配当性向は、企業が得た利益のうちどの程度を配当にあてているかを示す指標です。配当性向により、企業の利益配分や株主還元への姿勢を把握できます。
目次
配当性向が投資判断でどのような役割があるのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。企業の利益のうち、どれだけを配当に回しているかがわかる指標であり、配当性向を見ることで企業の利益配分に向けた姿勢がわかります。本記事では、配当性向の意味や計算方法、目安や平均値などを解説します。
配当性向とは?

配当性向とは、企業が得た利益に対して、どの程度を株主への配当に回しているかを示す指標です。株主へ還元する姿勢や、利益の使い道を判断するうえで重要な目安となり、配当重視の投資家にとっては特に注目される指標のひとつです。
ここでは、配当性向の意味や重要性、配当利回りとの違いを解説します。
■配当性向の意味
配当性向とは、当期純利益に対して配当金が占める割合を示す指標です。当期純利益とは、一定期間に企業が事業活動で得た収益から、必要な経費や営業外の損益、税金などをすべて差し引いたうえで最終的に残る利益を指します。
たとえば、配当性向が30%であれば、企業が得た当期純利益のうち約3割を配当として株主に還元し、残りを内部留保や成長投資に回していることを意味します。
配当性向を見ることで、企業が安定的な配当を重視しているのか、それとも将来の成長を優先しているのかといった経営方針を読み取ることが可能です。
■配当性向の重要性
配当性向は、企業の利益配分のバランスを把握するために重要です。配当性向が高い企業は株主還元に積極的と評価されやすい一方、利益の多くを配当にあてているため、将来の投資や財務余力が相対的に小さくなる可能性もあります。
反対に、配当性向が低い場合は投資に力を入れていると考えられますが、株主への還元が少ないともいえます。配当性向だけで判断せず、業績の安定性や成長段階とあわせて確認することが大切です。
■配当性向と配当利回りとの違い
配当性向と配当利回りは混同されがちですが、意味は異なります。配当性向は「当期純利益に対する配当の割合」を示す指標であるのに対し、配当利回りは「一定時点の株価に対する配当金の割合」を表します。
配当性向は企業側の利益配分や株主還元方針を見る指標であり、配当利回りは投資家の目線から投資資金に対する収益性を測る指標です。どちらか一方だけ見るのではなく、両者をあわせて確認することで、配当の持続性や投資効率をより正確に判断できます。
配当性向の計算方法

配当性向は、決算書に記載されている数値を使って比較的簡単に計算できます。計算式を理解しておくことで、企業がどのような水準で株主還元を行っているのかを自分で確認できるようになるでしょう。
ここでは、配当性向の計算式をご紹介します。
■配当性向の基本的な計算式
配当性向は、一般的に次の計算式で求めます。
「配当金支払総額 ÷ 当期純利益 × 100」
企業がその年に支払った配当金の合計を、同期間に計上された当期純利益で割ることで算出します。
たとえば、企業が支払った配当の合計が20億円、同じ期間の当期純利益が80億円だった場合、配当性向は「20億円 ÷ 80億円 × 100 = 25%」です。
企業全体の配当方針を把握しやすい計算方法で、決算短信(決算内容に関する速報)や有価証券報告書から数値を確認できます。利益が安定している企業ほど、配当性向の変化を追いやすく、傾向をつかみやすいでしょう。
■1株あたりの利益で見る計算式
1株あたりの数値を使って配当性向を求める計算式もあります。
「1株あたり配当金(DPS) ÷ 1株あたり純利益(EPS)× 100」
1株あたり純利益(EPS)とは、企業が1株あたりどれだけの純利益を効率的に生み出しているかを示す指標であり、一般的には「親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均発行済株式数」で計算できます。
たとえば、1株あたり配当額が50円、1株あたり純利益(EPS)が200円の場合、配当性向は
(50円 ÷ 200円) × 100 = 25% となります。
株式投資の場面でよく用いられる計算方法で、企業規模の違いによる影響を受けにくく、企業間で比較しやすい点が特徴です。証券会社の株式情報ページなどでも簡単に確認できるため、ほかの財務指標とあわせて投資判断の参考指標として活用しやすいでしょう。
配当性向の目安・平均値

