働き方の多様化に対応するため、約40年ぶりに労働基準法改正の議論が進んでいる。
そこでYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原 由一氏は、働く当事者である正社員が「2026年に予定されている労働基準法の大規模改正」についてどのように受け止めているのかアンケート調査を実施したので、従業員に直接影響する主要改正ポイントの解説とともに結果を紹介しよう。
2026年労基法改正、半数以上が「知らない」改正への評価は「判断保留」が最多
「2026年、約40年ぶりに『労働基準法の大規模改正』が予定されていることを知っているか?」と尋ねたところ、「知らない」(総計:53.8%、男性:47.0%、女性:60.5%)と回答した人が過半数を占めた。
男女別に見ると、男性の方が認知度はやや高いものの、「内容まで理解している」(総計:9.8%、男性:11.0%、女性:8.5%)は約1割と低い結果となり、働き方に直結する法改正でありながら、当事者には十分な情報が届いていない現実が浮き彫りに。
次に、「現在、副業をしているか?」と尋ねたところ、「副業をしている」(総計:16.0%、男性:18.5%、女性:13.5%)と回答した人は2割弱にとどまった。
今度は、「勤務時間外に上司や会社から業務連絡を受けたことはあるか?」と尋ねたところ、「よくある」(総計:11.3%、男性:14.0%、女性:85%)、「時々ある」(総計:28.0%、男性:30.5%、女性:25.5%)と回答した人は全体の約4割にのぼった。
一方で、「まったくない」(総計:33.5%、男性:26.5%、女性:40.5%)と答えた人も3割以上存在し、職場や個人によって大きな差があることも判明。
男女別では、男性の方が勤務時間外の連絡を受ける割合が高く、女性は「まったくない」と答える割合が比較的高い結果に。
最後に、「今回の労働基準法改正は自身の働き方にプラスになると思うか?」と尋ねたところ、「どちらとも言えない」(総計:48.3%、男性:48.5%、女性:48.0%)と回答した人が最も多く、全体の約半数を占めた。
「とてもプラスになる」(総計:7.0%、男性:6.0%、女性:8.0%)、「ある程度プラスになる」(総計:25.0%、男性:26.5%、女性:23.5%)と前向きに捉える人は3割超存在するものの、「あまりプラスにならない」「マイナスになると思う」と感じている人も少なくないようだ。
調査概要
調査期間:2025年12月12日
調査手法:インターネット調査
調査対象:20歳以上60歳未満の全国の会社員(正社員)
サンプル数:400名(10歳刻み・男女各50名の均等割付)
調査機関:Freeasy
※「脱・税理士スガワラくん 調べ」
「2026年、労働基準法の大規模改正」をスガワラくんがわかりやすく解説
2026年、労働基準法が大幅に改正される案が出ています。現行の労働基準法は、1987年の社会状況を前提に作られているため、リモートワークの普及、副業解禁、フリーランス人口の増加など、近年の働き方の実態と乖離している部分が指摘されてきました。
特にコロナ禍以降は、働く場所・時間・雇用形態の多様化が急速に進み、法律面でのアップデートが求められてきました。
今回の改正は、こうした「現実の働き方」に法律を追いつかせる目的で実施されます。そこで今回は、従業員に直接影響する主要改正ポイントをわかりやすく解説します。
■労働基準法の主な改正ポイント
1.有給休暇の賃金計算
有給休暇の賃金計算方法には次の3種類がありますが、計算方法により支給単価に大きな差が出る問題がありました。
(1)平均賃金法
(2)標準報酬月額賃金法
(3)通常賃金法
特に、時給で働いている人や勤務日数が少ない人は、平均賃金法で計算すると、1日当たりの単価が下がる傾向があり、不公平が生じていました。そのため、改正案では、実際の賃金水準に近い“通常賃金”に統一し、働き方の違いによる不利益を失くす方針が示されています。
2.法定休日の明確化
現在の法律は「週休1日でよい」という内容ですが、週40時間を超えると時間外労働になるため、日曜日を法定休日、土曜日を法定外休日とする週休2日が一般的です。しかし、その区分を曖昧にして、休日出勤の割増賃金を適切に支払わない企業も存在します。
そこで、今回の改正では、
・法定休日(割増賃金が通常賃金35%増の休日出勤となる日)
・法定外休日(割増賃金が通常賃金25%増の時間外労働扱いとなる日)
を企業が明確に定めることが義務化されます。
3.副業の労働時間
最近、副業をする人が増加しています。例えば、「本業8時間+副業2時間=10時間労働」というケースでは、合計が1日8時間・週40時間を超えるため、本来は割増賃金(時間外労働の25%増)が発生します。
しかし、「本業・副業のどちらが25%増を負担するのか」が法律で定められていないため、企業側が副業を禁止する一因となっていました。
改正では、本業と副業の労働時間を“別扱い”とする方向性が示され、副業を容認する企業が増えることが期待されています。
4.週の法定労働時間
基本的に週40時間を超えたら時間外労働になりますが、従業員10人未満の一部のサービス業などでは「週44時間まで法定内労働」という特例がありました。
しかし実際には、対象企業の8割以上が既に40時間で運用しているため、2026年の改正でこの特例は廃止され、週40時間に統一されます。
5.勤務間インターバル制度
終業から翌日の始業まで、最低11時間空けなければならない「勤務間インターバル制度」が導入されます。
例)9時始業の場合
・22時までに退勤 → 翌日9時に出勤可能
・23時退勤 → 翌日の出勤は10時以降
・24時退勤 → 翌日の出勤は11時以降
6.管理職の労働時間
管理職には残業代が出ないことを悪用し、長時間労働をさせるケースが問題視されてきました。改正では、管理職にも勤怠管理を義務付け、残業代の支払い対象とします。
7.つながらない権利
スマホ・チャットツールの普及により、勤務時間外でも上司から連絡が来ることが一般化しています。それに対し、従業員は「業務時間外は応答義務がない」と明確に主張できる「つながらない権利」を持つことが認められます。
■労働基準法は意味がない?
労基法は存在するものの、中小企業の法理解不足や、労働基準監督署の監督体制の限界、違反しても罰則が軽い(または実質的にない)などの理由から、意味がないという懸念の声も多く上がっています。
税法のように金額で罰則を設定しにくい労働分野では、違反に対する抑止力が弱くなりがちです。
例えば、有給休暇に関しては、年5日の取得義務を知らない企業や、知っていても与えない企業、違法な有給買取を行う企業などが存在し、制度の形骸化が問題視されています。
まとめ
2026年の労働基準法の改正は、
・有給
・法定休日
・副業
・勤務時間管理
・つながらない権利
など、働く人の日常に直結する項目が大きく変わる改正となります。働き方の多様化が進む中で、企業・従業員双方が正しく理解し、適切な運用を行うことが求められています。
構成/Ara







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