介護休暇の有給化は義務ではありませんが、休暇の取得を促すために効果的な方法のひとつです。有給化は、離職防止にもつながります。
目次
2026年は介護休暇の有給化が法律上の義務になるのか、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。有給化が義務付けられる予定はなく、給与を支給するかどうかは会社の裁量に委ねられています。
本記事では、介護休暇の仕組みや現状、有給化するメリットなどを解説します。
介護休暇とは?

介護休暇とは、家族の介護のため、従業員が取得できる休暇制度です。育児・介護休業法で定められており、短時間の介護や通院の付き添いなど、一時的なケアに対応する休暇を指します。
ここでは、介護休暇を取得できる現行制度の仕組みや、介護休業・有給休暇との違いを解説します。
■現行制度の仕組み
介護休暇とは、要介護状態にある家族の介護や世話をするために、従業員が取得できる休暇制度です。要介護状態とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」にあることを指します。
法で定められている内容は、次のとおりです。
| 取得できる従業員 | ・対象家族を介護する労働者・労使協定を締結している場合、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とすることは可能 |
| 対象家族 | 要介護状態にある「配偶者・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫」 |
| 取得単位 | ・1日または半日・企業によっては1時間単位も可能 |
| 取得可能日数 | ・1年度に対象家族1人につき5日まで・2人以上なら最大10日まで |
| 取得手続き | ・社内で規定されている書面等がある場合は社内様式を使用・口頭での申出も可能 |
労働基準法の年次有給休暇とは別に取得できますが、無給が一般的です。会社の規定により、有給化しているケースもあります。
参考:厚生労働省「介護休暇について|介護休業制度特設サイト」
■介護休業との違い
介護休暇と似た休暇制度に、「介護休業」があります。どちらも家族の介護を目的として取得する休暇であり、支援すべき家族の要介護度の基準も共通です。しかし、取得できる期間や取得条件など、多くの点で異なります。
介護休暇は、家族の通院の付き添いや介護サービスの手続き代行など、短時間・一時的な介護対応のために取得する短期の休暇です。1年度に家族1人につき5日まで取得でき、基本的に無給となります。
一方、介護休業は、家族が長期的に介護を必要とする場合に取得できる最大93日までの長期休業制度です。対象家族は配偶者の父母も含まれ、一定の要件を満たせば雇用保険から給付金も支給されます。取得には1年以上の勤続要件があり、休業開始や期間も企業との調整が必要です。
参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」
■有給休暇との違い
有給休暇とは、労働基準法で定められた「労働者の権利」としての休暇制度です。理由を問わず自由に取得でき、取得した日数分の賃金が支払われます。
これに対し、介護休暇は家族の介護や通院付き添いなど特定の目的に限定して取得できる無給の休暇です。また、有給休暇は勤続期間や出勤率による付与条件がありますが、介護休暇は入社直後でも取得可能という点も異なります。
参考:厚生労働省「年次有給休暇制度」
介護休暇制度の現状

介護休暇は、2012年の改正育児・介護休業法の全面施行によって、事業主が整備すべき制度として明確に義務化されました。しかし、実際の現場では十分に活用されていないという課題があります。
ここでは、介護休暇制度の現状をみていきましょう。
■介護休業取得率と課題
介護休暇制度の整備は義務化されたものの、実際の取得率は高くありません。介護をしている雇用者(322万人)について、介護休暇を含む介護休業等制度を利用している人の割合は11.6%で、このうち介護休暇は4.5%にとどまっています。
取得率が低い背景には、制度自体の認知不足や「周囲に迷惑をかけたくない」という職場環境による心理的ハードルがあり、制度は整っていても実際には利用しにくい状況があります。
また、休暇が無給である点や取得手続きが煩雑なことも利用を妨げる要因です。今後は、制度の周知徹底や取得しやすい風土づくりなど、制度の実効化に向けた取り組みが求められます。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法等の改正について」
■2025年に育児・介護休業法を改正
2025年には、「柔軟な働き方の実現」や「仕事と介護の両立支援の強化」などを目的に、育児・介護休業法の改正が施行されました。
介護休暇に関する主な変更点は、事業主に対して制度内容の周知と労働者への意向確認を義務化したこと、さらに相談体制の整備など「介護休暇を利用しやすい職場環境づくり」を求めている点です。
また、これまで労使協定で対象外にできた入社6か月未満の労働者も介護休暇の対象に含めることが義務化され、より幅広い層が制度を利用できるように改正されています。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
2026年に介護休暇の有給化はある?

