ミレニアル世代やZ世代に続く新たな消費主体として、2010年以降に生まれた「α世代」が注目を集めています。単なる“次世代の子ども”ではなく、これまでの世代とは異なる環境・価値観・行動様式で育つ彼らは、生まれながらの超デジタルネイティブ世代です。
本記事では、α世代の市場規模やデジタルネイティブとしての特徴、SNS・動画プラットフォームとの関わり、そしてZ世代・ミレニアル世代との違いや小売・教育・エンタメ・広告業界への影響について解説します。
α世代の市場規模と消費ポテンシャル
α世代とは、おおよそ2010年から2024年に生まれた世代を指します。全員が21世紀生まれであり、現在は幼児から中高生までを含みます。日本では少子化の影響で人口規模は限定的ですが、世界全体では2025年に約20億人(世界人口の約4分の1)に達するとされ、歴史上最大のボリュームをもつ世代になる見込みです。この圧倒的な人口規模から、α世代が将来的に持つ消費力は非常に大きく、今後のビジネスへの影響は無視できません。
現時点でα世代の多くは未成年ですが、その消費ポテンシャルはすでに表れ始めています。子どもながらも家庭内での購買意思決定に影響を与える「新しいタイプの家庭内インフルエンサー」として注目されており、レストランの選択や旅行先、日用品・サブスクサービスの選定などで親世代の決定を左右しています。
実際、親世代であるミレニアル層の価値観(環境配慮やジェンダー平等への関心など)の影響も受けて育ったα世代は、サステナビリティや多様性といった社会課題にも関心が高く、こうした志向が既に家庭の消費傾向に表れているとの指摘があります。α世代が本格的に自ら消費の主体となるのは2030年前後と予想されますが、それ以前からα世代を見据えたマーケティング戦略が求められ始めているのです。
デジタルネイティブとしての特徴
α世代最大の特徴は、生まれたときからデジタル技術に囲まれている点です。2010年前後はスマートフォンやタブレット端末、主要なSNSプラットフォームが普及し始めた時期であり、この世代にとってスマホやインターネットは空気のように当たり前の存在です。
実際、中学生年代までのスマートフォン保有率はα世代・Z世代ともに9割を超えており、タブレットも5~6割が日常的に使用しています。特にα世代はスマホを手にする時期が早く、中学生になる前(小学5~6年生まで)にスマホを持った割合が65.2%にのぼりました。これは一世代上のZ世代よりも早いタイミングで、自分専用のデジタル端末を手にしていることを意味します。
また、プログラミングやICT教育への接触も幼少期から始まっています。日本では小学校で2020年からプログラミング教育が必修化されており、調査によればα世代の約7割が小学生のうちにプログラミング学習を経験しています。家庭でも一人一台のタブレットが与えられる環境が広がりつつあり、「紙と鉛筆」より「タッチとスワイプ」で学ぶことに抵抗のない世代です。
さらに、音声AIアシスタントやチャットボットといったAIテクノロジーを幼い頃から利用しており、「OK, Google」「ねえAlexa」と話しかけて天気を尋ねることすら日常の一部です。AIに対しても抵抗感がなく、むしろ対話相手や学習の手助けになる存在として受け入れて育っていると指摘されています。このように、α世代はあらゆるデジタルツールを自然に使いこなし、生活や学習に取り入れているのです。
SNS・動画プラットフォーム世代の生活スタイル
情報収集やエンタメ消費の中心がSNSや動画プラットフォームに移っているのもα世代の大きな特徴です。文字中心のメディアよりもYouTubeやTikTok、Instagramといった動画・画像主体のコンテンツを好み、幼い頃から日常的に触れています。
例えば、α世代はテレビ離れが進んでいると言われますが、実際にはテレビ受像機をYouTube視聴用のデバイスとして利用しているケースもあり、伝統的なテレビ番組ではなくネット動画を見るスクリーンとして活用している可能性があります。
また、短時間で効率よく情報を得る「タイパ(タイムパフォーマンス)」志向が強い点も特徴的です。長時間かけて活字を読んだり検索で深掘りするより、短い動画で要点をつかんだり、倍速再生でコンテンツを消費したりする傾向が顕著です
。実際、2024年のある調査では「小中学生の約6割が動画を倍速で視聴した経験がある」と報告されており、Z世代から広がった倍速視聴習慣がより低年齢層まで浸透していることがわかります。α世代は幼い頃から膨大な情報にさらされているため、待たされることや冗長な表現を嫌い、瞬時に理解できるコンテンツを好むと言われています。これは娯楽コンテンツだけでなく情報収集行動全般に表れており、ニュースや商品の情報も短尺動画や要約コンテンツで得ることを好む傾向があります。
SNS上での交流にも抵抗が少ない世代です。小学校高学年にもなれば、友人と遊ぶ場もリアルな公園と同等かそれ以上にオンラインゲーム空間が当たり前になりつつあり、コロナ禍で定着した遊び方がそのまま日常になっています。このように、α世代にとってインターネットは単なる情報源に留まらず、人間関係や自己表現の場そのものとなっています。中には自らYouTubeやTikTokに動画を投稿して発信者となる子どももおり、消費者であると同時にクリエイター的感覚を持ち合わせている世代であることも特徴です。
