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うまくいかないのは〝人生の色眼鏡〟のせい?「スキーマ・コーチング」で思考をアップデートする方法

2025.12.30

仕事や人間関係で、なぜか同じパターンにつまずいてしまう。その原因は能力不足ではなく、無意識にかけている「人生の色眼鏡」かもしれません。スキーマ・コーチングは、思考の枠組みに気づき、今の自分に合った視点へ整えるアプローチ。考え方をアップデートするヒントを紹介します。

仕事も対人関係も、なぜかいつも同じようなパターンでつまずいてしまう。そんな感覚を抱いたことはありませんか?

一生懸命に取り組んでいるのに空回りしてしまうとき、実はあなたの能力不足ではなく、無意識のうちにかけている人生の色眼鏡が影響しているのかもしれません。

「スキーマ・コーチング」は、自分でも気づかないうちに作り上げられた思考の枠組みを整え、今のあなたにふさわしい視点へと導くアプローチです。

この記事では、自分を縛る思い込み(色眼鏡)を解き放ち、より軽やかに人生を進めるためのヒントをお伝えします。

スキーマとは

まずは、私たちが無意識に使っているスキーマがどのようなものなのかを見ていきましょう。

■「スキーマ」は、脳の中に作られた知識のテンプレート

私たちは毎日生活する中で、目に入ってくる景色、人との会話、流れてくるニュースなど、常に膨大な刺激にさらされています。それらすべてに対して、「これは何だろう」「どう反応すべきだろう」と立ち止まって考えていると、脳に大きな負荷がかかってしまいます。

それを避けるために、脳はいつものパターンとして情報を一瞬で処理しようとします。この自動処理に使われるのが、「スキーマ」と呼ばれる知識のテンプレートです。

例えば、初めて入るレストランであっても、私たちはどうやって注文し、どのタイミングでお会計をするかを予測できます。それは、これまでの経験からレストランという「スキーマ」が自分の中に出来上がっているからです。

このように、物事の予測を立てたり、状況を素早く理解したりするために、「スキーマ」は欠かせない役割を果たしています。

■「スキーマ」は、人によって異なる心のレンズでもある

脳の中にあるテンプレートは、いわば世界を見るためのレンズのような役割を果たしています。私たちは真っさらな状態で世の中を見ているのではなく、常に自分だけのレンズを通して出来事を見ているのです。

例えば、誰かに挨拶をして返事がなかったとき、ある人は「相手が忙しくて気づかなかったのだ」と考えます。しかし、別の人は「自分は嫌われているのかもしれない」と感じてしまいます。これは後者の人が、「自分は人から受け入れられない」という色眼鏡(レンズ)を通して出来事を見てしまっているためです。

このように、自分の中にどのようなレンズがあるかによって、目の前の出来事の意味付けや、そこから生まれる感情は大きく変わります。

■人生の色眼鏡を修正する

「スキーマ」はもともと、自分を守り、効率よく生きるために作られたものです。例えば、誰かに頼らず1人で頑張ることで自分を守ってきた場合であれば、それが自分を助けてくれた大切な考え方であっても、環境や状況の変化などによってかえって自分を自由に動けなくさせてしまう原因になることがあります。

自分を苦しくさせている考え方の癖は、性格のせいではありません。今の環境や人間関係には合わなくなった色眼鏡を、ずっとかけ続けているだけかもしれません。

「スキーマ・コーチング」では、この色眼鏡の存在に気づき、今のあなたにとって心地よい見え方へと修正していくことを目指します。

「スキーマ・コーチング」の方法

それでは、自分を縛っている色眼鏡をどのように修正していけばよいのでしょうか。ここからは、無意識のうちに身についた色眼鏡(考え方の癖)をアップデートし、心を軽くするための実践的な方法を3つのステップで紹介します。

1.自分の色眼鏡に気づく

「スキーマ・コーチング」の第一歩は、自分がどのような色眼鏡を通して世界を見ているのかを知ることから始まります。

心が大きく動いたり、いつも同じようなパターンで悩んだりしたときに、その瞬間に頭に浮かんだ考えを書き出してみます。例えば、ミスをして「自分は無能だ」と感じたり、誘いを断られて「嫌われた」と落ち込んだりする瞬間です。自分は嫌われている、完璧でなければならないといった、自分を縛っている無意識のルールに光を当てることが、第一歩となります。

2.色眼鏡が今の自分に合っているか確かめる

次に、その色眼鏡が今の自分にとって本当に正しいものなのか、客観的に見つめ直します。

例えば、「自分は人から受け入れられない」という色眼鏡を持っているなら、これまでの人生で人から優しくされた経験や、受け入れられた事実はなかったかを丁寧に振り返ります。1つの偏った見方だけでなく、客観的な事実を集めることで、色眼鏡による視界の歪みを少しずつ緩めていきます。

3.今の自分に合った視点を選ぶ

最後に、今の自分を助けてくれる、より柔軟な新しい視点を選んでいきます。これまでの古い色眼鏡を否定して無理やり消そうとするのではなく、今の生活をより良くするためにはどのような捉え方をすればいいかを考えます。

例えば、「人に頼るのは負けだ」という色眼鏡を持っているなら、「協力することでより良い成果が出せる」と書き換えてみるのです。「失敗は恥ずべきことだ」という色眼鏡を持っているなら、「失敗は成長のプロセスである」というように捉え方を修正するような作業です。

この新しい視点を意識的に日常生活で試していくことで、徐々に思考のアップデートが進んでいきます。

☆☆☆

自分を縛っていた色眼鏡に気づき、今の自分にふさわしいものへと少しずつ整えていく。その小さな積み重ねが、きっと心に余裕をもたらしてくれるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

文・構成/藤野綾子

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精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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