プログラマブルな金融サービスを構築するStripeは、日本を含む世界各国のビジネスリーダー約2000名を対象に、価格戦略の最新トレンドを調査したレポートを発表した。
このレポートでは、価格設定の俊敏性 (アジリティ) と収益成長に強い相関関係があることが明らかになったという。急成長している企業は、収益化戦略を頻繁に変更しており、リーダーの84%がこの慣行を「主要な競争優位性」と見なしていることがわかった。
急成長企業の最新価格戦略リスト
急成長企業が採用する価格設定モデルには、いくつかの体系やモデルがある。主なものは次の通り。
・ハイブリッド料金体系:月額固定のサブスクモデルに追加の従量課金を組み合わせるなどふたつ以上の価格モデルを組み合わせた複合モデル。
・従量課金の料金体系:顧客が使用した分だけを支払う「ペイ・パー・ユース」または「消費ベースモデル」。
・ユーザー数課金型 (シートベース) 価格設定:製品やサービスにアクセスできる個々のユーザー (シート) 数によってコストが決定されるモデル。
・成果連動型価格設定:製品やサービスの使用によって達成された成果や結果に基づいて顧客に請求するモデル。
・ダイナミック・プライシング:リアルタイムの市場需要に応じて製品やサービスの価格が柔軟に変動するモデル。
今回の調査では、急成長している企業を際立たせる価格設定の特徴と主な内容も明らかになった。
・ハイブリッド型価格設定の採用:予測可能な収益と柔軟性のバランスを取るために純粋なサブスクリプション型からハイブリッド型 (サブスクリプション + 従量課金など) の価格設定へ移行しているケースがある。企業がハイブリッド型価格設定を使用する割合は、グローバル平均の36%よりも高い57%だった。コラボレーションデザインプラットフォームを提供しているFigmaは、従来のユーザー数課金型価格設定によるサブスクリプションと新しいAI機能に対応した従量課金クレジットの価格設定を組み合わせて提供しているという。
・価格設定を継続的な実証実験と捉える:価格設定を一度きりの決定ではなく、継続的な実証実験のプロセスとみており、過去2年間に3回以上も価格変更を実施した割合は、グローバル平均の33%の2倍の67%に達していた。
・顧客の成果と価格設定を連動させる:今回の調査に回答したビジネスリーダーの77%は、「顧客は成果連動型の価格設定を望んでいる」と回答。その一方で実際に提供しているのは32%に過ぎないことも判明した。急成長企業は、このギャップを埋めるために顧客の「サービス使用量」の定義を継続的に修正して、顧客が受け取る価値をより良くする努力をしている。
・AIエージェントの価格設定に成功:急成長企業は、AIエージェントを提供する傾向が強く、成果連動型や作業ベースの価格設定など洗練されたモデルによって、エージェントがもたらす価値を的確に捉えている。カスタマーサービスプラットフォームのIntercomは、柔軟な請求プラットフォームでサブスクリプションの階層型プランと従量課金の料金体を組み合わせて、新しいAIエージェントの価格設定を進化させている。
・AI搭載のダイナミック・プライシングツールを活用:急成長企業は、AI搭載ツールを使用して価格設定の実験を自動化・加速させて、ダイナミック・プライシングやパーソナライズされたプランの提供などの戦略を高い割合で実施。急成長企業によるパーソナライズされたプランの提供の採用率は35%だが、これはグローバル平均の24%を上回る割合だったという。
AIや価格戦略トレンドへの対応に遅れが見える日本企業
日本の調査結果では、グローバル平均と違いが見られた。特に価格設定が収益や顧客の目標に「適合している」と感じている日本企業は28%で、グローバル平均の58%を30ポイントも下回っていた。
AI製品の提供を「検討していない」企業は42%で、こちらもグローバル平均の20%を下回っている。ダイナミック・プライシングをトレンドと捉えている企業も55%で、グローバル平均の80%と差があった。
これはAIや最新トレンドへの対応の遅れが浮き彫りになった形で、日本市場の価格設定の最適化やAIの収益化を加速する柔軟なソリューションの必要性を感じさせた。価格設定変更の障壁として「時間やリソースの不足」を挙げた日本企業は26%で、グローバル平均の11%と比較して2倍以上だった。
AIエージェントが提供する価値をどう測定すべきか「まだわからない」と回答した企業もグローバル平均が11%だったのに対して日本企業は27%だった。日本の企業は、洗練されていながらも使いやすく、価格体系を容易に管理・変更できる柔軟なソリューションを早急に構築していく必要がありそうだ。
構成/KUMU







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