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心理検査「ロールシャッハテスト」とは?〝インクの染み〟が何に見えるかでわかる心の奥底

2026.01.27

左右対称のインクの染みを見て答える心理検査「ロールシャッハテスト」。なぜ“ただの染み”から心の状態がわかるのでしょうか。本記事では、検査の仕組みや見えてくる心理的特徴、正しい読み解き方を専門的すぎずに解説します。

「インクの染みが、何かの形に見えてくる……」

心理学の世界で有名なテストの1つである「ロールシャッハテスト」を知っていますか。名前は聞いたことがなくても、左右対称の不思議な図形を一度はどこかで目にしたことがあるかもしれません。

「ロールシャッハテスト」とは、単なる絵解きではなく、心の奥底を映し出す専門的な検査なんです。

「なぜ、ただの染みから性格がわかるのか」「何だか怖そう……」そんな疑問や不安を解消するために、今回は「ロールシャッハテスト」の仕組みをわかりやすく解説します。

ロールシャッハテストとは?

まずは、このテストがどのような仕組みで成り立っているのか、その基本的な特徴から見ていきましょう。

■左右対称の図形を使う心理検査

ロールシャッハテストは、スイスの精神科医であるヘルマン・ロールシャッハによって発表されました。心理学では「投映法(とうえいほう)」という種類に分類され、現在も医療や福祉の現場で広く活用されている検査です。

検査では、紙の上にインクを落として二つ折りにしたときにできるような、左右対称の「インクの染み」が描かれたカードを使用します。

このテストの大きな特徴は、答えに“正解”や“間違い”が一切ないことです。提示される図形に対して、受ける人がどのように感じ、どのように表現するかという“自由な反応”を分析します。

同じ図形を見ても、人によって蝶に見えたり、カニに見えたり、あるいは踊っている人に見えたりする。その“見え方の違い”から、その人の特徴を理解しようとするのがこの検査のねらいです。

■検査で見えてくるのは心の側面

このテストは、性格を決めつけるものではなく、心全体のバランスを把握するためのものです。主に以下の3つの視点から、その人の特徴を読み解いていきます。

1.周囲の状況をどのように把握しているか

物事を全体的に捉えるのか、細部に注目するのかといった思考のクセが見えてきます。また、多くの人が共通して認識する形を同じように捉えられているかという、現実的な判断力の確認にもつながります。

2.感情の揺れ動きとストレスへの耐性

色がついたカードにどう反応するかで、感情の揺れ動きやコントロールのしやすさを推測します。これにより、ストレスに対してどれくらいの耐性があるかといった傾向を探ることができます。

3.人との関わり方や自分へのイメージ

図形の中に動きを見出す様子から、他者に対してどのような印象を持ち、どう関わろうとするかというヒントが得られます。自分自身をどのように捉えているかという内面的な自己像も反映されます。

■なぜ「インクの染み」で心がわかるのか?

インクの染み自体は、本当は何の形でもありません。その“正解がない”というところが、心を知るためのポイントになります。

正体のわからないものを見るとき、人は無意識に「自分の知っているもの」に結びつけて理解しようとします。これを心理学で「投影(とうえい)」と呼びます。真っ白なスクリーンに映画を映すように、染みというスクリーンに自分の心を映し出しているのです。

そして、自分では気づいていない考え方のクセや、そのときの気分などは、ふとした反応に表れます。形のない染みに「何を見るか」という自由な答えの中に、あなた自身の物の見方や、隠れた感情が自然と入り込んでくる仕組みです。

ロールシャッハテストの流れ

テストがどのように進んでいくのか、その手順を簡単に見ていきましょう。専門的な検査ですが、基本的にはリラックスした雰囲気の中で、対話形式で行われます。

1.図版を見て、何に見えるかを答える

まず、10枚のカードを1枚ずつ順番に渡されます。カードには、白黒のものや、色鮮やかなものなど、さまざまなインクの染みが描かれています。それらを見て、「何に見えるか」「何かに似ているか」を自由に答えていきます。ここでは、制限時間や正解を気にする必要はありません。

2.なぜそう見えたかを説明する

すべてのカードを見終わった後、もう一度最初からカードを見直します。ここでは、「カードのどの部分がそう見えたのか」「形や色など、何がきっかけでそう見えたのか」を詳しく検査者に伝えます。

3.検査後の分析

あなたの答えや説明をもとに、専門家が時間をかけて分析を行います。回答の内容だけでなく、反応にかかった時間や、カードの持ち方、話し方なども含めて総合的に心の状態を読み解いていきます。

どんな回答があるのか(回答例)

同じ図版を見ても、何に見えるかは人それぞれです。ここでは代表的な回答の例を挙げながら、専門家がどのような視点で分析を行っているのかをご紹介します。

1.形を正確に捉える「蝶」や「コウモリ」

多くの人が「蝶」や「コウモリ」など、図形全体の形に注目して答えることがあります。このように、現実にあるものと図形の形を正しく結びつけて答えられることは、周囲と常識を共有し、現実を冷静に捉える力が安定していることを示しています。

2.色の印象から答える「火」や「血」

「赤い部分が火に見える」というように、形よりもインクの「色」に強く反応する場合があります。これは、その人が周りからの刺激に対して、どのように感情を動かしているかを知る手がかりになります。感情の豊かさや、情熱的な一面、あるいは衝動のコントロールの仕方が反映されやすい部分です。

3.動きを感じる「踊る人」や「動物の格闘」

止まっているはずの図形に対して、「2人が踊っている」「動物が獲物を追いかけている」というように動きを加えて答えることがあります。これは、その人の想像力の豊かさや、内面的な意欲、人間関係に対する積極的なイメージなどが表れていると考えられます。

正しく理解するために

インターネット上では「この答えなら異常」といった極端な解釈を見かけることもありますが、実際の検査では1つの回答だけで何かが決まることはありません。

専門家は、全10枚の反応のバランスや、統計的なデータに基づいた数値を組み合わせて、総合的に判断します。

ロールシャッハテストは、誰かにレッテルを貼るためのものではなく、自分でも気づいていない特徴を客観的に捉え、自分自身への理解を深めるために行われる心理検査です。単なる性格診断とは異なる、専門的な分析の視点が必要なものということを覚えておいてください。

【参考】『公認心理師必携テキスト 改訂第2版』,学研メディカル秀潤社, 2020年3月
『心理検査の理論と実際』,駿河台出版社, 1998年4月

文・構成/藤野綾子

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精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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