こんにちは。弁護士の林 孝匡です。宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。
ウザいパワハラ社長に、法的鉄槌!
ーー どれほどのウザさで?
裁判所
「パワハラ社長は己に問題があることに思いをいたさず、自分の指示に従おうとしないXさんを会社から排除すべく解雇したからです」
不当な解雇劇、認められた慰謝料額は!?
(大阪地裁 R5.2.7)
※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化
登場人物
▼ 会社
・研究機関用検査分析装置などの販売等を行う会社
・従業員は数十名規模
▼ Xさん
・営業所長
▼ パワハラ社長
・Xさんはじめ、社員へのパワハラが目立っていた
どんな事件か

このパワハラ社長、かなりウザかったようです。彼の入社後、多くの従業員がウザがり、10名の退職者が出ていました。
理由は、パワハラ社長からの厳しい叱責、メール、「自分の指示に従うように」との要求に嫌悪感を抱いたからです。
このパワハラ社長は、自分の前の勤務先の従業員を複数採用し、イエスマンだけで周りを固めたかったようです。反抗してくる既存社員を追い出したかったんでしょうね。
▼ Xさんをハミ出しものにする
パワハラ社長は、経理担当から「マネージャーの権限がある方はどなたですか?」とメールで質問を受けた時、「マネージャーとなっているものは以下となります」として、営業所長であるXさん以外の5名を上げました。
そして、とどめに「なお、●営業所所長(※筆者注:Xさんの肩書きです)という担当役職は現在存在しておりませんし、当職はそういう役職が有ったという事実を承知しておりません」と返信しました。
Xさんのことを完全に無視した内容です。
ーーー 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「この返信は不法行為です。パワハラ社長はXさんが営業所長であることを認識していたにもかかわらず、上記のようなメールを送信しており、これはXさんの自尊心を深く傷つけるものであって軽率のそしりを免れない」
▼ 私は悪くない
このパワハラ社長、とにかく自分の非を認めません。以下は、あるミーティングでの出来事です。
Xさん
「あなたの言動に恐怖を感じた従業員が多く辞めています」
パワハラ社長
「当然まあ、双方向あるけど、大前提としては社員の人たちがちゃんと理解をして合わせる努力もしてくれなきゃいけんよね」
別の社員
「意思疎通の中でどちらが優位であるかということはなく、報告すべきことはすべきであり、互いに直していくべきです」
パワハラ社長
「退職した社員はほとんど意思疎通しようとしなかった。またXさんは報告を怠っている。私からのメールにほとんどの社員が返答しない」
……かなり嫌われてたんでしょうね。
Xさん
「あなたからも返信はありません」
パワハラ社長
「仮に返信がなくても、それを再度求めるのが社員の義務だぜ。当たり前の話だから。その当たり前の話をじゃあ、君がやっていましたか?やってないよね。コミュニケーションを取ろうという気持ちが基本ないからやらないの。それなのに10に1つか、100に1つのことをココで重箱を突くように突っ込むわけだ。でも、辞めていった人間がいたとしても、結局それで商売としてうまくいってないか、いっているかっていったら、結果論的にはそれほど悪くないからね」
何を言ってるか分かりませんが、要は「問題があるのはキミ達であり私は悪くない」と述べ続け、自分に非があることを受け入れる姿勢はほとんど示しませんでした。
ーーー 裁判所さん、これはいかがですか?
裁判所
「退職者が多く出た原因はパワハラ社長の高圧的かつ不当な言動にあると認められるのに、『人が変われば経営方針も変わる、社員も合わせるべき』本来合わせるべきXさんが報連相を怠っていると指摘して非難を続け、最終的には『お互いに適切にコミュニケーションをとっていくことにする』など、自らの非を顧みない結論でまとめて協議を終了させている。これはXさんに対する対応としておよそ不適切なものと言わざるを得ない」
▼ その後もXさんに嫌がらせ
ミーティング後も、以下のような嫌がらせが続きました
・「あなたのメールの理解が難しい」と非難
・「服装に問題がある」
・Xさんが担当していたエリアを他の担当者に変える(合理的理由がないのに)







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