2025年の育児・介護休業法改正では介護休暇の変更もありますが、休暇の有給化はどうなるのでしょうか?
ここでは、2026年以降の介護休暇の動向について解説します。
■法律で義務化される予定はなし
2025年の法改正に介護休暇を有給とする案は示されておらず、将来的な有給化も公的には予定されていません。介護休暇は家族の通院付き添いや日常的な介護を支援するための制度ですが、法令上は「無給」が原則とされています。
政府が公表している制度見直し内容にも、有給化に関する検討項目は含まれていません。そのため、今後も無給が原則という枠組みが続く見通しです。
■有給にするかは企業の裁量
介護休暇を有給として取り扱うかどうかは、企業ごとの判断に委ねられています。独自に有給扱いにしたり、手当を支給したりする企業も一部にはありますが、制度として一律に保障されているわけではありません。
現状では、介護と仕事の両立を支えるための仕組みは整いつつあるものの、経済的な負担を補う制度は企業ごとの差が大きいのが実情です。
■有給休暇との併用は可能
法律上は無給が原則ですが、必要に応じて年次有給休暇と併用することは可能です。たとえば、介護休暇の日数が足りない場合や収入を確保したい場合、同じ介護を理由とした休みであっても、有給休暇として取得することに問題はありません。
取得目的による制限もなく、通常の有給休暇と同じ扱いで申請できます。ただし、介護休暇と年次有給休暇は別制度のため、会社への申請方法や必要書類が異なる場合がある点に注意が必要です。
介護休暇を有給化する会社のメリット

介護休暇の有給化は義務ではありませんが、有給として扱うことで企業・従業員の双方にさまざまなメリットが生まれます。
従業員は収入を気にせず介護に専念でき、企業側にとっても人材の定着率向上につながり、結果として生産性の向上や企業イメージの向上にもつながります。有給化はコストがかかる一方で、長期的には組織全体の安定にもプラスとなる制度といえるでしょう。
ここでは、まず会社側のメリットを詳しくご紹介します。
■介護休暇の使用率が増える
介護休暇を有給化する会社側のメリットは、介護休暇の利用率が大幅に高まることです。介護休暇は無給が原則のため、取得をためらう従業員は少なくありません。
特に、介護が長期にわたるケースでは、数日の休暇であっても収入減を気にして利用を控える傾向があります。これを有給化することで、従業員が経済的な不安を抱えずに制度を活用でき、結果として必要なときに無理なく休める環境が整います。
■離職防止・定着率向上につながる
介護休暇を有給化すると、従業員は経済的な不安なく休暇を取得できるため、介護と仕事を両立しやすくなります。その結果、介護による離職を防ぎ、職場で長く働ける環境が整います。
また、制度を活用しやすい職場であることが社内外に認知されることで、従業員の満足度や安心感が高まり、定着率の向上にもつながるでしょう。人材確保を実現し、安定した組織運営が期待できます。
■助成金を利用できる
介護休暇の有給化に際しては、助成金の利用が可能です。国が運営する両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)では、介護休業・介護両立支援制度の導入・利用促進を行った企業に対し、助成金を支給しています。介護休業の取得支援や計画作成、制度の社内周知などの取り組みに応じて、助成金を受け取れる仕組みです。
助成金を活用することで、企業は人件費の負担を軽減しながら制度整備や従業員への支援を進められる点がメリットです。
また、独自の助成金を設けている自治体も少なくありません。たとえば、東京都では「介護休業取得応援奨励金」を設け、法定以上の介護休暇制度整備や取得促進に対して奨励金を支給しています。
地域の自治体がどのような助成金を設けているか、確認してみるとよいでしょう。
参考:厚生労働省「両立支援等助成金」
介護休暇を有給化する従業員のメリット

