dB程度、ちょうどカフェの店内などの音)がある場所のほうが、創造性を求められる仕事においてはパフォーマンスが向上した。
14)音楽を聴きながら作業する
音楽を聴くと脳の報酬系と呼ばれる働きが活発になるため、パフォーマンスがアップする。これはモーツァルト効果と呼ばれるもので、実際にモーツァルトの音楽を聴くことで、脳に良い影響を与え、脳の活性化や仕事の効率を上げることができる。
15)パブリック・コメントをする
パブリック・コメントとは、目標などを公言すること。人間は決定を下したり、ある決意を実行しようとする時、自分にも他者にも圧力をかけることで、自分が決めたコミットメントからぶれないよう、一貫した行動を取れるようになる。
16)イフ・ゼン・プランニングをする
イフ・ゼン・プランニングとは「Aがきたらその時はBをする」というルールをあらかじめ決めておくこと。そうすることで、誘惑やミスを回避することが可能になる上に、行動も起こしやすくなる。パターンを決めてしまえば脳や体がスムーズに動きやすい。
例えば仕事においては「もし〇〇をやる時には必ずここを注意して、終わった後は〇〇をチェックする」というように決めておけば、よく起こりがちなミスを回避しやすくなったり、ストレスを減らすことができる。
17)目標設定はコピペする
目標設定に悩んだらできる人の目標をコピペすること。仕事は「自分の好みに似た人」の意見を参考に決断する。コーネル大学の研究では、できる人は周囲にいる自分の好みに似た人を素早く見出して、その人を参考にして決断する。一方で、できない人は世間の平均的な意見にしたがって判断する傾向が高いことが、証明されている。
18)自問自答する
脳内の独り言で、セルフコントロール力を上げることができる。トロント大学の研究では「自分のやろうとしている行動は正しいのか、間違いのない選択か?」と自問自答をしながら、指定された色の図形が表示されたらボタンを押す作業したところ、通常時よりも30%ほど正解率が高くなった。脳内で自問自答をしながら、独り言で思っていることを言語化すると、問題解決の糸口を掴みやすくなる。
19)セルフトークをする
セルフトークすなわち独り言は、自己をコントロールする際、思わぬ効果を発揮することができる。例えば「やるぞ」と気合を入れるよりも「やれるかな?」と自分に問いかけ、自分で決める自由がある方が、結果が出やすい。具体的には、目の前の仕事に臨む時は、絶対にやると前のめりで考えるよりも、「期日までにどこまで満足できるものが完成するか?」と問いかけながら、課題に取り組んだ方が、脳のエンジンは働きやすくなる。
20)ワンクッション置いて決断する
人間は損失が頭をよぎると、リスクを取ってまで「いちかばちか」に掛けやすい。より客観視できる環境にした上で、正しい決断をすることが大切である。そのためにはワンクッションおいて、冷静に対処できるテクニックを身につけること。
シカゴ大学では母国語と第二外国語の二つを使って、いかに正しい判断ができるかという実験を行なった。すると母国語で意思決定をしたグループは、第二外国語で意思決定をしたグループに比べて、感情が邪魔をして判断に誤りが多かった。ワンクッションおいて、第二外国語を使ったことで、より客観的かつ理性的な判断が可能になったのである。
21)ひと笑いしてから取り組む
作業に取り掛かる前にコメディを見たり、好きなおやつを食べるなど、幸福に感じる時間を作ると生産性が上がる。特に「笑い」で幸福感を高めてから、仕事や勉強に取り掛かると効率が良い。逆にメンタルが沈むと、注意力や集中力が低下する。生産性を上げるためには、働いている人が幸せと感じる時間を増やすことがポイントとなる。
これら21の科学的に証明された仕事の効率化習慣は、特に難しいものはひとつもない。堀田先生は「習慣化は、一発逆転の魔法ではありません。けれど、静かに、着実に、人生を動かして行く力を持っています」と教えてくれた。新刊書ではこの21の効率化に加えて、全部で112の人生が変わるテクニックを紹介している。一つでもピンときたらぜひ、他の習慣化も取り入れてみて。
堀田秀吾さん
言語学者(法言語学、心理言語学)。明治大学教授。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D. in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年、明治大学法学部教授。司法分野におけるコミュニケーションに関して、社会言語学、心理言語学、脳科学などのさまざまな学術分野の知見を融合した多角的な研究を国内外で展開している。また、研究以外の活動も積極的に行っており、企業の顧問や芸能事務所の監修、ワイドショーのレギュラー・コメンテーターなども務める。著書に『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング・共著)、『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)など多数。
文/柿川鮎子
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