ビジネスで「煮詰まる」という言葉を「時間ばかり経過し、新たな展開が見込めない」という意味で使うことがあります。この使い方は間違っているとはいえませんが、本来の意味ではありません。元々「煮詰まる」とはどのような意味の言葉なのか、また、誤解を避けるためにどのように言い換えられるのか解説します。
目次
「会議が煮詰まる」「議論が煮詰まった」という言葉をどのような意味で使っていますか?本来は「議論が十分になされて解決に近づいた」というポジティブな意味ですが、近年では「時間ばかり経過し、新たな展開が見込めない」というネガティブな意味で使われることが増えてきました。
「煮詰まる」の本来の意味やビジネスでの使い方、また、誤解を招かないための言い換え表現などをご紹介します。ぜひ参考にしてください。
「煮詰まる」の意味

「煮詰まる」という言葉には、次の3つの意味があります。
- 煮えて水分がなくなる
- 結論が出る段階に近づく
- 結論が出せない状態になる
いずれも正しい使われ方ですが、3は1950年代頃に使用されるようになり、2000年前後から広まった使われ方とされています。それぞれどのように使うのか、例文を通して見ていきましょう。
参考:デジタル大辞泉
■意味1.煮えて水分がなくなる
鍋を長時間火にかけていると、水分がなくなり、味付けが濃くなってしまうことがあります。例えば、次のように使います。
- 鍋を火にかけたまま電話をしていたら、スープが煮詰まって飴色になってしまった。
- 一度煮詰まってしまったお味噌汁は、どう工夫してもおいしくない。
意図的に水分がなくなるまで煮ることは「煮詰める」と表現します。
- 5分ほど煮詰めれば完成です。
- 庭で採れたイチゴを煮詰めてジャムを作りました。
「煮詰まる」は自然に水気が減って良い感じに味が濃くなったときにも使われますが、失敗した場合や味に問題がある場合にも使われます。
■意味2.結論が出る段階に近づく
討議や検討が十分になされて、結論が出る段階に近づくことを「煮詰まる」と表現することがあります。水気が適度に減って料理が完成に近づくのと同様、「結論」という完成に近づいた状態です。
- 問題が煮詰まってきたため、あと10分もあれば結論が出るだろう。
- 会議がなかなか煮詰まらず、今日中に終わりそうもない。
本来の「煮詰まる」は、「結論に近づく」というポジティブな意味です。しかし、近年では、「行き詰まって結論が出せない」といったネガティブな意味で使われるケースが増えてきました。
■意味3.結論が出せない状態になる
「煮詰まる」は、行き詰まって結論が出せないときに使われることもあります。
- 話し合いが煮詰まり、堂々巡りになった。
- この議題に関しては煮詰まっているので、これ以上話しても無駄だ。
2008年3月に実施された「国語に関する世論調査」によれば、「煮詰まる」を本来の意味である2と解釈している方は56.7%、3と解釈している方は37.3%、2と3の両方と考えている方は1.2%でした。
また、世代によっても異なります。20代・30代では約7割が3の意味で使っていますが、50代・60代では7割超の方が2の意味で使っていました。調査を実施してから年数が経っているため、現在では多くの50代以上の方も3の意味で使っていると考えられます。
参考:文化庁「平成19年度「国語に関する世論調査」の結果について」
誤解なく伝えるために使いたい「煮詰まる」以外の言葉

「煮詰まる」は日常会話でも使われる口語的な表現ですが、「結論に近づく」と「結論が出ない」の正反対の意味を持つため注意が必要です。正確に意味を伝えるためにも、別の言葉で言い換えられるようにしておきましょう。
■結論が近づいたときに使える表現
「結論が近づく」という本来の意味で使うときは、次の言葉で言い換えられるかもしれません。
- まとまる
- 終局に向かう
- 結論が出る
それぞれの使い方を例文を通してご紹介します。ニュアンスや使うシチュエーションの違いなどをチェックしてみてください。
まとまる
ばらばらのものが一つの塊になることを「まとまる」と表現します。
- グループの意見が一つにまとまった。
- 話し合いがまとまったので、レポートに結論を書いた。
意見や議論などにも使われますが、実際の物を一つにするときにも使われます。
終局に向かう
物事の結末がつくことを「終局」といいます。結末に近づくときは、「終局に向かう」と表現できます。
- 話し合いが終局に向かった。
- そろそろ終局に向かう時間だ。
少し堅い表現のため、書き言葉で使われることが一般的です。
結論が出る
最終的な判断を下すという意味で「結論が出る」と表現することがあります。
- 長く話し合っているのだから、そろそろ結論が出るだろう。
- 結論が出たけれども、私はまだ納得できていない。
「結論」は平易な言葉のため、「結論が出る」「結論を出す」も日常的に使われます。
■結論が出せないときに使える表現
比較的若い世代では、結論が出せないときに「煮詰まる」という言葉を使う傾向にあります。しかし、「煮詰まる」をどのように解釈しているかは個人差があるため、次の言葉で言い換えるほうが正確に意味を伝えられるでしょう。
- 行き詰まる
- 突き当たる
- 壁にぶつかる
それぞれの使い方をご紹介します。
行き詰まる
「行き詰まる」は物事がうまく進まなくなることを指します。
- 話し合いが行き詰まったので、とりあえず休憩をしよう。
- 行き詰まりを感じたため、話し合いを打ち切った。
「煮詰まる」の言い換えにもしばしば用いられます。
突き当たる
「突き当たる」は、それより先に進めないところに行きつくことを指します。
- うまく話が進んでいるように見えたが、壁に突き当たって動けなくなっている。
- 問題に突き当たってから、打開策が見えない。
「行き詰まる」よりも具体的な問題が見えているときに使われる傾向にあります。
壁にぶつかる
「壁にぶつかる」は、「壁に突き当たる」と同じ意味で使われます。
- 壁にぶつかり、議論が進まない。
- 夏から始めた研究が、壁にぶつかっている。
比喩的な意味ではなく実際の「壁」にぶつかったときにも使います。
「煮詰まる」は正反対の意味に解釈される恐れあり

「煮詰まる」は正反対の意味に解釈される可能性がある言葉です。世代によっても理解している意味が異なるため、大切な局面では使用しないほうがよいかもしれません。ご紹介した言い換え表現などを活用して、正確に意味を伝えるようにしましょう。
構成/林 泉







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