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2026年の主役はサービス業?日銀短観が示す「非製造業優位」の国内経済

2026.01.17

もちろん、これだけで「景気の牽引役が完全に交代した」と断言はできません。しかし、企業の“体感景気”という観点では、内需・サービスの明るさが相対的に目立つのは確かです。本記事では、短観の業種別データを“地図”として読み解きながら、価格転嫁、国内需要、建設投資、AI・DX導入といった論点から、この「非製造業優位」を整理します。

製造業DI vs 非製造業DI|広がる景況感ギャップ

短観の業況判断DIとは、企業に「景気が良い/悪い」を尋ね、その回答割合の差(「良い」-「悪い」)を数字で示した指標です。プラスなら「良い」と感じる企業が多い状態を意味します。

2025年12月調査では、大企業の業況判断DIが、製造業+15に対して非製造業+34。非製造業が製造業を明確に上回っています。

業種別に見る「体感景気」の地図

業種別に分解すると、非製造業の強さがより立体的に見えてきます。象徴的なのが建設業の+49という高水準です。人手不足や資材価格の上昇という逆風がある一方で、受注・工事量の底堅さが“体感景気”を押し上げていると読めます。

非製造業のなかでは、宿泊・飲食サービスが+25とプラス圏を維持しています。勢いが一本調子ではないにせよ、観光・外食が「コロナ後の反動増を経て、なお一定の需要を保っている」ことは示唆されます。

一方、製造業側はプラスではあるものの、非製造業ほどの強さは見えにくい。たとえば自動車が+9と、全体の水準と比べると控えめです。外需や為替、通商リスクなど、国内サービス業よりも外部要因の影響を受けやすい構造が、景況感を慎重にしやすい面があります。

ここまでをまとめると、短観が映しているのは「製造業が悪い」という単純な話ではなく、国内需要と結びつきやすい業種ほど景況感が強く、外部環境に左右されやすい業種ほど慎重になりやすいというコントラストです。では、なぜ内需・サービスが相対的な強さを発揮しているのでしょうか。次章から、背景を4つの視点で整理します。

背景(1) 価格転嫁の進展|企業収益を下支えする“値上げ力”

まず大きいのが、コスト上昇を価格に反映させる「価格転嫁」の広がりです。短観の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)を見ると、2025年12月調査で大企業は製造業+25、非製造業+32と、いずれも高い水準にあります。

価格転嫁が進むと、コスト高局面でも利益が守られやすく、景況感の下支えになります。実際、2025年度の経常利益計画(前年度比)では、大企業で製造業が▲7.8%と減益見込みである一方、非製造業は+1%と小幅ながら増益見通しです。景況感の差が、収益計画にもにじんでいます。

「値上げ=悪」ではなく、適切な転嫁ができるかどうかが、企業の体力と景況感を分ける。サービス業の強さは、その現実を映している面があります。

背景(2) 粘り強い国内需要|消費が支える景気

次に、国内需要の底堅さです。家計調査(2人以上世帯)では、2025年11月に実質消費支出が前月比+6.2%と大きく増加しています。月次データのブレはあるものの、「消費が一気に崩れてはいない」ことは、内需型産業の心理を支えやすい材料です。

加えて、インバウンド需要はサービス分野の追い風として無視できません。日本政府観光局(JNTO)の統計では、2025年11月の訪日外客数は351.8万人と、19市場で11月として過去最高水準を記録しています。

ただし、観光・外食は為替や物価、国際情勢の影響を受けやすく、楽観一色にはなりません。ポイントは、インバウンド“だけ”が支えではなく、雇用・賃金・消費の循環が続くかが、内需主導の持続性を左右するという点です。

背景(3) 建設・不動産・インフラ投資|内需を支える力強い柱

非製造業のなかで建設が突出して強い背景として、投資の底堅さが挙げられます。建設投資の見通しでは、2025年度の建設投資総額が75兆5700億円とされ、増加が見込まれています。

内訳を見ると、政府投資が25兆2100億円、民間投資が50兆3600億円。とくに民間側の存在感が大きく、設備投資や再開発、更新需要などが裾野の広い需要をつくりやすい構図です。

建設・不動産・インフラは、資材、物流、設備、サービス(警備・清掃・運営等)まで波及が広い分野です。建設の景況感が強いと、非製造業全体の“温度”も上がりやすい。短観で建設業DIが高水準になっているのは、こうした連鎖の入口を示しているとも言えます。

背景(4) AI・DXの先行導入|人手不足を埋める「省力化投資」

最後は、AI・DXの導入が非製造業で“効きやすい”点です。背景にあるのは、現場の切実な人手不足です。短観の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)では、全規模合計で非製造業が▲46、大企業の非製造業でも▲38と、不足超過が大きい状態が続いています。

この穴を埋める手段として、AI・DXは導入対象が広い。たとえばパナソニック コネクトは社内生成AIの活用を進め、2024年の実績として年間44.8万時間の業務削減効果を公表しています。

現場系でも動きがあります。JALの空港業務向けAIでは、実証実験アンケートでグランドスタッフの90%以上が回答速度や文章作成速度の向上を実感したとされています。

さらに顧客対応領域では、ソフトバンクが照会応答業務を支援する生成AIサービスを発表し、コンタクトセンターの高度化・自動化を視野に入れた展開を示しています。

製造業にも自動化・高度化の余地は大きい一方、非製造業は「問い合わせ対応」「書類作成」「社内ナレッジ検索」「シフト最適化」といった、AIが効きやすい業務が多い。だからこそ、人手不足の圧力が強い局面では、非製造業ほどAI・DXの投資対効果が見えやすく、景況感を押し上げやすいのです。

おわりに|内需型経済へのシフトが“見えやすくなった”

2025年12月調査の短観が示したのは、少なくとも“体感景気”の面で、非製造業が製造業を上回る局面が続いているという事実です。大企業の業況判断DIは、製造業+15に対し非製造業+34。

その背景には、(1)価格転嫁の広がり、(2)消費とインバウンドの下支え、(3)建設投資の底堅さ、(4)人手不足を背景にしたAI・DX投資の加速――という複数の要因が重なっています。

結論として、短観が映す“体感景気”の世界では、サービス業(非製造業)がいま最も景況感を押し上げる「主役」に近い存在だと言えます。 製造業が弱いというより、外需・為替・通商リスクに左右されやすい分だけ慎重になりやすいのに対し、非製造業は国内需要と結びつきやすく、価格転嫁や建設投資、AI・DXによる省力化投資が景況感を押し上げています。

ただし、日本経済全体の“実体”まで含めて主役交代が完了したと断定はできません。輸出・設備投資・サプライチェーンを通じた波及を考えると、製造業は依然として土台です。したがって現時点の答えは、「景況感(短観)ではサービス業が主役寄りという整理が現実的でしょう。

著者名/ 鈴木林太郎 経済ライター
テックと経済の“交差点”を主戦場に、フィンテック、Web3、決済、越境EC、地域通貨などの実務に効くテーマをやさしく解説。企業・自治体の取材とデータ検証を重ね、現場の課題を言語化する記事づくりが得意。難解な制度や技術を、比喩と事例で“今日使える知識”に翻訳します。

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