近年、若者の留学、海外離れが進んでいる。SHIBUYA109 lab.の調査によれば、15~24歳のZ世代の57.5%は海外留学の意向がないことがわかった。
また長期留学は2004年の約8万人をピークに減少の一途をたどっており、2009年頃からは5~6万人に減少している(出典:文部科学省)。
今後、日本の国際競争力が低下する懸念も指摘されている。今後、ビジネスパーソンは積極的にグローバルキャリアを確立する必要があるだろう。しかし物価高の影響もあり、留学熱が失われているのは事実だ。
今回は、グローバル人材教育事業や日本語教育事業などを行う会社を傘下に持つパスメイクホールディングス株式会社 代表取締役社長 宇坂純氏に、国内でグローバルキャリアを確立する方法を、自身の留学や資格取得経験と共に聞いた。
若者の留学離れと日本の国際競争力低下の現状とリスク
まずは若者の留学離れと日本の国際競争力低下の現状とリスクについて、宇坂氏に意見を聞いた。
【取材協力】
宇坂 純氏
パスメイクホールディングス株式会社 代表取締役
株式会社アビタス 代表取締役
東北大学卒業後、株式会社ベネッセコーポレーション入社。国際教育事業部門を経てミシガン大学ビジネススクールでMBAを取得。米国企業社長、ベルリッツジャパン株式会社取締役を経て、パスメイクグループに参画
「若者の留学離れは一般論として正しいと思います。原因はさまざまですが、円安で高騰する留学費用、治安などの安全面、語学力への不安などが挙げられると思います。
ただし、長期留学が減少している一方で短期留学は増えていますので、留学の小粒化や多様化が進んでいるのだと思います」
日本の国際競争力が低下するリスク
「各種調査で、日本の国際競争力の低下が知られており、グローバルな変化への対応力の低下はその要因の一つです。
今後、若者の留学離れが続いていけば、グローバルに渡り合える人材が目減りするリスクがより高まっていくのは事実だと思います。
そうなれば、国籍を問わず人間関係を築く力や理解力、寛容さ、そして外から客観的に日本を見ることができるスキルを培いにくくなるでしょう。
留学で学び得るのは、学問だけではありません。むしろ体験から得られることのほうが大事だと思います。
私は米国留学中に出会った家族との交流を通して、人の感じる幸せというのはどの国でも同じなのだと実感しました。このようなことは、現地で生活しないとわからないものです」
MBAはグローバルキャリアのパスポート
国際競争力低下を少しでも食い止めるには、ビジネスパーソンが積極的にグローバルキャリアへ一歩を踏み出すことも必要だ。
宇坂氏によれば、グローバルキャリアを築いていくには“パスポート”が必要だという。
「グローバルに通用するキャリアを築いていこうとするならば、共通言語としての知識やスキルセットなど、必要最低限の力をつけていく必要があります。
外国に入国するにはパスポートが必要であるように、学位や国際資格などパスポートにあたるもの取得することが肝要です。
私はベネッセの国際教育事業部門にいた際に海外プロジェクトを担当しましたが、その中でMBA保持者の方と関わり、一緒に仕事をしました。その経験を通して、グローバルに活躍できるビジネスパーソンの共通言語として、MBA取得の必要性を実感しました。
将来、自分の活躍できるフィールドが大きく広がると直感したのです。そこでMBA取得のため米国への留学を決意しました」
国内でグローバルキャリアを確立するには?「オンライン教育」フル活用のすすめ
昨今の物価高や円安で留学費用は高騰しており、MBA留学はハードルが高いこともあるだろう。
そんな今、宇坂氏は国内でグローバルキャリアを確立する効果的な方法があると話す。
「オンライン教育をフル活用することです。今は国内にいても、米国のMBAをオンラインで取得できる時代です。
実はMBAは、本場の米国内でもオンラインで受講している人が全体の6割近くを占めており、コロナ禍を契機にこの傾向が加速しました。
オンライン教育を活用すれば、日本にいながらグローバルに通用するスキルを身につけられます。
例えば、私が代表を務めるアビタスが提携しているマサチューセッツ州立大学ローウェル校のMBAは、日本で唯一、国際認証を得ている米国州立大学のMBAを完全オンラインで取得できます。
私は現地に留学してMBAを取得しましたが、グローバルリーダーに必要なその後の学びは、オンラインを徹底活用して行ってきました。
そこで幹部メンバーを育成するスキルを身につけるために、国際コーチング連盟(ICF)のコーチング資格を、1年半ほどのオンラインスクーリングを経て取得しました。
また、最近の経営戦略に欠かせないAIについては、米国ハーバード大学のオンライン講座を日本で受講して学びました」
グローバルキャリアはむずかしいと考える人へ
ビジネスパーソンの中には、グローバルキャリアに興味はあっても、現実的にはむずかしいと感じている人も多いのではないだろうか。そのような人に向けメッセージをもらった。
「グローバル人材は『心の持ちよう』です。なろうと思った瞬間からその道が開けるのだと思います。
かつては、一部の人だけが留学をして海外MBAを取得するイメージがありましたが、今では生成AIのようなテクノロジーや教育のオンライン化によって、障壁が下がってきています。現代はグローバルキャリアが民主化され、多くの人が挑戦できる面白い時代になってきていると感じます。
ですので、グローバルキャリアを志す方には、ぜひ海外MBAや国際資格の取得にも挑戦をしていただきたいと思います。グローバルキャリアへのパスポートを手に入れることができれば、より多くのチャンスを掴むことが出来るはずです。その第一歩として必要なのは“決断すること”です。決断し、一歩を踏み出せば自分を取り巻く世界は変わり、グローバル人材への道が開かれていくはずです」
今回の宇坂氏の話からは、日本の国際競争力は、国内でも十分に高められる希望がわいてくる。まずはオンラインでのパスポート取得への一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
取材・文/石原亜香利
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