配当性向の目安は、企業が属する業界・業種や成長段階、資本政策によって変わります。
ここでは、配当性向の大まかな目安となる一般的な数値を確認したうえで、業種ごとに見られる傾向について解説します。
■一般的な配当性向の目安
企業の成長段階によって株主に回せる利益の割合は変わりますが、配当性向については、30%〜50%程度をひとつの参考水準として挙げられることがあります。
この水準であれば、株主還元と内部留保のバランスが取れていると考えられます。ただし、必ずしも高ければ良い、低ければ悪いというものではなく、業種、成長段階、投資計画、利益の安定性によって適正水準は異なります。
■業種別の配当性向の目安
業種によって、配当性向の目安は大きく異なります。たとえば、成熟産業では比較的高めの配当性向が採用される場合がありますが、一方で、設備投資や研究開発に資金需要が大きい業種では配当性向が抑えられることがあります。これは、各業種の収益の安定性や設備投資・研究開発の必要性が異なるためです。
なお、ITなど成長企業が多い業種では、利益を事業成長や再投資にあてる方針から、配当性向が低めになることが一般的です。
配当性向を比較する際は、単に数値の高低だけで判断せず、業種ごとの特性や経営状況を考慮することが重要といえます。
配当性向から読み取れる企業の特徴

配当性向からは、企業の財務状況や経営方針を読み取れます。極端に高い場合やマイナスの場合には、背景にある事情を確認することが重要です。
ここでは、配当性向の水準ごとに判断できる企業の特徴を解説します。
■配当性向が高すぎる場合
配当性向が非常に高い企業の場合、当期純利益に対して利益の多くを株主への配当に充てている状況です。一見すると株主還元に積極的にみえますが、内部留保が十分に確保できていない可能性があります。
特に一時的な利益の減少によって、配当性向が押し上げられている場合、将来的に配当を維持できないリスクも考えられます。安定的な配当かどうかを判断するには、過去数年の推移やキャッシュ・フローの状況もあわせて確認することが大切です。
■配当性向がマイナスの場合
配当性向がマイナスになるのは、当期純利益が赤字であるにもかかわらず配当を実施しているケースです。この場合、配当原資は過去の内部留保で賄われている可能性があります。
株主への配慮として配当を継続しているとも考えられますが、赤字が継続する場合には、内部留保の減少により配当の継続が難しくなる可能性があります。一時的な赤字なのか、根本的な問題なのかを見極めることが大切です。
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配当性向を見る際の注意点

配当性向は有用な指標ですが、それだけで企業評価を行うと誤った判断につながることがあります。そのため、複数の視点から総合的に確認する姿勢が求められます。
ここでは、配当性向を見る際に注意したいポイントを見ていきましょう。
■他の指標と組み合わせて判断する
配当性向を見る際は、配当利回り、自己資本比率、キャッシュ・フローなどの指標とあわせて確認することが重要です。
たとえば、配当性向が高くても、営業キャッシュ・フローが安定していなければ配当を継続するための資金余力に不安が残ります。複数の財務指標を組み合わせることで、企業の健全性や株主還元の実態をより正確に把握できます。
■企業収益が増加傾向にあるかも確認する
配当性向だけでなく、売上高や利益が中長期的に増加しているかどうかも重要な判断材料です。収益が増加傾向にある企業であれば、将来的な増配や安定配当が期待しやすくなります。
反対に、収益が縮小傾向にある場合は、現在の配当性向が将来も維持できるか慎重に見極める必要があるでしょう。
配当性向は正しく読み取ろう

配当性向は、企業が得た利益に対して、どの程度を株主への配当にあてているかを示す重要な指標です。企業が得た利益を「成長投資」と「株主還元」のどちらに重きを置いて使っているのかを読み取るための重要な手がかりとなります。
投資の際は配当性向の高低だけで判断するのではなく、自身の投資スタイルや企業の成長段階、資金配分の方針と合っているかという視点でとらえることが大切です。
配当性向を正しく理解し、ほかの財務指標や業績動向とあわせて確認することで、企業の株主還元姿勢や配当の持続性を見極める判断材料にできるでしょう。
構成/須田 望







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