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「イマーシブ・フォート東京」はなぜ閉鎖が決定したのか?開業2年で浮き彫りになった課題

2026.01.17

「イマーシブ・フォート東京」が2026年2月末で営業を終了することが決まりました。映画や舞台の世界に観客が入り込むという没入型のショーで、従来のテーマパークとは切り口がまったく異なる新ジャンルのエンタメとして期待されていました。

しかし、わずか2年で幕を閉じる結果に。

イマーシブ・フォート東京を手がけたのは、マーケティング支援やコンサルティングを手掛ける株式会社刀。先進的かつ大胆な試みで、海外展開を視野に入れていましたが、軌道修正を迫られそうです。

マーケティング業界を震撼させた森岡氏の確率論

刀は2024年度に55億4600万円、2025年度に13億700万円の純損失を計上しています。

イマーシブ・フォート東京は大規模なリニューアルを実施し、2025年3月1日に再オープンしていました。刀の代表である森岡毅氏はテレビ東京の単独インタビューに答えており、その中で「投資回収どころではない」と語りました。そしてオープン1年目と2年目で大きな減損処理を行ったことを告白しています。

つまり、2年目で行なったリニューアルも十分な集客に繋がらずに投資回収の見込みが立たなかったことを意味しており、決算からも非常に厳しい戦いを強いられていたことがわかります。

森岡氏は元P&Gのマーケターで、USJの再建に寄与した人物として有名。バラエティ番組「日曜日の初耳学」にも出演し、「最強マーケター」として紹介されていました。

刀は丸亀製麺や西武園ゆうえんち、ハウステンボスなどの支援を行っています。

森岡氏は『確率思考の戦略論』という著書が有名で、マーケティングを確率論でとらえ、顧客が自社の商品を手に取る確率を上げる方法を論じました。この本が出回る前、マーケティングに関する書籍は抽象的な内容か、高度な統計学を用いた難解な内容かの二極化が進んでいました。森岡氏の論理的かつ理解しやすいその内容に、多くのマーケターが影響を受けました。

イマーシブ・フォート東京は優れた実績を出したコンサルティング集団が、施設運営という実業に乗り出すということもあって、世間では大きな驚きに包まれました。

リスクを取って運営に乗り出す経営姿勢は称賛に値します。しかも、スモールスタートではなく、巨額の出資を行なったのです。リスクの取り方も桁外れであり、森岡氏の胆力を世間に知らしめました。

しかし、結果としては失敗に終わってしまいます。

ライト層が集まらずに施設をリニューアル

刀はイマーシブ・フォート東京の顧客層が2つに分かれると読んでいました。1つは広い面積で短時間、大人数が軽く楽しむライトな体験をする層。もう1つは長時間かつ少ない人数で、ディープに楽しむ層です。森岡氏はライト層が全体の7割、ディープ層が3割と想定していました。しかし、先のインタビューでそれが逆だったと語っています。

イマーシブ・フォート東京は当初、入場チケットを購入すると無料で体験できるアトラクションがありました。

「1dayイマーシブ・パス・カジュアル」という大人6800円のチケットで、8つの体験ができるもの。一方、1万4800円の「1day イマーシブ・パス・プレミアム」は、そこによりディープなアトラクションが追加されます。

おそらく森岡氏は、多くのライト層がやってきて、チケット代に加えてレストランなどの飲食や物販の販売収入が見込めると踏んでいたのでしょう。

例えば、東京ディズニーリゾートの顧客1人あたりのアトラクション・ショー収入は平均で9447円ですが、飲食販売収入は3574円、商品販売収入が5174円です。飲食と物販を加えることで、顧客単価はチケット代の2倍に膨らむのです。

アトラクションを適度に稼働させ、飲食・物販で稼ぐのはテーマパークの基本戦略。

一方、ディープなアトラクションに顧客が偏った場合、体験時間も待ち時間も長くなります。体験時間が長時間化すれば施設の稼働率が悪くなり、待ち時間が出ることによって顧客満足度が下がってしまいます。満足度が下がると物販の売れ行きにも影響が出ます。

そうした中、イマ―シブ・フォート東京はディープな体験ができる施設へとリニューアルしたのでした。これにより、1dayパスからアトラクションごとにチケット制に切り替えました。

しかし、ディープ層に振り切ったことで、今度は体験をした顧客の満足度が真っ二つに分かれた印象があります。完全に没入する層と、物語や世界観についていけない非没入層です。

Googleの口コミを見るとわかりやすいのですが、星5か4、または1と評価が割れています。しかも人気の「江戸花魁奇譚」のチケット代は1万4800円と高額。没入できなかった人の不満も溜まりやすいのです。

顧客満足度を高める活動がおろそかになったか?

イマーシブ・フォート東京のような新しいテーマパークで、否定的な意見が出るのは仕方がないでしょう。研究されつくした絶叫マシンを稼働させるのとはわけが違うからです。

マーケティングの基本は現場の声を聞くことですが、イマーシブ・フォート東京が真摯に来場者の意見に耳を傾けたのかは疑問が残ります。というのも、「キャストの声が聞こえない」「暗くて見えない」「効果音が大きすぎる」「ストーリーの繋がりや意味がよくわからない」という、ちょっとしたことで不満が解消されるであろう声が多くあったためです。

特にネガティブな意見でよくあるのが、意味がわからないというもの。これは物語の骨子は誰もが目にすることができるのですが、細かな箇所に関してはそれぞれが異なる体験をするために生じるもの。ストーリーを完璧に理解したい人にとっては消化不良になってしまうのです。

一つひとつ、イマーシブ・フォート東京がPDCAを回しながら改善活動を進めていけば、こうした問題は解消できたように見えます。

森岡氏はイマーシブ・フォート東京を開業したことで、来場者した人に関する誰も持ちえない貴重なデータをとることができたと、その成果を語りました。そして、別の場所で開業する可能性がゼロではないことを示唆しています。

そのデータの中に来場者の声が含まれており、よりよい施設運営をするためのヒントが隠されているのであれば、次は成功するのかもしれません。

取材・文/不破聡

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