企業のハラスメント対策が進む一方で、部下が上司に対して攻撃的な言動を行う「逆パワハラ」も増えているという。「注意や改善のフィードバックを伝えても受け止めてもらえない」や「業務を割り振った時に強い拒否や反発の言葉が返ってくる」といった理由で、管理職が指導の萎縮に陥るケースも少なくない。
法人向けオンライン対人支援サービス『Smart相談室(スマートそうだんしつ)』は、逆パワハラが生まれる背景や管理職を孤立させないために重要な「組織全体での心理的安全性」に関する分析を公開した。それによって管理職を惑わすパワハラと指導の境界線や若手社員がハラスメント加害者になりうる可能性といった問題が見えてきた。
上司の6割以上が「ハラスメントの判断が難しい」と回答
パワハラ防止法施行から5年が経ち、企業の対応は大きく前進しているようにみえるが、職場での「指導がパワハラと捉えられかねない」という不安は広がっている。厚生労働省の『職場のハラスメントに関する実態調査』によれば、ハラスメント予防・解決の課題として6割以上が「ハラスメントかどうか判断が難しい」と回答している。『Smart相談室』にも「自分がパワハラをしてしまっているのではないか」といった相談が増えているという。こうした状況が続くと管理職は安全な言葉選びに終始して、必要な指導が後回しになってチームの機能不全や生産性の低下につながる懸念がある。
ジェイフィールの『「逆パワハラ」に関する実態調査』では、課長職の約4割が逆パワハラを経験しており、そのうちの約6割が「休職・離職の引き金になり得る」と回答。逆パワハラは、単なる個人間の衝突ではなく、管理職が安心して役割を果たせなくなる構造的な問題になりつつあるようだ。
若手社員による逆パワハラ1位は「指示や指導に対する反発」
世代間ギャップや価値観の多様化のなかで、上司が悪いという構図だけでは語れない複雑さもある。若手社員の多くは、学校でもアルバイトでも守られる側として扱われてきた機会が多く、自分が誰かを傷つけるという視点を持つ機会は意外と少ない。本人に悪意がなくても強い言い返しや感情的な拒絶があれば、結果として上司を傷つけたり指導を萎縮させたりしてしまう。
A&Sフィナンシャルアドバイザリーの『職場のハラスメントに関するアンケート調査』では、職場で起きている「逆パワハラ」についての1位は「指示や指導に対して大声や不遜な態度で反発する」(14.9%)、2位が「適切な指導に対しても『パワハラだ』と大げさに言う」(14.6%)という結果になった。
「適切な指導に対しても『パワハラだ』と大げさに言う」という回答は、ハラスメント対策をきちんと実施している企業が高く、ハラスメント対策が進むほど「加害者=上司、被害者=部下」という固定化されたイメージが強くなる懸念もある。部下側は、無意識のうちに自分が加害者になるかもしれないという視点を持ちづらくなる可能性もありそうだ。
部下だけの偏った保護は、組織全体のリスクになりうる
会社組織では、立場の弱い若手社員をハラスメントから保護する仕組みは欠かせないが、心理的安全性が一方の立場だけに偏って担保されると、組織全体の安全性が揺らぐリスクが生まれる。上司だけが萎縮・孤立して指導できない状態に追い込まれれば、チームは本来の機能を発揮できなくなる。
逆パワハラの多くは、意図しないまま生じるすれ違いということを理解する必要はある。予防のためには、研修などで「共感力」や「心理的安全性」などを正しく知る機会を設ける必要がある。日々のコミュニケーションで「正しく共感力を発揮できているか?」という振り返りをするような仕組みを設けて、場面ごとにどんなコミュニケーションが必要か言語化できる環境を設けることが有効だ。上司と部下のどちらかを悪者にするのではなく、誰もが加害者にも被害者にもなり得ることを前提にして健全で対等な対話を目指すべきだろう。
https://smart-sou.co.jp/news/20251216
構成/KUMU







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