仕事は内容で評価されると思いがちですが、実は「伝える順番」も印象を左右します。人は最初に得た情報を重視する「初頭効果」と、最後に触れた情報が残りやすい「親近効果」の影響を受けがち。本記事では、この2つの心理効果を仕事の場面でどう使い分ければよいかを解説します。
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仕事はきちんとこなしているのに、なぜか評価が安定しない。説明も丁寧にしたつもりなのに、意図と違った印象を持たれてしまう――そんな経験はありませんか?
実は、仕事の評価は「中身」だけで決まるわけではありません。人は、伝えられたすべての情報を同じように受け止めているとは限らず、どの順番で受け取ったかによって、印象や判断が変わることがあります。
その背景にあるのが、心理学で知られる「初頭効果」と「親近効果」。本記事では、この2つの効果を、仕事での誤解や評価のブレを減らすための視点として紹介していきます。
人は「すべての情報」を同じようには見ていない
仕事は、「内容で判断されるはず」と思いがちです。けれど実際には、伝えたことが全部同じように受け止められるとは限りません。
たとえば、会議やプレゼン、面接や報告など。限られた時間の中で多くの情報に触れると、すべてを丁寧に処理するのは難しくなります。そこで人は、「全体の雰囲気」や「話の流れ」など、手がかりを使って判断をスピードアップしようとします。
だからこそ、内容がしっかりしていても、「なんとなくの印象」で評価に差が出ることがあります。なかでも特に影響を受けやすいのが、最初と最後に触れた情報。人は無意識のうちに、そこを手がかりにして全体を理解しようとするのです。
最初が9割? 評価に影響する「初頭効果」
「第一印象が大事」とはよく言われますが、実際に最初の情報がその後の印象に強く影響するのは、心理的にもよくあることです。そのときに働いているのが、「初頭効果」と呼ばれるものです。
初頭効果とは、最初に得た情報が記憶に残りやすく、その後の判断や印象の前提になりやすいという心理の働きです。仕事の場面では、この影響が特に出やすくなります。
たとえば、初回の会議や打ち合わせ、最初の発言や立ち位置によって、「どういう人か」「どういう提案か」という印象がある程度できあがることがあります。その後にどれだけ丁寧に説明しても、最初の印象が基準になって、無意識のうちに評価が偏ってしまうことがあります。
大事なのは、相手がどんな前提をもってこれからの話を聞くのかを考えること。その視点があると、「どう伝えるか」だけでなく、「どこから伝えるか」が自然と変わってきます。
最後のひと押しになる「親近効果」
最初の印象が大事とはいえ、人は「最初だけ」で判断しているわけではありません。判断の直前に触れた情報が、意思決定に大きく影響することもあります。このときに働くのが、「親近効果」と呼ばれる心理です。
親近効果とは、最後に得た情報ほど記憶に残りやすく、判断や選択の決め手として使われやすいという心理の働きです。最初の印象を覆すほどではないかもしれませんが、迷っているときや、決断の直前には強く働くのが特徴です。
仕事の現場では、この効果がはっきりと表れる場面があります。たとえば、会議の締めくくりの一言、商談の最後に添えた補足説明、面接の終盤で交わしたやり取りなど。内容そのものが新しくなくても、「最後にどう締めくくられたか」が印象に残り、判断に影響を与えることがあります。
これは、人が何かを決めるとき、直前の情報に注意が集中しやすいからです。ただし、親近効果を意識するというのは、最後に印象的な一言を用意することではありません。大事なのは、相手が判断を下すタイミングで、どの情報が頭に残るのかを意識すること。この視点があると、「どう締めくくるか」が、自然と変わってくるはずです。
最初と最後、どちらが効く?「使い分け」の考え方
初頭効果と親近効果は、「どちらが正解か」を比べるものではありません。大切なのは、相手がどんな状況で情報を受け取っているかを考えることです。印象が残りやすいタイミングや条件は、シーンによって変わります。ここでは、その使い分けのヒントを整理します。
(1)関心が薄いなら「最初」が勝負
まだあなたや提案に強い関心を持っていない段階では、最初に聞いた内容が、印象のベースとして残りやすくなります。このときは、初頭効果の影響が大きくなります。一方、すでに内容を理解していて、「どう判断するか」を考えはじめている段階では、最後のひと押しが効きやすくなります。ここで働きやすいのが親近効果です。
(2)選択肢が多いと「最後」が効く
複数の案や人を比較・検討している場面では、最後に聞いた情報の印象が強く残りやすくなります。このときは親近効果が働きやすく、「最後にどう伝えたか」が判断を後押しする材料になることがあります。一方で、選択肢がまだ少ない段階では、最初に聞いた情報がそのまま基準になりやすいもの。この場合は、冒頭での説明や位置づけがカギになります。
(3)その場で決まるなら「最後」が残る
その場や直後に決断が下されるようなシーンでは、最後に聞いた情報が判断材料として強く残ります。商談のクロージングや面接の最後の一言など、直前の印象が決め手になることもあります。
一方で、判断までに時間がある場合は、最初の印象が長く記憶に残りやすくなります。持ち帰って検討されるような場面では、初頭効果の影響が出やすくなるため、「最初にどう伝えたか」が後から効いてくることもあります。
どっちが効く? それは「相手の状況」次第
初頭効果と親近効果は、どちらも印象や判断に影響を与える心理効果です。反対の働きをするので、「結局どっちが強いの?」「どっちを意識すればいいの?」と思った人もいるかもしれません。
答えは、相手がどんな状況にいるかによって変わる、ということです。関心が薄い場面、比較している最中、判断がすぐに求められる場面。そのシーンによって、どちらの効果が効きやすいかが変わってきます。だからこそ、相手の状況を見極めること。場面に合わせて伝え方を工夫できると、誤解や評価のブレも、少しずつ減らしていけるはずです。
構成/高見 綾
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