特定の人と会うと、なぜか強く疲れたり罪悪感を抱いたりすることはありませんか。それは性格の問題ではなく、心理学で「投影同一視」と呼ばれる無意識の働きかもしれません。本記事では、その仕組みと人間関係から自分を守る視点をわかりやすく解説します。
CONTENTS
「特定の誰かと会った後、なぜか異常にどっと疲れる」
「普段の自分なら言わないようなキツい言葉を、その人の前でだけ吐いてしまう」
「相手の機嫌が悪いだけなのに、なぜか自分が悪いことをしたような罪悪感に襲われる」
日々の人間関係の中で、そんな不思議なもやもやを感じたことはありませんか?
実はそれ、あなたの性格や能力のせいではなく、心理学で「投影同一視」と呼ばれる無意識のメカニズムが働いているからかもしれません。
「投影同一視」は、自分の中にある“認めたくない嫌な感情”を、無意識のうちに相手に押しつけ、さらには相手にその通りの感情を抱かせてしまうという、少し不思議で強力な心の動きのことを指します。
自分がこの現象に巻き込まれていることに気づくだけでも、対人関係のストレスは軽くなります。
今回は、この厄介だけれど、誰もが持っている「投影同一視」の正体をわかりやすく紹介し、自分の心を守るための方法をお伝えしていきます。
「投影同一視(とうえいどういつし)」とは
「投影同一視」は一見難しそうですが、誰もがやってしまう心の反応です。まずはその言葉の意味と、仕組みをシンプルに整理します。
■「投影同一視」の意味
「投影同一視」とは、自分の中の認めたくない嫌な気持ちを相手に押しつけ、さらに相手を操ってその通りの気持ちにさせてしまうことです。
例えば、自分が強い不安を感じているとき、無意識に相手を不安にさせるような言動をとり、相手がオドオドし始めると「しっかりしてよ」と責めるようなケースがこれにあたります。
「投影同一視」は、「投影性同一視」「投影同一化」「投影性同一化」と呼ばれることもありますが、すべて同じ意味です。
■そもそも「投影」とは?
ベースとなる「投影」は、自分の中の嫌な感情を、相手が持っていると思い込むことです。自分が相手を苦手なのに「あの人が私を嫌っている」と勘違いするのが「投影」です。
この段階では、まだ自分の頭の中だけの思い込みで、相手は実害を被っていません。
■「投影同一視」と「投影」の違いは、相手を巻き込むかどうか
決定的な違いは、相手を巻き込むかどうかです。
「投影」は自分の勘違いで済みます。例えば、自分が相手を嫌いなときに「あの人は私を嫌っているに違いない」と一人で思い込むだけです。
対して「投影同一視」は、相手を実際に動かしてしまいます。先ほどの例で言えば、相手を嫌っている自分を認めたくないために、わざと相手が怒るような失礼な態度をとり続けます。その結果、相手が本当に怒り出すと「ほら、やっぱりあの人は私のことが嫌いなんだ」と確信し、自分の嫌な感情を相手に肩代わりさせてしまうのです。
このように、相手を自分の思い込み通りの人に仕立て上げてしまうのが、「投影同一視」の大きな特徴です。
「投影同一視」から自分を守る方法
「投影同一視」は無意識のやり取りなので、まずはそれに気づくことが一番の対策です。自分と相手、それぞれの立場での方法をご紹介します。
1.「なぜかイライラする」の正体を知る
特定の相手といるときだけ、急に激しい怒りや強い罪悪感に襲われるなら、それは相手の感情を肩代わりさせられているサインかもしれません。そんなときは、自分を守るために次のような方法を取ってみてください。
感情の仕分けをする
今感じているモヤモヤに対して「これは本当に自分の感情なのかな?」と心の中で問いかけてみてください。相手の感情を自分のものとしてではなく、一時的な「預かりもの」だと捉えるだけで、心に余裕が生まれます。
例:相手が不機嫌なときには、「私が何か悪いことをしたかな?」と自分を責めるのではなく、「この不機嫌さは相手の問題であり、私が背負う必要はない」と線引きをする。
反応せずに観察する
相手があなたをイライラさせようとしても、あえて反応せずに一歩引いて観察しましょう。あなたが相手の投げた感情を受け取って、怒り返したり落ち込んだりしなければ、その負の連鎖は止まります。
例:相手が嫌味を言ってきても「ああ、この人は今、自分の中のイライラを誰かにぶつけて発散したいんだな」と、まるで映像を観るように冷静に眺めてみる。
2.「いつも誰かを怒らせてしまう」自分に気づく
もし、周囲の人から「なぜかいつも怒られる」と感じたり、特定の相手が自分の前でだけ攻撃的になるとしたら、無意識に自分の不安を相手に押しつけて、相手を怒らせている可能性があります。そんなときは、次のような方法で自分を見つめ直してみてください。
自分の感情を「自分のもの」として引き受ける
相手が怒り出したとき、ただ「あの人はひどい」と被害者になるのではなく、「自分の中に、相手にわかってほしい気持ちが隠れていないかな?」と考えてみてください。自分の中にある寂しさや自信のなさといった、認めるのが少し恥ずかしい本音を、「今、私はこう思っているんだな」と自分で受け止めることができれば、それを相手にぶつけて怒らせる必要はなくなります。
例:相手から怒られたときに、「自分が先に、相手に大切にされていない寂しさからわざと怒らせて、私のことをわかってほしいとアピールしていなかったかな?」と振り返ってみる。
素直な気持ちを言葉にする
不機嫌な態度や、わざと相手を逆なでするような行動で「自分の苦しさをわからせよう」とするのをやめてみましょう。今の本心を言葉にするだけで、相手を怒らせる必要はなくなります。
例:相手にわざと冷たくして気を引こうとするのではなく、「最近、無視されているようで寂しい」と、トゲのない言葉で本当の気持ちを伝えてみる。
☆☆☆
「投影同一視」に気づけるようになると、人間関係の疲れは軽くなります。自分と相手の間に適切な境界線を引き、お互いの感情を大切にすることから始めてみてください。
文・構成/藤野綾子
友人や家族の悩みに深く寄り添ったり、困っている人を見ると放っておけなかったり。あなたの持つその高い共感力は、人間関係において大切なものです。 しかし、その共感力…
人生の満足度を左右する時間の捉え方「タイムパースペクティブ(時間的展望)」とは?
「あの時こうしていれば」と過去を悔やんだり、「今が楽しければいい」と考えたり、「将来のために今頑張ろう」と計画したり…。あなたはどのパターンを考えることが多いで…







DIME MAGAZINE