Z世代・ミレニアル世代との比較
先行するZ世代やその親世代であるミレニアル世代と比べると、α世代の特性や価値観にはいくつかの際立った違いがあります。
まずZ世代(1990年代後半~2000年代生まれ)との比較では、デジタルネイティブ度の違いが挙げられます。Z世代も幼少期からインターネットやスマホに親しんだ世代ですが、α世代は物心ついたときから既に高度にデジタル化された環境にあり、“スマホ以前” の時代を全く知りません。そのため、テクノロジーへの順応性や依存度はZ世代以上です。
例えば、Z世代が中高生の頃にコロナ禍でオンライン化を経験したのに対し、α世代は小学校という早い段階で同様の体験をしています。休校中にオンライン授業やZoomでの交流に触れたことで、リアルとバーチャルの境界が曖昧になり、デジタル上でのコミュニケーションにも違和感を抱きにくくなりました。
さらに、娯楽の好みにも差が見られます。Z世代が10代後半でSNSや動画配信サービスに本格的に移行したのに対し、α世代は幼少期から当たり前にそれらを使いこなします。またゲームへの親和性も高く、ある調査では家庭用ゲーム機の利用率がZ世代の4割に対しα世代では7割に達したとの報告があります。オンラインゲームで見知らぬ人と遊び始める平均年齢も、Z世代よりα世代の方が若く(約9歳)、バーチャル空間での体験に抵抗がない点で一歩先を行っています。
ミレニアル世代(1980~1995年生まれ)との比較では、情報との接し方や価値観の違いが顕著です。ミレニアル世代はアナログからデジタルへの過渡期を生きたため、雑誌やテレビとインターネットを用途によって使い分けることができます。一方、α世代は活字離れが進み、雑誌や新聞、テレビのリアルタイム視聴を好まず、常に即応性が高く流し見・聞き流しができるメディアを選好します。
例えば、ミレニアル世代が商品の購入前に口コミや評判をじっくり調べるのに対し、α世代は短いレビュー動画やSNSのタイムラインから直感的に情報をつかみ取る傾向があります。また、時間に対する感覚も異なります。ミレニアル世代が「コスパ(コストパフォーマンス)」を重視する傾向があるのに対し、α世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」をより重視し、できるだけ時間をかけずに成果や満足を得たいと考えます。この志向はZ世代にも見られますが、α世代ではより顕著だとされています。
価値観や自己表現の面でも違いがあります。ミレニアル世代は子育てにおいて「褒めて伸ばす」アプローチを重視し、多様性や個性の尊重を子どもに教える傾向が強まりました。その影響を受けたα世代は、自分の存在を当たり前に肯定される空気の中で育っており、自己肯定感が比較的高い世代と言われます。そのため、「みんなと同じでなければ」というプレッシャーが薄く、他人と自分を比較しすぎない傾向があります。一方でZ世代はSNS映えを意識して「自分らしさ」を表現・演出する傾向がありますが、α世代は良い意味で肩の力が抜けており、そもそも「自分らしくいよう」と意識せずとも自然体で過ごせる世代です。この違いはマーケティングにおいて、Z世代には共感を得るストーリー性やSNS上でシェアしたくなる要素が効果的だったのに対し、α世代にはより自然体で飾らないコミュニケーションや、本人が好きな世界観を追求できる体験を提供することが鍵になる可能性を示唆しています。
さらに、ミレニアル世代から受け継いだ社会課題への意識も特徴的です。ミレニアル世代は環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高い世代であり、その子どもであるα世代も幼い頃から学校教育や家庭でサステナビリティや多様性について耳にする機会が増えています。実際、「大人より子どもの方がSDGsに詳しい」と言われることもあるほどで、気候変動や社会貢献といったテーマに対する感度は若年層ほど高まりつつあります。こうした価値観面での下地の違いが、将来的にα世代が商品やブランドを選ぶ際にも影響を与えると考えられます。
小売・教育・エンタメ・広告業界へのインパクト
最後に、α世代が各業界にもたらす影響について概観します。
小売・消費財業界では、α世代の台頭によってマーケットのあり方が変わると見られています。子ども向けの商品市場はもちろん、家族全体をターゲットにする商品戦略でも、α世代の好みや影響力を織り込む必要があるでしょう。例えば、玩具業界では、デジタルネイティブな子どもが好むプログラミング玩具やAR(拡張現実)を取り入れた商品が増えています。また、キャラクターやゲームとのコラボレーション商品、SNSで話題になったコンテンツと連動したグッズ展開など、IP(知的財産)を軸にしたマーケティングも有効とされています。加えて、物質的なモノ消費より体験価値を重視する傾向に合わせ、店舗でも商品そのものの提供だけでなく体験型のイベントや世界観を感じられる演出が重要になるでしょう。リアルとデジタルをまたいで購買体験を設計し、オンラインで得た情報や体験がそのまま店舗購買につながるような工夫が求められます。