介護休暇を有給化することで、従業員は介護と仕事を無理なく両立でき、ワークライフバランスが向上します。また、有給休暇を介護のために消化する必要がなくなる点も大きなメリットです。
有給化による従業員のメリットをみていきましょう。
■ワークライフバランスが向上する
介護休暇を有給化すると、従業員は収入を気にせず必要なときに休暇を取得できるため、仕事と介護の両立がしやすくなります。
その結果、心身の負担が軽減され、ワークライフバランスが整いやすくなることがメリットです。従業員の生活の質が高まり、長期的な働きやすさにつながります。
■有給休暇を本来の目的で使用できる
介護休暇の有給化により、従業員は本来の有給休暇を介護以外の目的で自由に使えるようになることもメリットです。冠婚葬祭や旅行、体調不良など、個人の生活に応じた休暇取得がしやすくなります。
有給で介護休暇を取得できることで、有給休暇を温存でき、長期休暇や計画的な休暇も取りやすくなります。生活の充実や安心感を高める効果が期待できるでしょう。
介護休暇の取得は「出勤日」にカウントされる?

介護休暇を取得した場合、その日が「出勤日」として扱われるのかどうかは、勤怠管理や賞与計算、各種手当に影響します。
ここでは、有給休暇の出勤率や賞与・人事評価の決定において、介護休暇が出勤日にカウントされるかどうかをみていきましょう。
■年次有給休暇の出勤率
介護休暇を取得した日は、年次有給休暇の付与日数を決める際に必要となる「出勤率」の計算上、「出勤日」として扱われます。これは、育児・介護休業法により、介護休暇を取得した従業員が不利にならないよう保護するための取り扱いです。
本来、出勤率は「所定労働日に実際に働いた日数」で算出しますが、介護休暇は労働者のやむを得ない事情に対応する制度として位置付けられているため、欠勤扱いとせず、出勤日としてカウントされます。
その結果、介護休暇を取得しても出勤率が下がる心配がなく、年次有給休暇の付与日数に影響を与えません。従業員は休暇制度の面で不利益を受けることなく、安心して介護に専念できます。
■賞与・人事評価の決定
介護休暇を取得した日の扱いは、賞与や人事評価の決定にも関係します。法律上、介護休暇の取得を理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されており、休暇を取ったこと自体をマイナス評価にすることはできません。
ただし、賞与や評価は企業ごとの制度に基づいて決定されるため、「勤務実績」「成果」「出勤日数」などの評価項目がどのように扱われるかは就業規則により異なります。
一般的には、介護休暇は労働者の正当な権利として位置付けられているため、欠勤として扱わないケースが多いでしょう。休暇取得を理由に賞与額が減るような運用は、できるだけ避けるべきとされています。
ただし、賞与が「出勤率」「実働時間」を基準に算定されている企業では、介護休暇をどのようにカウントするか明示されている場合もあります。
いずれにしても、企業は従業員が不利益を受けないよう透明性のある基準で運用することが求められるでしょう。
介護休暇の有給化は会社の判断に委ねられる

介護休暇は、家族を介護する従業員を支援する重要な制度ですが、休暇は無給が原則です。2026年以降も、法律による有給化の予定はありません。
ただし、有給化を自主的に導入する企業も増えており、取得率の増加や働きやすい環境づくりを促す取り組みとして注目が高まっています。
制度の周知徹底や取得しやすい環境づくりとともに、有給化を導入することで、従業員は介護休暇をとりやすくなり、企業は離職防止や働きやすい環境の整備につなげられるでしょう。
構成/須田 望







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