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サステナビリティの〝コスト意識〟は変わるのか?いま企業が考えるべきこととは【PR】

2025.12.14PR

SDGs、ESG、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー……。
言葉は広まりつつあるものの、「結局、何をすればいいのかわからない」という声は依然として多い。

企業のサーキュラーエコノミー実践を支援する電通・堀田峰布子さん と、企業データからサステナビリティを評価する慶應義塾大学・保田隆明さん。“入り口”と“出口”をそれぞれ担う2人に、企業の悩み、消費者意識、そしてこれからの持続可能性のあり方を語ってもらった。

サステナビリティは「わかりにくい」?

ーーまずはお二人の自己紹介をお願いいたします

保田:慶應義塾大学総合政策学部で教授をしています。私の専門はコーポレートガバナンスや財務分析になりますが、近年、サステナビリティの取り組みは企業の業績を評価する上で欠かせない指標になっています。ESG経営やSDGsなど、企業のこうした取り組みを対外的にどのように届けていくのかといったIR活動のサポートも行っています。私は普段、企業のサステナブル戦略の”出口”にいる立場ですので、”入り口”側にいる堀田さんとの対談は楽しみにしていました。

保田隆明さん
慶應義塾大学総合政策学部教授

リーマンブラザーズ証券、UBS証券で投資銀行業務に従事した後に、SNS運営会社を起業。同社売却後、ベンチャーキャピタル、金融庁金融研究センター、小樽商科大学大学院准教授、昭和女子大学准教授、神戸大学大学院経営学研究科准教授および教授を経て、2022年4月から現職。2019年8月より2021年3月までスタンフォード大学客員研究員としてアメリカシリコンバレーに滞在し、ESGを通じた企業変革について研究。複数社の上場企業の社外取締役および監査役も兼任。主な著書に『ESG財務戦略』(ダイヤモンド社、2022年)、『地域経営のための「新」ファイナンス』(中央経済社、2021年)、『コーポレートファイナンス戦略と実践』(ダイヤモンド社、2019年)等。博士(商学)早稲田大学。1974年兵庫県生まれ。

堀田:ありがとうございます。私は現在、電通グループ内でイベント・スペースを専門とする電通ライブに所属し、事業性と社会貢献性を両立するサーキュラーエコノミービジネスの展開などを統括しています。例えば、イベントにおける資源循環率をどのように向上させるかや、サーキュラーエコノミーに対する認知や理解をどう高めるか、といった課題に対応しています。サステナビリティやサーキュラーエコノミーの取り組みをどう評価していくべきなのか、先生との対談でそのヒントが見つけられるかもと楽しみにしています。本日はよろしくお願いいたします。

堀田峰布子さん
株式会社電通ライブ
サーキュラーエコノミー統括

大手電機メーカーのプロダクトデザイナーを経て、通信事業会社でプロダクトデザイン、UX デザインを統括。その後、グローバル通信機器メーカーで日本市場に向けたプロダクトブランディングとマーケティング、PR のマネージャーに。2016 年電通入社。2025年より電通ライブに出向。サーキュラー・エコノミー領域を中心に活動中。iF Product Design Award、red dot design award、グッドデザイン賞など受賞多数。HCD-Net 認定。人間中心設計専門家、日本人間工学会認定 人間工学専門家。

――ありがとうございます。今回のテーマであるサステナビリティという言葉そのものが非常に広い印象があります。企業も「何から取り組むべきかわからない」という声が多いのですが……。

堀田:おっしゃる通りです。サステナビリティという言葉は非常に抽象的で、サーキュラーエコノミー、DEI(多様性、公平性、包括性)などさまざまな要素が複合的に絡み合っています。特に私が専門としているサーキュラーエコノミーについては、電通が昨年行った調査では認知率(「内容まで知っている」「内容は知らないが言葉だけは知っている」の合計)は、8.5%。「内容まで知っている」人はわずか2.0%でした。

近年は「持続可能性」という言葉に言い直すトレンドも生まれています。概念としては理解できるけれど、じゃあ企業は明日から何をすればいいのか?という“具体”の行動に落ちづらい。サステナビリティのどこに焦点を当てるのかわからない、あるいはサステナビリティへの取り組みとコストのバランスが取れずにジレンマに陥ってしまうケースもあります。その結果、「関心はあるが、行動が伴わない」状態が多くの企業で続いています。

保田:当初は「地球がサステナブルであるために」のようにESGにおけるE(Environment:環境)を指すことが多かったのですが、近年では、社会や企業を対象とすることも多く、企業にとってサステナビリティと言っても何にフォーカスを当てるのかはさまざまです。しかし、企業にとってのサステナビリティはメセナ活動やCSRといった社会活動の系譜にあたります。そうであるならばパナソニックの創業者・松下幸之助氏が「企業は社会の公器」と言ったように、実は日本企業には古くからサステナビリティに通ずる精神が根付いています。今はそれを、どのように発信していくかが重要になっていますね

堀田:先生のおっしゃる通りで、日本企業の中には、意識せずサステナビリティの取り組みをしているにも関わらず、その”価値化”や”発信”をできていない企業も多いです。

サステナビリティビジネスで成功するには?

