仕事に対してやりがいや充実感を感じ、前向きに取り組めている心理状態のことを「ワーク・エンゲイジメント」と言う。このワーク・エンゲイジメントを向上させるうえで、どういった要素が必要なのだろうか?
ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者300万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回は2024年度にストレスチェックを受検した55万5,956人のデータをもとに、働く人の「仕事への前向きな姿勢(ワーク・エンゲイジメント)」を分析した結果を発表した。
はじめに
1.ワーク・エンゲイジメントとは「熱意」「活力」「没頭」の掛け合わせ
企業の健康経営やメンタルヘルス対策において、「ワーク・エンゲイジメントの向上」が重要視されている。ワーク・エンゲイジメントとは、以下3つの要素を兼ね備えたポジティブで充実した心理状態を意味する。
【ワーク・エンゲイジメント(仕事への前向きな姿勢)の3要素】
(1)仕事に誇りややりがいを感じている(熱意)
(2)仕事から活力を得ている(活力)
(3)仕事に夢中になって取り組んでいる(没頭)
ワーク・エンゲイジメント(仕事への前向きな姿勢)が高い従業員は、主体的に業務に取り組み、パフォーマンスの向上などチームに良い影響をもたらす。結果として、組織の生産性向上にも寄与するといえる。
2.ストレスチェックで「ワーク・エンゲイジメント」度合いがわかる
ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調の予防を目的として、2015年以降従業員数50人以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。ドクタートラストが提供し、国内トップクラスの受検者数を誇るストレスチェックサービスには、「ワーク・エンゲイジメントの度合」も分析可能な設問が盛り込まれている。
分析結果
理想的な状態「ワーク・エンゲイジメントが高く、ストレスが低い」は3人に1人
2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検した55万5,956人を「ワーク・エンゲイジメント」と「ストレスレベル」の高低に基づいて4つのグループに分類したところ、次のような結果となった。
●理想的な働き方「高ワーク・エンゲイジメント×低ストレス」:35.0%(およそ3人に1人)
・低ワーク・エンゲイジメント×低ストレス:34.5%
・高ワーク・エンゲイジメント×高ストレス:3.3%
・低ワーク・エンゲイジメント×高ストレス:27.2%
※ワーク・エンゲイジメントは、複数の設問から総合的に算出している。
※ドクタートラストの各種資料では「ワーク・エンゲイジメント」と「ストレスレベル」の掛け合わせを「仕事に対する姿勢の状況」という指標で記載している。
図1のとおり、受検者全体のうち、理想的な状態「ワーク・エンゲイジメントが高く、ストレスが低い」は、全体のおよそ3人に1人(35.0%)であることがわかる。
さらに図2は、「ワーク・エンゲイジメント」「ストレスレベル」の掛け合わせを年代別に示したものだ。
図2のとおり、理想的な状態「ワーク・エンゲイジメントが高く、ストレスが低い」は、20代では4割近くを占めるが、30代でおよそ3割に低下し、40代・50代もほぼ横ばいで推移する。60代になると4割強に回復する。具体的な割合は以下の通りだ。
<理想的な状態「ワーク・エンゲイジメントが高く、ストレスが低い」で働けている人の割合>
20代:37.5%
30代:31.7%
40代:31.7%
50代:32.2%
60代:41.4%
このようにワーク・エンゲイジメントの度合いは、年代ごとに異なることがわかる。
ワーク・エンゲイジメント向上に大きく寄与する項目
図3は、「ワーク・エンゲイジメント」の向上に大きく影響を与える項目を年代別に示したものだ。
※図3の算出方法:各項目について、「重要度」「満足度」という2指標を算出した。
重要度:ワーク・エンゲイジメントに与える影響の大きさ
満足度:現状に満足している人の割合
「重要度が高い」かつ「満足度が低い」項目ほど、ワーク・エンゲイジメント向上に効果的な項目としている。
図3のとおり、20・30代は「キャリア形成」(キャリアに意味を見出せる)、そして40代以上は「個人の尊重性」(自分らしく働けている)が、「ワーク・エンゲイジメント」の向上に大きく寄与することがわかる。
また70代を除くすべての世代において、「キャリア形成」(キャリアに意味を見出せる)と「成長の機会」(自分が成長している)が重要な要素として挙げられている。このことから、年代を問わず「自分が成長している」「キャリアに意味を見出せる」と感じられることが、仕事への前向きな姿勢を支える要素になりうることが示唆される。
まとめ
受検者全体のうち、最も理想的な状態「ワーク・エンゲイジメントが高く、ストレスが低い」は、全体の35.0%であることがわかる。
さらに若い世代では「キャリアに意味を見出せる」が、年齢が上がるにつれ、「自分らしく働けている」が、ワーク・エンゲイジメントに寄与することがわかった。
年代別の結果で特徴的だったのは、70代を除くすべての世代で「自分が成長している」「キャリアに意味を見出せる」が上位に挙がっていた点だ。ただし、具体的に求める内容は年代によって異なる。若い世代では挑戦できる環境や成長の実感、ミドル世代では自身の経験を活かす機会や将来を考えるための支援、シニア世代では自分の考え方や働き方を尊重する風土が求められている。
職場環境の改善では、世代ごとの違いにも着目したアプローチが必要といえるだろう。
文責:服部恭子氏(ストレスチェック研究所 アナリスト)
<調査概要>
調査期間:2024年4月1日~2025年3月31日
調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス2024年度契約企業・団体の一部
対象受検者数:555,956人(1,777の企業・団体)
出典元:株式会社ドクタートラスト
構成/こじへい







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