ビューティーディレクター MICHIRUさんとおくる、連載「Wellbeing beauty by MICHIRU」。
Kruhiの井浦あいさんにお話しを伺った全3回の後編では、鹿児島県で始まった新しい取り組み「農業」についてお話を伺った。「くるひ自然植物園」とはじまるKruhiの新章。
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スキンケアの原料となる植物と、それを育む土壌
MICHIRUさん(以下、MICHIRU):先日の新製品発表では、農業生産法人アーセンキッチン株式会社を設立して「くるひ自然植物園」として農業を始めたという発表もありましたね。共同代表をされている農家の肥後十蔵さんからのお話しもあり、とてもワクワクしました。
あい:そうなんです。Kruhiのプロジェクトを進めるなかで、化粧品が工場の粉や液体の原料から生まれているのではなく、実はその原料は元を辿れば植物から生まれていることを目の当たりにしました。大事なのは植物であり、土。それに気づいたら「自分たちが納得できる土でなければ、納得できる植物が育たない」という考えに至り、農薬を使わない農法を実践することにしました。
MICHIRU:どんな場所で畑をされているのですか?
あい:鹿児島県の南端にある、南大隅町です。近くに石けんシャンプーとトリートメントの製造委託先の工場があるので何度も訪れている場所で、鹿児島空港から2時間半かけて南大隅町まで南下していくと、植生がどんどん変わっていくんです。日本らしい常緑樹の景色から、だんだんとパッションフルーツやビロウ、椰子の木、ストレリチアなどが見えるようになり、まるで南の島にいるかのような景色になっていく。その変化の豊かさに心を掴まれてしまって。
MICHIRU:お話しを聞くだけでもパワーを感じる場所ですね。
あい:この土地で植物を育ててみたい。その思いと、その地で循環型農法を研究実践している農家の肥後十蔵さんの思いが重なり、農業生産法人「アーセンキッチン株式会社」を立ち上げました。パートナーの肥後さんは、Kruhiのバームの原料であるハイビスカスローゼルを栽培してくださっている農家さんです。
命が巡る循環型の土づくりに魅せられて
MICHIRU:生産者さんとのご縁がそんな形に!
あい:肥後さんは土を耕さず、自然の循環を生かして土壌づくりをされている方。海が近いのもあり船底についている貝殻を砕いたものや魚の頭や骨なども活用して、土壌の養分バランスを整えたり、山の腐葉土などで微生物を培養、発酵させて土壌を活性化させたりしています。
山で命を終えた動物や農作物の残渣も、そのまま廃棄せず、微生物の力で土へ還していきます。自然の循環に寄り添いながら、命がまた次の命を育む土づくりを続けているんです。
MICHIRU:海も山も川も全ての命が、肥後さんの手で土の中でつながっていくのですね。
あい:素晴らしいですよね。効率を考えたら、耕して、化学的な肥料を入れたほうがずっと早いんです。でも工夫や研究を重ねて、微生物やミミズたちが自然に土を耕し、土壌が豊かになるのを待ちながら植物というよりも土を育てていく。自然のペースに従って循環する畑つくっているその姿勢に、私たちは惹かれました。今農園には虫も微生物も生き生きと暮らす、ふかふかな土が育っています。
Kruhiとくるひ自然植物園が届ける未来
MICHIRU:農園ではどんな植物を育てていく予定ですか?
あい:農園は「くるひ自然植物園」と名付けました。Kruhiの製品として衣食住に役立てられるハーブを中心に、野菜も育てています。具体的にはセージ、ゼラニウム、レモンマートル、ベチパー、パクチーやダイコン、ニンニクも育っています。畑のすぐ隣には、蒸留小屋も建てています。採れたての植物を畑でそのまま蒸留できたら、生命力抜群の蒸留水や精油がとれるのではないかと期待しています。
MICHIRU:蒸留小屋併設の畑! 絵本みたいですね。
あい:共同代表でもある夫が、香りの都・グラースで出会った景色をヒントに、小屋の色を選び、本当に絵本みたいな風景になりました。将来的にはこの農園で育てた植物を原料として、Kruhiのアイテムがつくれたらと思っています。周囲にも長く耕作放棄されて、農薬の影響が残っていない土地が多いので、農地を広げていけば地域への還元もできそうです。
MICHIRU:原料作りから始まるブランドになるかもしれないですね。
あい:今後も日本各地の未利用資源や、地域や農家さんの課題となっている植物とも出会っていき、原料として活用していきながら、自分たちの手でも育ててこうと思っています。今は1年を通して、野菜も植物も手に入りますよね。便利に手に入る裏側には、植物の生態系に負荷がかかっていたりして、本来当たり前のことではありません。
気候や季節の移ろいの中で、植物本来の育ち方や、生態系本来の循環のあり方を私たちが自ら経験することで、Kruhiで伝えていけることも増えていくはず。収穫などをみなさんにも体験してもらえるイベントなども開催していこうと思っています。
一つひとつのアイテムと出会いを大切に
MICHIRU:Kruhiとしては、今後どんな展開を考えていらっしゃいますか。
あい:Kruhiのプロダクトはヘアケアもスキンケアも、どれも胸を張ってお届けできるものです。使ってくださる方の声や、自分たちの暮らしの中の気づきから、「こんなものがあったらいいな」という想いが少しずつ形になっているのを感じています。
コメヌカという力強い原料との出会いをきっかけに、私たちはさらに多くの植物と向き合い、その背景にある可能性をKruhiのスタッフやくるひ自然植物園のみんなと日々探り続けています。「安心、実感、循環」がKruhiのものづくりの軸です。誰かが手をかけて育てた植物、地球の営みの中で生まれたもの。その二度と再現できない時間を閉じ込めたものが、Kruhiのプロダクトだと思っています。
天然由来のシンプルなものを選ぶと、体も心もふっと軽くなる。その感覚が、自分へ、大切な人へ、そして次の世代へと連なって拡がっていくことを願っています。
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井浦あい
Kruhiディレクター。1984年生まれ。大学卒業後、一部上場企業でIR、秘書を担当し、結婚を機に退職。主婦業を経て、健康と環境に配慮した製品の必要性を感じ、2021年、夫・井浦新氏とともにValley and Windを創業。2022年にサステナブルコスメブランド「Kruhi」を立ち上げる。
MICHIRU(みちる)
メイクアップアーティスト・ビューティーディレクター/渡仏、渡米を経て、国内外のファッション誌や広告、ファッションショーやメイクアイテムのディレクション、女優やアーティストのメイクなどを数多く手がける。また体の内側からきれいになれるインナービューティを提唱するなど幅広く活躍中。本連載ではナビゲーターを務める。
取材・構成/福田真木子 写真/黒石あみ







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