――企業はサステナビリティビジネスの成功事例を知りたいと思うのですが、どのようなものがあるのでしょうか

保田:非常に難しいところですね。というのも、そもそも例えばサーキュラーエコノミーと企業の収益最大化は根本的に相入れない部分があります。企業にしてみれば新しい商品を次々に出して消費者に買い替えてもらう方が収益は上がります。”環境に良いものを買いたい”と考える消費者が9割もいれば、本気で取り組むことができるのですが、2〜3割の現状では企業にしてみれば少ないわけです。

堀田:大量生産/大量消費のビジネスモデルが完成されていますからね。このビジネスモデルをサステナビリティに合わせて、全てを一気に再構築をするのは現実的ではありません。企業としては、サステナビリティと相性の良い商品やサービスを選定し、そこから変えていく、すなわち「ポートフォリオ戦略」として取り組んでいく必要があります。

保田:いい視点だと思います。天然素材にこだわり製品を販売している企業は世界中にあります。それこそ100%天然素材というブランドも珍しくありません。こういったブランドはサステナブルに特化しているわけですから投資家からも注目されます。けれど実態は売り上げが伴っていないケースが多い。なぜかというと、こうしたブランドの製品は環境に優しくて、とても使いやすい。けれどデザインと価格が”ぼちぼち”なんですよ。

私は、この”ぼちぼち”がネックだと考えています。ナイキやアディダスといった有名ブランドも近年、石油由来素材から一部環境に配慮した素材を使い始めています。そうなると、消費者にしてみれば、当然、デザインもよく一部環境にも配慮した素材を使った一流ブランドの製品の方がいいわけです。環境のために、他の全てを妥協してもいいとは考えていないからです。消費者目線から見ても堀田さんの言うポートフォリオ戦略は理にかなっています。

堀田:はい。環境のためにすべてをトレードオフできる消費者は少ないですし、企業としてもはじめやすいと思います。

――変わるべきなのは、企業が先なのか、消費者の意識が先なのか。いかがでしょうか。

保田:これは“鶏と卵”の議論ですが、基本的には 企業が先に変わるべきだと私は考えますね。アップルは私たちが携帯電話で満足していた市場にスマートフォン市場を作ったように市場は企業が作っていかないといけません。テスラもEVの価値を”乗り心地”や”魅力”に転化するマーケティングを行なって市場を作り上げました。

消費者にとってサステナビリティはどこまで行っても「ナイス トゥー ハブ(Nice to have:なくてもよいが、あったほうがより良いもの)」でしかありません。企業も魅力ある商品の付加価値としていかに環境配慮を取り組めるかが重要だと思います。

堀田:環境にいいけどダサい、環境にいいけど高いではダメということですよね。

コストを価値に変えることができるのか

ーーやはりまだまだサステナビリティは企業にとっても消費者にとっても”コスト”の意識が強いわけですね

保田:そうですね。特に近年は物価高で消費者は環境配慮よりも一円でも安いものを購入したいという意識が高まっています。消費者にしてみればサステナビリティのような夢物語ではなく、目の前の生活をどうにかしたいわけです。企業がサステナブルを全面に押し出せば押し出すほど、消費者は反発しかねない。

堀田:景気が悪くなると環境への意識が後回しになるのは必然ですよね。ただ、その中で安くてもサステナビリティにつながる取り組みもあります。その分かりやすい例が「ラベルレス」です。

ラベル分のコストが減りつつ、環境にもいい。企業はこうした新たなサステナビリティの答えを探さなければなりません。「環境に配慮するから高くなっても仕方ないよね」という考え方は変えるべき時が来ているように思います。

保田:ええ。これからはサステナビリティを「コスト」から「価値」へと変換できるかどうかがポイントになると思います。2019年、アメリカの経済団体ビジネス・ラウンドテーブルは「ステークホルダー資本主義」に向けた声明を出しました。こうした社会の流れも企業にとっては追い風になるかもしれませんね。

堀田:はい。企業と消費者の両輪がうまく噛み合えばサステナビリティは次のステップに進めると私は信じています。

ーーありがとうございました

取材・文/峯亮佑 撮影/干川修

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