教育業界への影響も顕著です。前述の通りα世代は小学校からプログラミング教育を受け、タブレットでの学習に慣れた世代です。従来の一斉講義型の授業よりも、デジタル教材やオンライン学習、ゲーム的要素を取り入れたアクティブ・ラーニングへの適応性が高いと考えられます。教育サービス産業では、アプリやオンラインプラットフォームを通じた学習コンテンツや、子ども同士が仮想空間で競い合いながら学べる教材など、α世代の学習スタイルに合った商品の開発が進んでいます。また、学校教育でもコロナ禍を契機に「教室に集まらなくても学べる」環境が整備され始めたことから、今後は教育の場自体がリアルとオンラインのハイブリッド化を前提に設計されるでしょう。教育現場では、α世代の集中力を維持するためにインタラクティブで短時間に区切ったコンテンツを用意したり、子どもの自主性・探究心を刺激するプロジェクト型学習を取り入れたりする流れが一層強まると予想されます。
エンターテインメント業界にとって、α世代は将来の主要顧客層であると同時に、今現在も存在感を示しています。動画配信やゲーム、音楽、マンガ・アニメといった領域で、既にα世代向けのヒットコンテンツが生まれています。特に短尺動画や参加型コンテンツの人気が高く、TikTokで流行るダンスやYouTubeの実況動画など、視聴者が真似したりコメントで参加したりできるコンテンツが支持を集めます。さらには、メタバースやVRライブといったバーチャル空間での娯楽にも親和性が高く、コロナ禍におけるオンライン卒業式やバーチャル遊園地のように、フィジカルとデジタルの境界を超えたエンタメ体験を受け入れる土壌があります。コンテンツ提供側は、一方的に見せるだけでなくユーザーが創作や発信に関与できる余地を作ることで、α世代の熱狂的な支持を得やすくなるでしょう。実際、α世代は「視聴者であると同時にクリエイターである」という側面が強いと指摘され、今後はファン参加型の企画や、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を前提とした展開がますます重要になると考えられます。
広告・マーケティング業界でも、α世代の登場によって戦略の見直しが迫られています。彼らは幼い頃から大量の広告や情報にさらされて育っているため、従来型の一方的な広告メッセージは通用しにくい傾向があります。代わりに、共感や没入感を得られる体験型コンテンツへの反応が良いとされます。例えば、人気ゲームやアニメの世界観とコラボしたキャンペーン、AR技術を使った没入型プロモーション、TikTokやYouTube上で楽しめる参加型の企画などは、α世代の心を掴みやすい手法です。また、価値観に敏感な世代でもあるため、企業やブランドが社会に対してどんな姿勢を持っているかも重視します。表面的にトレンドに迎合するだけでは彼らの信頼を得られず、企業理念や倫理観まで含めて一貫したメッセージを発信していないとすぐに見抜かれてしまうとも言われます。
したがって、今後の広告戦略では単なる商品の機能訴求以上に、「このブランドは何を大切にしているのか」「どんな体験や物語を提供してくれるのか」を伝えることが求められるでしょう。さらに、現在のα世代にアプローチする際には購買決定権を持つ親世代(多くはミレニアル世代)にも響くメッセージが必要です。子どもと親が一緒になって楽しめるキャンペーンや、親の共感も得られる社会的メッセージを盛り込むなど、二世代を視野に入れたマーケティングが効果を発揮します。
おわりに
α世代は、生まれながらにしてデジタル技術と多様性に満ちた時代を生きる、これまでにない感性を持った世代です。その存在感は現時点ではまだ子ども世代とはいえ、世界的な人口規模と影響力の大きさから今後の市場を左右するカギになることは間違いありません。
彼らが成長するこれから10年余りの間に、企業は商品開発から販売チャネル、広告手法に至るまで様々な面で変革を迫られるでしょう。重要なのは、表面的にα世代に媚びるのではなく、彼らの価値観やライフスタイルを深く理解し、共感に根ざしたブランド体験を提供することです。
α世代の動向を注視し、彼らと共創する姿勢で市場を捉えることが、ポストZ世代のビジネス成功のポイントとなるでしょう。
参考文献
https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00018530T01C25A2000000/
https://www.tokyu-agc.co.jp/article/202506_01.html
著者名/ 鈴木林太郎 経済ライター
テックと経済の“交差点”を主戦場に、フィンテック、Web3、決済、越境EC、地域通貨などの実務に効くテーマをやさしく解説。企業・自治体の取材とデータ検証を重ね、現場の課題を言語化する記事づくりが得意。難解な制度や技術を、比喩と事例で“今日使える知識”に翻訳します。
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