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「ひざに座れ」発言でも懲戒解雇は無効に!?セクハラ裁判が驚きの判決となった理由

2025.12.18

こんにちは。弁護士の林 孝匡です。宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。

今回はセクハラ事件です。

宴会で上司がセクハラ暴君になりました。

部下の女性に対して

「私のひざに座ってビールを注いでくれないか」
「胸が大きいね、何カップかな」
「犯すぞ」などと発言した事件です。

会社はこの上司を懲戒解雇にしました。すると上司は「懲戒解雇は無効だ」と訴訟を提起。

しかし、懲戒解雇は無効となりました。女性からすれば「何でよ!こんなキモい上司の下で働けないわ!」ですよね。でも裁判所は懲戒解雇をOKと判断するにはチョー慎重なんです。

※ 実際の判決を基に構成
※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換
※ 争いを一部抜粋して簡略化

登場人物

会社は電動機器の販売などを行っていました。従業員は約140人。セクハラ上司は東京支店の支店長。セクハラ被害に遭った女性社員は約6名です。

宴会でのセクハラ

12月のこと。東京支店で慰安旅行が開催されました(40人が参加)。1泊2日の温泉旅行でした。

夜の宴会は午後6時30分ごろから始まりました。宴会場はよくある温泉のヤツです。舞台があるような宴会場をイメージしてください。そこに13人くらいが座れる細長のテーブルが3つ置かれていました。

席はクジ引きで決めることに。「神さま!支店長の近くだけはイヤ!」という女性社員の祈りが聞こえてきますね。この宴会で支店長が暴君になりました。暴君のセクハラは以下のとおりです。

▼女性社員Bに対して

支店長は、隣に座っていたBさんの指を触り、手を握りました。Bさんは「困ったな……」と思ったようですが拒絶はしませんでした。支店のトップですもんね。ヤメてください!とか言っちゃうと角がたっちゃうし。

実際そのように認定されています。「キモイけどまぁガマンしてやるか」「それ以上になるとわかってるよなオッサン」ってところですね。

さらに支店長は、写真撮影する時にBさんの肩を抱きました。Bさんに対して「2人で温泉に行かないか」「新幹線で一緒に帰ろう」と言いましたが、「いや、結構です」と断られています。ドンマイ。

▼ 女性社員Cに対して

Cさんはその年に入社した新人です。支店長へお酌をしに行ったんですが、空いてる席がなかったんです。すると支店長は「私のひざに座って注いでくれ」みたいなことを……2~3回も言いました。しつこっ。

仕方なくCさんは支店長の片ひざに触れるか触れないかの中腰の姿勢でビールを注ぎました。この空気イスはカナリ辛かったでしょう。その時支店長YはCさんに対して「何も子供ができるわけではないんだぞ」とキモイ発言を。

(この時、Cさんは浴衣ではなくジーンズを穿いていました。温泉旅行の宴会にジーンズを穿いて参加するってことは、女性社員の間でセクハラ警報が出ていたんでしょうね。だって ↓ )

▼女性社員Dに対して

Dさんも私服で参加しています。支店長は、歩いていたDさんを呼び止めました。うわっ……きた……って感じですね。支店長は自分のナナメ前に座らせました。そして以下のセクハラ発言を浴びせました。

「最近キレイになったが、恋をしてるんか」
「胸が大きいね,何カップかな」

胸の大きさを測るような動作も。

「胸が大きいことはいいことやろ」
「この中の男性陣で誰を選ぶか」
「私も現役だが、私もどうか」
「男性が女性を抱きたいと思うように、女性も男性に抱かれたい時があるやろ」

などと発言。

そして時は流れ、中締めの時間となりました。お次はそこに残らされた?女性社員に対してのセクハラです。

▼女性社員K・Hに対して

Kさんが後輩で、Hさんが先輩です。まずは後輩のKさんが被害に遭ってしまいます。支店長は宴会場に残ったメンバーを色々を呼び寄せました。Kさんは男性社員6人に囲まれる形となりました。そこで支店長はKさんに対して以下のセクハラ発言を浴びせました。

「色っぽくなったなぁ」
「ワンピースの中のパンツが見えそうだが、俺は見えても全然かまわない」
「この中で好みの男性は誰か」
「俺は金も地位もあるが 、どうか」

どうもこうも今すぐこの世から消えてほしいのですが、Kさんは返事をすることができず「ノーコメントです」と言いました。

Kさんは逃げたくて、近くにいる先輩のHさんに声をかけました。Hさんはメチャ優しいです。

「Kちゃん帰ろう」と声をかけ「こっちへおいで」というような仕草をしました。すると支店長YはHさんに対して「ババアは関係ない。帰れ」と爆弾発言。

イライラした支店長は後輩Kさんに対して「誰がタイプか。これだけ男がいるのに。答えないのであれば犯すぞ」という趣旨の発言を浴びせました。Kさんは傷つき、悔しい気持ちでいっぱいになりました(判決で認定されています)。

▼セクハラ上司はシラをきる

裁判で支店長は「上記のような発言はしていません」とシラを切りました。しかし裁判所は「いやいや無理無理。証人がいるんですよ。証人がウソをつくとは考え難い」と一蹴。

今回は女性社員の味方をしてくれる証人がいたので助かりましたが、証言を得られないことがあります。たとえばセクハラ上司やその取り巻きに囲まれた飲み会です。彼らは裁判になると必ずシラを切ります。「記憶にございません」のオンパレード。政治家とセクハラ上司は裁判になると記憶喪失になるんです。

なのでセクハラ宴会になりそうな時はスマホを録音状態にしたまま挑みましょう。録音は最強です。

日常でのセクハラ

お次は日常でのセクハラです。ザッと箇条書きします。

▼ 女性社員Eさんに対して

・お尻をポーンと叩く
・食事会で、手を握る・肩に手を回す
・「自分は胸の大きい女性が好みである」
・「(キミは)胸が小さいので好みのタイプではない」

▼女性社員Bさんに対して

・宴会などで、手に触れる
・「まだ結婚しないのか」
・「胸がない」「胸が小さい」
・2人で食事に行った際に「俺のことをどう思う」

スピーディーな懲戒解雇

被害を受けた女性社員たちが会社に被害を申告しました。その後、手続きを経て、会社は支店長を懲戒解雇にしました。以下の就業規則に基づく懲戒解雇です。


就業規則 53条
従業員が下記各号の一に該当したときは、諭旨解雇または懲戒解雇の懲戒を行う。~
6号 職務、職位を悪用したセクシャルハラスメントにあたる行為をした者


会社はコンプライアンスに力を入れていたようで、宴会の日から26日後に懲戒解雇にされてます。そこで支店長は「懲戒解雇は違法だ」として訴訟を提起しました。

Author
「ムズイ法律を、おもしろく」がモットー。 YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO

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