高等裁判所のジャッジ
地裁ではAさんは勝訴したのですが、高裁ではAさんの敗訴となりました。
高裁が提示した理由を要約すると「経済産業省が出した指示(=2フロア以上離れた女性トイレであれば使用を認める。それ以外は認めない)は、全職員にとって適切な職場環境を構築する責任を果たすための対応だった。したがって人事院の判定は違法ではない」というもの。
最高裁判所のジャッジ
しかし、最高裁判所は「高裁の判断は誤っている」とAさんを逆転勝訴させました。最高裁は「人事院の判定は違法」と判断。理由の概要は以下のとおりです。
▼ 理由
・Aさんは、経済産業省が出した指示により、自認する性別とは異なる男性トイレを使用するか、2フロア以上離れた女性トイレを使用せざるを得なくなり、日常的に相応の不利益を受けている。
・医師は「性衝動に基づく性暴力の可能性が低い」と診断していた
健康上の理由から性別適合手術を受けていないが、女性ホルモンの投与を受けていた
・トラブルが生じたたことはない
説明会の翌週から女性の服装で勤務し、おもに自分が働いているフロアから2階離れたフロアの女性トイレを使用することになったがトラブルが生じたことはない。
・説明会で明確に異を唱える職員はいなかった
担当職員から見ると、数名の女性職員が違和感を抱いているように感じたにとどまる
・経済産業省は自己が出した指示を見直した形跡もない
説明会から人事院の判定までに約4年10ヶ月あったが、Aさんが女性トイレを使用することについて特段の配慮をすべき職員がいるかについての調査が改めて行われた形跡なし。
▼ 最終判断
以上の理由を述べ、最高裁は概要、以下のとおり判断しました。
・遅くとも人事院の判定が出た時点では、Aさんが女性トイレを使用することについて、トラブルが生じることは想定しがたく、特段の配慮をすべき職員の存在も確認されていなかったので、Aさんに2フロア以上離れた女性トイレを使わねばならない不利益を受け入れさせる具体的な事情は見当たらなかった。
・にもかかわらず人事院は、以上のような具体的な事情を踏まえることもなく、他の職員に対する配慮を過度に重視し、Aさんの不利益を不当に軽視している。
・結果、人事院の判定は、裁量権の範囲を逸脱、または濫用しており違法。
会社・学校へ求められる今後の取り組み
注意が必要なのは、最高裁はAさんや職場の個別的事情を考慮して判断していることです。したがって、自己が性同一性障害だと認識しているからといって生物学的な性別とは異なるトイレを当然に使用できる〈わけではありません〉。
ただ、この判決が性同一性障害の方の働き方について一石を投じた判決であることは間違いなく、会社だけでなく学校などでも同様のケースを巡る対応に相当影響を与えるでしょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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