ファミリーマートで目にしたことがある人も多いはず。食品ロス削減のために登場した値下げシール、その名も「涙目シール」。
ファミリーマートでは2021年から、販売期限が迫った商品に「ファミマのエコ割」として値下げシールを貼る取り組みをしてきたが、今年3月、消費者の感情に訴えかける「涙目シール」のデザインに変更。
さらに、食品ロス削減の効果をファミリーマート店舗だけでなく社会全体に広げていきたいという想いから、今年10月にはフリー素材化。様々な店舗が自由にダウンロードし、使えるようになった。
大企業とはいえ、他店への無償提供にはどんな想いが込められ、そして企業としてのメリットが潜んでいるのか?
今回、株式会社ファミリーマートのサステナビリティ推進部環境推進グループに話を聞いた。
――以前の値下げシールから「涙目シール」変更に至った経緯を教えてください
「弊社では、環境に関する中長期目標「ファミマecoビジョン2050」を策定し、店舗から発生する食品廃棄物の削減目標を設定し、さまざまな取り組みを行ってきました」
「今回の涙目シールは、食品ロスの問題を想起させるようなメッセージやデザインにより、お客さまにより肯定的に値下商品を選択していただけ、さらなる食品廃棄物の削減が期待できるのではないかと考え、プロジェクトを開始した次第です」
「涙目シール」の効果は事前の実証実験で明らかだった。従来のデザインよりも購入率が5ポイント向上し、これを全国展開することで店舗で発生する食品ロスを年間約3000トン削減できる見込みに。
ちなみに「涙目シール」はプロのイラストレーターがデザインしたそうだが、こだわったポイントは?
「メッセージがより伝わりやすい「涙目」と「たすけてください」を組み合わせた点がポイントです。たとえば、「笑顔」や「食べてほしいです」はプロモーションっぽいですし、「今買ってください!」などの言葉は泣いている理由がわかりづらい」
「また、「もうすぐ捨てられちゃいますが~」は食品ロス削減という目的は明確ですが「直接的すぎる」などの意見が消費者モニターから寄せられ、最終的に涙目デザインになりました」
――お客さまの反応は?
「一部お客さまからは、『値下げされたものを買うのは恥ずかしさを感じるが、たすける、という意味があると買いやすくなる』という声をいただいております」
今年10月にフリー素材化した「涙目シール」は、約1ヶ月間で4000件を超えるダウンロード数を記録したという。
現在はおむすびやパン、肉、魚、ケーキの5種類のイラストで展開中。ダウンロードする際はファミリーマートのHPや店舗の「ファミマネットワークプリント」でも印刷ができるという。(印刷サービスは有料)
詳細は公式HPをチェックしてほしい。
ファミマが本気で挑む食品ロス削減の未来
全店舗で約5.1万tの食品廃棄物が発生していることを公式サイトで公表しているファミリーマート。販売の主軸を食料品が占めているだけに、食品ロス削減に向けた取り組みには本気さが伺える。そしてその内容もさまざま。
たとえば、サラダや惣菜。一部の商品は特殊な包装技術で容器内の空気をサラダや惣菜に適したガスに置き換えて密封。これにより消費期限が最大3日延長できるという。
また、規格外で廃棄されていた食材がファミリーマートのオリジナル商品として生まれ変わるという取り組みも。
以前、数量限定で販売された「冷凍チョコバナナ」はファミマルの「高地栽培バナナ」の規格外品を有効活用したもの。
味や品質は一切問題ないものの、見た目だけで捨てられてしまう商品は少なくない。低価格や訳あり品として売られることも多いが、ファミリーマートは新たな商品へと導き、売上というメリットとともに食品ロスも減らしている。
「冷凍チョコバナナ」の誕生により、バナナの廃棄量が約54トン(皮つきの重量で換算)削減される見込みだという。
さらに、魚をさばく際に切り落とし、切り身としては取り扱われない部分を使用した「直火で香ばしく焼き上げた銀鮭のカマ焼き」を販売。
淡路島の藻塩で味付けし、直火で香ばしく焼き上げるというこだわりの逸品には筆者もだいぶお世話になった。
また、京野菜の代表格「賀茂なす」の規格外食材を使用した商品もある。JA全農京都府本部との連携で生まれた「賀茂なすの揚げびたし」。サイズや形などを理由に規格外として扱われていたものを活用したという。
販売と製造の両側面から積極的に食品ロス削減に取り組んできたファミリーマート。
特に話題になった「涙目シール」は、その可愛らしさに加え、誰もが助けてあげたいという気持ちにさせる見事なデザインが功を奏した結果だ。
これまで、値引き商品はスーパーではよく見かけるもののコンビニではありえないと思っていた。しかしそれを実現し、消費者の心を動かす技で自然と食品ロス削減のための行動へと導いている。
今後、コンビニにおける食品ロス削減の取り組みで挑戦したいことを最後に聞いた。
「「ファミマecoビジョン2050」では店舗から発生する食品廃棄物の削減目標を設定していますが、それにとどまらず、サプライチェーン全体で食品廃棄物を削減する取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献してまいります」
取材協力
株式会社ファミリーマート
文/太田ポーシャ
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