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グローバル基準でみる日本企業の「コンプライアンス体制」の成熟度と課題

2025.12.07

日本企業にとってコンプライアンス体制の成熟は、取り組むべき大きなテーマのひとつだ。コンプライアンに関連したニュースは、関心度も高く報道される機会が多く、企業にとっても対応しておきたいだろう。

ガバナンス、リスク、コンプライアンス(GRC)の分野を手掛けるNAVEXは、最新レポート『The State of Risk & Compliance in Japan(日本におけるリスクとコンプライアンスの現状)』を発表した。

この調査は、2025年4月23日から2025年5月29日にかけて、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、そのほかなど6つの主要市場で、組織内でリスクやコンプライアンス機能を担当、またはその分野に精通するビジネスプロフェッショナル999人を対象に行われた。

それによれば日本企業は、コンプライアンス体制の着実な進展はあるが、依然として課題も残っていることがわかったという。

日本のコンプライアンス成熟度はグローバル水準

今回の調査では、日本企業の回答者の49%がリスクおよびコンプライアンスプログラムを「管理段階」または「最適化段階(ガバナンス・コンプライアンス・イニシアチブのフレームワークにおける最高成熟度レベル)」と評価していた。日本でもコンプライアンス体制の整備が着実に進展しているようだが、米国の56%にはわずかに及ばないことから、今後の改善の余地もありそうだ。

調査国で内部通報ホットライン導入は最低水準

コンプライアンスの成熟度はグローバル水準に近づきつつあるが、日本企業で内部通報ホットラインを設置しているのはわずか47%で、米国(59%)や主要6か国平均(53%)と比較して最低水準だった。匿名または第三者を介した通報チャネルの導入は、依然として一般的ではなく、従業員が声を上げにくい状況は根強く残っているようだ。

過去3年間に自社がコンプライアンス問題に関連するネガティブな報道を受けたと回答した日本の回答者は20%で、米国(12%)や世界平均(14%)を上回っていた。

報復禁止ポリシー導入率は約3割で主要国を大きく下回る

日本国内で報復禁止ポリシーを明文化している組織はわずか24%で、米国(61%)や主要6か国平均(49%)を大きく下回る結果になった。従業員が安心して懸念を報告できる環境作りに関しては、依然として日本企業には課題が残されている。

ホットラインが設置されていても報復への不安から通報をためらうケースは少なくなく、従業員の信頼を高めるためにも明確なポリシーの整備やリーダーシップによる継続的な発信、透明性の高い対応プロセスの構築が必要だろう。

日本のコンプライアンス課題は「プライバシー」と「サイバーセキュリティ」

日本では、プライバシーとサイバーセキュリティに関する違反がもっとも多いコンプライアンス課題として挙げられた。いまやデータ保護は企業の信頼を左右する重要要素になっており、サイバー攻撃の高度化やクラウド・AIツールを通じたデータエコシステムの拡大で、組織が抱えるデジタルリスクは増大している。

情報セキュリティと個人データガバナンスの強化は、現在では最上位のコンプライアンス優先事項で、監視体制と従業員教育を並行して継続的に行うことが重要になっているようだ。

日本のコンプライアンス部門の38%がAI関連の意思決定に積極的に関与

急速に導入が進むAIに関しては、日本企業のコンプライアンス部門の38%がAI利用の意思決定に積極的に関与していると回答。主要6か国平均(33%)と米国平均(33%)をわずかに上回っており、AI導入が拡大するにつれて日本企業はアルゴリズムの透明性やデータガバナンス、バイアス管理にコンプライアンスを統合するための積極的な措置を講じているといえる。 AIガバナンスは、現代のリスクとコンプライアンスプログラムの重要な要素という認識が高まっているためだろう。

今回の調査を受けて、NAVEXのアンドリュー・ベイツCEOは、次のようにコメントしている。「日本の進化する内部通報者保護法は、ガバナンスとコンプライアンス文化の変革を推進しています。プログラムの成熟度は心強いものの、ホットラインや報復禁止ポリシーのような基盤となる要素の欠如は、ガバナンスインフラストラクチャと効果的なコンプライアンスプログラムへの継続的な投資が必要であることを浮き彫りにしています。

このレポートは、日本の取締役会が主要6か国の同業他社(43%)よりも高い割合(56%)でコンプライアンス経験を持つメンバーを含んでいることにも言及しており、リスク監視におけるリーダーシップの強い関与を示唆しています」

コンプライアン成熟度は高まってきた日本だが、内部通報ホットラインや報復禁止ポリシーといった施策の導入では、まだ主要国の水準には達していないことが浮き彫りになった。今後は、こういったコンプライアンスに健全に対応できるシステム作りを進めていく必要がありそうだ。

https://www.navex.com/ja-jp

構成/KUMU

30年以上暮らした東京から実家に戻った地方在住フリーライター。得意分野は、ゲーム、アニメ、マンガやIT&デジタル関連など。自宅でリモート取材や自宅作業が増えたので、20年以上ぶりにフル自作PCを作成して活用中。最近の取り組みは、実家で発掘したセガマークⅢ以降の昭和から平成のゲーム機が動くか点検すること。

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