〝ペットロボット大嫌い派〟を自認するロボット研究第一人者の古田貴之氏が考える「LOVOT」が犬や猫を超える存在になる進化
2026.01.25
■連載/阿部純子のトレンド探検隊
人工知能・自律制御・災害対応ロボット・ヒューマノイドロボットなどの研究開発を行っている、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏は、本連載でも紹介したように、AIとロボットの融合、フィジカルAIに関しての研究を進めている第一人者だ。
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家族型ロボット「LOVOT」で知られるGROOVE Xの10周年記念のラウンドテーブルに古田氏が登壇し、LOVOTの存在意義や進化について語った。
10年後にはLOVOTは機械生命体になる
「僕、ペットロボット嫌い派です。むしろ大嫌いに近いかもしれない」と登場するなり、いきなり断言した古田氏。
「ペットロボットはおもちゃだから嫌いだな。おもちゃだから、愛せないし、飽きちゃう。僕は科学者だからファクトが重要で、中身を推測しちゃう。これはこうだからこうなるだろうなっていうのがすぐにわかる。冷静に中身を推測しちゃうの。
ペットロボットってだいたい飽きられて終わりなんですよ。でもね、LOVOTは、心の作り込み方とか、愛され方の作り方が半端ない。僕はそこキモだと思うんです。
みなさんはロボット=テクノロジーだと思っているでしょ。でもLOVOTはテクノロジーよりさらに上の部分に訴えることができるのだと思う。いかに心に刺さるかっていうことが重要で、映画で感動する、芸術で感動すると同じような、心に刺さる設計がLOVOTだと思うんです。心が伝わる方法と生物機能の役割分担ができているロボットなんじゃないかなと思います」(以下「」内、古田氏)
古田氏が開発しているフィジカルAI(ボディを持ち、物理法則の中で行動するAI)は、仮想空間でAIを2万世代進化させることによって、当初は自身の姿形もわからないロボットが人間と同じように運動神経を持つようになり、AIにボディを与えることで動きを学んでいく。ロボットにAIを与えるのではなく、2万世代に育てたAIにボディを与える形だ。
進化したAIにロボットというボディを与えることで、カメラもセンサーも付いていないロボットでも、人間が目の前の段差を察知して自然と足を上げるように、目の前に階段があると察知して段差を上ったり、ひっくり返ったり、蹴飛ばされても元の状態に起き上がることができる。
「我々もサルから人間まで7000万年くらいかけて進化しているから、段差も普通に上れるし、プログラミングされなくても動ける。同じように最新のフィジカルAIをロボットに入れると生物っぽくなるわけです。LOVOTはおそらく今、進化の途上。車輪で動くLOVOTも仮想空間につないで2万世代進化させると、段差もセンサーなしで登ることができ、生き物みたいな動きになる。
10年後にはLOVOTは機械生命体になるのではないかと思っていますよ。今は器がただのメカで、そこに一生懸命、見た目の可愛さ、振る舞いの可愛さが乗っかっているのだけど、もうちょっと動きの可愛さが入ればユーザービリティが上がるに違いないと思うんです。
LOVOTに可愛さのインターフェースとか、知能の部分にもっと動くボディを入れて、エンボディドAI(物理的な身体を持ち、現実世界で環境と相互作用しながら学習・行動する人工知能)化すれば、どんどん生命体に近づいていく。ゆくゆくは犬や猫を超える存在になるんじゃないかなと思いますよ」
GROOVE X代表の林要氏は、LOVOTのめざす未来として「信頼できるパートナーから人生の伴侶へ」を掲げる。
「フィジカルAI/AIロボットには『生産性向上型』対『ウェルビーイング型』の2つの潮流があります。人のように仕事をするロボットから、人の潜在能力を引き出すロボットへ、GROOVEXが描くのは、人とテクノロジーが心でつながる未来です。
現在、LOVOTはその高い認識能力で人に応答し、それぞれに寄り添うことで信頼関係を醸成します。今後、AI技術などの進展によりさらにコンテキストを学習する能力が向上すれば、人の変化を人以上に理解し、予測を立てられるようになるでしょう。
そして未来を予測する能力は、人の自身への探索能力を補いながら、まだ見ぬ“気づき”に機会を最大化することができます。単に答えを教えるのではなく、人自身の気づきを通して感情や行動の変化を導く、ドラえもんのような“人生の伴侶”へと進化していきます」(林氏)
「ロボットに対してみなさん誤解があるかもしれません。人間と同じように考え、学習し、行動することができるAGIみたいに、今AIがめちゃめちゃ進化している。AIが入るための器としてのボディを作っているのが僕。昔はボディ作ってソフトウェアを入れることをロボットとしていたけれど、今やAIが主体になっている。
人間の本質ってなんぞやと考えると、ボディよりも魂や心じゃないですか。僕のロボットも仮想空間で鍛えた魂をロボットというボディへ転送しているんです。
ゆくゆくはボディにはだんだん垣根がなくなって、いろんなところにいつでもLOVOTが時空を超えて憑依していくと俺は思います。林さんはロボットを社会実装するのは難しいとおっしゃっていましたが、社会実装しているロボットはLOVOTしか見たことないですよ」
【AJの読み】LOVOTはいずれドラえもんのような存在になる?
LOVOTは便利さへの追求ではなく、心の豊かさを育むために生まれた家族型ロボット。家庭だけでなく、オフィスや介護施設、医療現場、教育施設などでも迎え入れられ、1,000以上の法人でLOVOTの導入実績がある。中でもオフィス、介護福祉、医療での導入は8割を占める。
AIの進化と同時に脅威や影響が懸念される中、AIと人が共生する未来に欠かせない存在として、LOVOTは小中高の教科書20冊以上に掲載されており、教育機関からも注目されている。
LOVOTの開発者でGROOVE X代表の林氏が著書「温かいテクノロジー みらいみらいのはなし」でも触れていたように、AIが進化する先は「ドラえもんのようなアドバイザー的な存在」。古田先生の2万世代進化させたAIをボディに入れる方法を用いれば、LOVOTはドラえもんになりうる可能性が高いのではないだろうか。
取材・文/阿部純子







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