コロナ禍を経て浸透したフレックスや在宅勤務に加え、近年では「育児休業制度の取得促進」や「定年延長」などさまざまな働き方や働きがいを重視する動きが広がっている。
チューリッヒ生命保険はこのほど、全国1,000人のビジネスパーソンを対象に、今年で8回目となる「ストレスと働き方に関する調査」を実施し、その結果を発表した。
ビジネスパーソンのストレスの要因第1位は、5回連続で「給与・賞与(金銭面)」
普段、仕事上で最もストレスを感じる要因について聞いたところ、最も多かったのは「給与・賞与(金銭面)」(23.1%)で、経済的な不安が5回連続で1位という結果になった。次に多かったのは「仕事内容」(17.6%)で、「上司・部下以外の社内の人間関係」(15.9%)、「上司との関係」(10.7%)となった。
物価高が続く一方で賃金上昇が追いつかない現状を背景に、日々の生活費の負担増や将来への不安、さらには「貯蓄が思うようにできない」といった声が広がっている。こうした経済環境が、多くのビジネスパーソンのストレスや悩みになっていることが明らかになった。
年代によって仕事のやりがいは異なる。20代から50代までの全世代で「給与・賞与」が最多
仕事をする上で、最もやりがいを感じる場面について聞いたところ、最も多かったのは「給与・賞与をもらったとき」(25.5%)、次に多かったのは「感謝をされたとき」(12.0%)となった。
年代別に見ると、全世代共通で最も多かったのは「給与・賞与をもらったとき」となった。次に多かったのは、20代が「興味のある仕事をしているとき」(10.0%)、50代は「感謝をされたとき」(16.0%)と、年代によって仕事のやりがいが異なることが明らかになった。
今年は全世代の1位が共通だったが、昨年は50代で最も多かったのは「感謝をされたとき」だった。日本での物価高や生活への不安が今回の調査結果に表れていることがわかる。
ストレスにより精神面の不調や不安を感じることがあるか聞いたところ、「とても感じている」(13.9%)、「やや感じている」(29.0%)、「どちらともいえない」(28.9%)、「あまり感じていない」(17.2%)、「全く感じていない」(11.0%)となった。
ストレスにより精神面の不調や不安を感じる人(「とても感じている」「やや感じている」)の合計が42.9%と4割以上占め、ビジネスパーソンが日々ストレスと隣り合わせであるという結果となった。
ストレスにより精神面の不調や不安を感じていると回答した人に、なぜ精神面の不調や不安を感じていると思うか聞いたところ、トップ3は「職場での人間関係によるストレス」(44.5%)、「仕事の負担感によるストレス」(41.3%)、「経済面の不安によるストレス」(36.8%)となった。
フルリモートとフル出社の二極化
一週間の平均在宅勤務日数を聞いたところ、「0日(フル出社)」(63.4%)が6割以上を占め、次いで「週5日」(14.7%)となった。在宅勤務の企業と、フル出社の企業と、二極化してきたと言える。
有給休暇で行ったことを聞いたところ、トップ3は「ゆっくり過ごす」(51.8%)、「国内旅行」(37.2%)、「家のことをする(掃除や洗濯など)」(31.3%)となった。
希望する定年退職年齢「65歳」が27.5%で最多
希望する定年退職の年齢を聞いたところ、「65歳」(27.5%)が最も多く、「60歳」(15.3%)を超える結果となった。「65歳」「66歳~69歳」「70歳以上」と回答した人を合計すると41.8%となり、人生100年時代と言われる中、年齢を重ねても働きたい意欲がある方が一定数いることがわかった。
希望理由に関する自由回答では、「年金だけでは暮らせない」「満額年金をもらうため」「生活費や住宅ローンが残っているので働かざるを得ない」といった声が多く寄せられた。
物価高が続く一方で賃金上昇が追いつかない現状もあり、年金や老後資金に対する不安が、定年を延ばしてでも働き続けたいという意識を後押ししている様子がうかがえる。一方で、「体力の限界だから」「早く退職して第二の人生を楽しみたい」といった声もあり、経済的不安からの就労延長と、心身の健康や余暇を重視した早期リタイアの二極化が進んでいることが明らかになった。
男性の約5人に1人が育休の取得経験あり
既婚者に絞ると、男性でも約18%が育休の取得経験があった。一方で女性は約37%で、依然として男女差があるようだ。取得期間の内訳をみると、男性は短期(1か月未満)中心で、女性は中~長期(6か月以上)取得者が多い結果となった。
「職場は育休を取りやすい雰囲気か」と聞いたところ、「職場には育休が取りにくい雰囲気がある」と感じている人は24.5%にとどまり、「取りにくい雰囲気は全くない」と答えた人が29.3%と上回った。
また、「よく一緒に仕事をしている人に、正直育休をとってほしくない」と答えた人は17.3%にとどまる一方で、「周囲の人にどんどん育休をとってほしい」と肯定的に捉える人が32.7%となった。これらの結果から、依然として一定数の抵抗感は残るものの、職場や周囲の理解は広がりつつあることがうかがえる。
「もし自分が育休を取れる立場ならどのくらい取得したいと思うか」と聞いたところ、育休取得に対して「1カ月以上取りたい」と考える人は44.1%に上り、取得意欲自体は一定程度高いことがわかった。
しかし一方で、実際の職場環境に当てはめると「現実的には育休取得は難しい」と感じている人が30.2%に達しており、意欲と現実の間に大きなギャップが存在している。この結果から、育休を取得しやすい制度や職場環境づくりの必要性が改めて浮き彫りになっている。
育休取得経験者への「取得前や取得後の経験」に関する調査では、「仕事復帰が不安だった」(27.3%)が最も多く、次いで「特にない」(20.1%)、「今後の働き方を見直した」(18.0%)、「復職後にギャップがあった」(17.3%)、「身体的・精神的に休養できた」(16.5%)といった声が挙がった。
前向きな効果として「育児スキルの向上」「パートナーとの関係改善」なども一定数みられる一方で、仕事復帰やキャリアへの不安を抱える人も少なくなく、育休取得後の支援体制の重要性が明らかになった。
最後に、「ウェルビーイング」という言葉の認知状況についての調査結果だ。「ウェルビーイング」とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を意味する言葉で、全体の認知率は56.8%となった。
特に、ハイブリッド勤務層(78.9%)や育休取得経験者(77.7%)では認知率が高く、柔軟な働き方や家庭との両立を経験した人ほど、自身の心身の健康や生活の質を意識する傾向が強いことがうかがえる。
経済的不安や仕事上のストレスを抱える人が多い中でも、「自分らしく働く」「心の豊かさを大切にする」といった価値観が広がりつつあり、ビジネスパーソンの“働く幸せ”に対する意識が着実に変化している様子が見て取れる。
<調査概要>
1.調査の方法:株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用しWEBアンケート方式で実施
2.調査の対象:アイリサーチ登録モニターのうち、全国の20歳~59歳の有職者を対象に実施
3.有効回答数:1,000人(20代・30代・40代・50代、男女:各125人)
4.調査実施日:2025年8月20日(水)~2025年8月22日(金)
出典元:チューリッヒ生命保険株式会社
構成/こじへい







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