取扱説明書から茶色の紙片をちぎり「アレ」をつくる!?
『ふんばり~ぬ』ではフィギュアだけではなく、同梱している取扱説明書に2つの仕掛けを施した。白い紙に黒色で印刷されるのが一般的なところを茶色で印刷したことと、ミシン目で切り離せる茶色の紙片をつけたことだ。
茶色の紙片は4枚あるが、これはユーザーが自ら丸めて「うんち」をつくるために用意したもの。色も取扱説明書の解説文や写真のところより濃くなっている。
社内で提案した時、「うんちのフィギュアをおまけでつければいいのでは?」という意見が多く聞かれたが、「絶対ダメ!」と譲らなかった。森田氏はこのように振り返る。
「商品を企画する上で大切にしているのが『体験』です。茶色い紙片でお客様にうんちをつくってもらい、SNSに画像をアップしてもらうことを見据えて企画しました。お客様がうんちをつくることで『ふんばり~ぬ』が完成するというのが楽しいのであって、最初からフィギュアのうんちをつけたら笑いに振りすぎた品のないものになってしまいかねません。踏ん張っている犬のフィギュアだけではなく、踏ん張った結果生まれるうんちをお客様につくってもらう体験もセットで提供したかったので、信じて任せてほしいとお願いしてやらせてもらいました」
初回生産分が発売から数週間で完売
うんちをつくるという今までにないギミックを採用したことに販売問屋も「面白い」と評価。好意的な反応を示してくれたが、このギミックを採用していることがわかるようにしてほしいと多く要望されたことから、ガチャマシンの前面に差し込む台紙でそれを告知することにした。
初回生産分は発売から数週間でほぼ完売。メーカーオリジナルの商品では異例の再生産を実施し、2025年5月に再販売したが、再販分も同じぐらいのペースでほぼ完売となった。
「現在は手に入れたくても手に入らない状態です。『ふんばり~ぬ2』が発売になった時、まだ『ふんばり~ぬ』が手に入っていないという声も挙がりました。手に入れたくても手に入らないので、悶々としている人は多いと思われます」と話す森田氏。こういう現状を反映してか、Xでは欲しい犬種を手に入れるために交換をお願いするポストが多く見られるほどだ。
32万個を出荷した『ふんばり~ぬ2』
第2弾となる『ふんばり~ぬ2』は人気の高いチワワ(ブラックタン/クリーム)のほか、ビションフリーゼ、ゴールデンレトリバー、パグ、シークレットの計6種。ガチャマシンに差し込む台紙は商品をセットする現場担当者が選べるよう、写真映えするビションフリーゼとパグを表と裏の両面に印刷した。
つくりにくい毛量の多い犬種は、『ふんばり~ぬ2』でビションフリーゼが該当。ゴールデンレトリバーも毛の長さを間違えるとラブラドールレトリバーに見えてしまうことから、毛並みのところで細かい調整を繰り返した。
逆に短期間でできたのがパグ。原型は最初につくったものでOKになったほどだった。「切なそうな表情を含めて、初回でものすごくいい原型ができました」と森田氏は話す。
再生産した分もほぼ完売になるほど『ふんばり~ぬ』の売れ行きが非常に良かったことから、『ふんばり~ぬ2』は32万個の出荷を記録。さらに、2026年3月に『ふんばり~ぬ3』の発売が決定しており、すでに受注活動が行なわれている。
『ふんばり~ぬ』の売れ行きの良さから、森田氏は次のことがわかったという。
「過去の商品の傾向から、猫好きな人は猫ならすべて好きで、犬好きの人は自分が飼っている犬だけ好きで可愛がるイメージがあったので、ラインアップされている犬種を飼われていない方にはお買い上げいただけないのではないかという懸念がありました。しかし『ふんばり~ぬ』が非常に売れたことで、自分が飼っている犬種だけではなく犬種問わずかわいがってくれることがわかりました。おそらくSNSなどの普及によりいろんな種類の犬を日常的に見る機会が増えたことが要因なのではないかと考えています」
取材からわかった『ふんばり~ぬ』のヒット要因3
1.説明不要の面白さ
犬が踏ん張っている姿は、わざわざ説明するまでもなくうんちをしていることをイメージさせる。国や文化、言葉を飛び越えて誰にでも伝わる面白さがあり、多くの人を魅了した。
2.リアリティーの追求
犬が踏ん張る姿勢をとることは生きている証そのもの。そこには笑いの要素が入る隙はなく、姿形と表情にリアリティーを追求した。面白さのある小さな動物フィギュアではあるが、リアリティーを追求したことで集めて飾って置いておきたくなるものにできた。
3.新しい楽しみ方の提案
取扱説明書から茶色の紙片をちぎり、丸めてうんちをつくり踏ん張っている犬のお尻付近に置く。うんちをフィギュアとして用意せず、ひと手間かけさせ仕上げる楽しみ方はこれまでのカプセルトイになかった。この体験の提供が支持され、カプセルトイの新たな楽しみ方として受け入れられた。
同社には、まだフィギュア化されていない犬種のリクエストが多く届いているという。販売面の好調さをこのまま継続できれば第4弾以降の展開もあり得るので、踏ん張る犬のフィギュアがこれから続々と誕生するかもしれない。
『ふんばり~ぬ』の面白さがもっと広がっていけば、IP化の可能性も拓かれ、フィギュアの枠に収まらない商品展開も考えられる。大化けする夢のような展開を見てみたい。
取材・文/大沢裕司
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