牛丼チェーン大手・吉野屋ホールディングスのビジネスモデルが大きく変ろうとしています。
狭小モデルの讃岐うどん店「ずずず」を昨年10月23日に東日本橋にオープン。ラーメン店も次々と買収して業態の幅を広げました。米や牛肉価格の高騰で牛丼の低価格化は維持できなくなっており、巨大チェーンモデルが曲がり角を迎えています。
失われた10年で次々と上場を果たした牛丼チェーン
吉野屋はバブル崩壊前の1980年に過剰出店で一度倒産し、不採算店を整理して再スタートを図りました。1991年に牛肉の輸入自由化が開始。それと同時にバブルが崩壊して日本はデフレ期に突入します。吉野家は倒産から10年あまりの時を経て再び出店攻勢をかけました。
1998年に47都道府県すべてのエリアへの出店が完了。吉野家の「うまい、やすい、はやい」というキャッチコピーはデフレ期を象徴していました。
吉野屋は1990年に株式を上場しています。「すき家」のゼンショーと松屋フーズが1999年。実はファミリーレストランのサイゼリヤも1999年であり、低価格路線の飲食店は「失われた10年」における一つのトレンドでした。
結局のところ、この10年は30年間続くことになりました。デフレ下では、高品質の商品をできる限り安い価格で提供することが重要だったため、牛丼チェーンはオペレーションの均質化が成長のカギとなりました。同じ看板の店をできるだけ多く出店し、どの店も変わらない味を提供することが重視されたのです。
吉野屋を始めとする均質化に成功した牛丼チェーンは繁栄の時代を迎えることになりました。しかし、インフレがその存在を大きく揺るがすことになります。円安が加速すると輸入牛肉の価格は相対的に上がります。そして近年では米の価格も上昇しました。
牛丼は安いというイメージが人々に染みついているため、値上げをするにも限界があります。
吉野屋は2025年4月に牛丼大盛を696円から740円に引き上げました。並盛の価格は据え置いたものの、2025年4月から6月までの既存店の客数は前年を割り込みました。既存店とはオープンから一定の期間が経過した店舗で、店の本質的な集客力を見ることができます。客単価が上がっているために売上は前年を超えているものの、数十円のわずかな値上げで客足が遠のいてしまうというのが現実なのです。
ラーメン事業の営業利益率を5%から10%に
吉野屋は2025年3-11月が2.1%の営業減益でした。吉野家事業単体では、13.0%もの減益。値上げをしてもなお、米や原材料価格、人件費高騰分を価格転嫁しきれていない様子がわかります。主力の吉野家事業が失った利益を、はなまるうどんや海外事業、買収したラーメン店が補っている状態なのです。
吉野屋は、7割程度を占める牛丼売上を2029年度には6割程度まで下げるという経営計画を発表しています。はなまるうどん、ラーメンチェーンの構成比率を上げ、海外出店を強化しようというのです。
特にラーメンは2024年度の売上80億円を2029年度には400億円。営業利益は8億円から40億円まで引き上げる計画であり、成長に期待をかけています。
吉野屋は2024年12月に京都のラーメン店「キラメキノトリ」を展開するキラメキノ未来を完全子会社化しました。この年の4月には京都の宝産業を取得。この会社はラーメン店向けに麺やスープ、タレなどを開発して販売しています。
吉野屋は自前の店舗でもラーメンを提供するようになりました。牛丼店において競合他社とメニューで差別化を図れるのも、ラーメン事業を強化した吉野屋ならではと言えます。ラーメンに力を入れているのは、インフレに強いからでしょう。2015年の吉野屋の牛丼並盛は380円でした。現在は498円。およそ3割増加しています。
総務省統計局の小売物価統計調査によると、「中華そば(ラーメン) 外食」の2015年の価格は560円台で、2025年11月は721円。牛丼と同じく3割程度上昇しました。
一方、ぐるなびが2025年7月に実施した消費者調査では、ラーメンの適正価格は800円と答えた層が最も多くなっています。この結果を見ると、値上げ余地はまだありそう。
この調査による、ラーメン1杯の上限額は1000円がボリュームゾーンであり、よく言及される「1000円の壁」は確かにあります。しかし、提供するラーメンのクオリティが高ければ、壁を超えない程度の単価アップは十分に狙えるということです。
吉野屋の中期経営計画では、ラーメン事業の2024年度の営業利益率は5%ですが、2029年度は10%を目指しています。
単価増をしやすい業態であると、見越しているのかもしれません。
ロードサイドを中心に出店攻勢を強める「資さんうどん」に対抗か
うどんを軸とした新業態の開発にも余念がありません。
東日本橋にオープンした「ずずず」は本場讃岐うどんが食べられる狭小型モデル。タッチパネル式の注文端末を設置し、小人数で運営できる体制を整えました。すかいらーくは、集客力が鈍化したファミリーレストランを「資さんうどん」に転換する動きを強めています。同社はロードサイドの店舗を得意としており、転換するのは郊外型が先になるでしょう。
吉野屋が狭小モデルを開発した背景に、繁華街や都市部への出店をライバルに先行して行うという思惑がありそうです。資さんうどんや丸亀製麺により、うどん業態は盛り上がりを見せています。飲食業界全体で市場を広げつつ、シェア獲得合戦が過熱する注目度の高い領域です。
吉野屋は海外展開も積極的。2025年11月に「煌面ノ屋 上海南京東路歩行街店」を上海にオープンしました。買収したキラメキノトリの海外1号店です。
2025年11月末時点で吉野屋の海外の店舗数は1013。第3四半期終了までに72店舗を出店する計画でしたが、すでに73店舗出しました。海外展開を急いでいるのは間違いありません。吉野屋は牛丼の巨大チェーンにも関わらず、時代の変化に応じてすばやくビジネスを変化させています。それが会社としての強さを支えているようにも見えます。
文/不破聡
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