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インパルスコントロール障害とは?怒りやスリルの衝動が暴走する「脳の病」の正体

2025.12.11

衝動的に行動してしまう背景には、単なる性格ではなく「インパルスコントロール障害(衝動制御障害)」が潜んでいる場合があります。行動前に強い緊張や焦りが高まり、実行した瞬間だけ解放されるという特徴があり、放置すると悪循環に陥ることも。本記事では性格的衝動との違いや代表的な症状を解説します。

「ダメだとわかっているのに、止められない…」

その行動の直前に、言葉にできない不快な緊張感や、胸がざわつくような焦りを感じてはいませんか?

単なる性格の問題や我慢不足と思われがちですが、実はその背景には「インパルスコントロール障害(衝動制御障害)」という脳の機能に関する病が潜んでいる可能性があります。

本記事では、誰にでもある性格的な衝動性と、治療が必要な心の病との違いについて解説します。

インパルスコントロール障害(衝動制御障害)とは

インパルスコントロール障害(衝動制御障害)とは、自分や他人が傷つくと頭ではわかっていても、特定の行動をしたいという激しい欲求をどうしても抑えられなくなる心の病気のことです。

私たちは普段、何かをしたくなっても「今はダメだ」「これをしたら後で困る」と理性のブレーキをかけて我慢することができます。しかし、この心の病があると、その心のブレーキが故障してしまったかのように、衝動的な行動を止めることができなくなるのです。

この心の病の大きな特徴は、行動を起こす直前に強い緊張感やイライラ(不快な気分)が高まり、行動を実行した瞬間にだけ、一時的な解放感や快感を覚える点です。

これは単なる性格や忍耐不足ではなく、脳の神経機能の調整がうまくいかなくなっている状態であり、適切な治療が必要な病気と考えられています。

インパルスコントロール障害(衝動制御障害)の代表的な種類と症状

ここでは、代表的な3つのタイプと、その他の行動についてご紹介します。

1.間欠性爆発性障害(急にキレる)

些細なきっかけで、突然激しい怒りが爆発します。大声で怒鳴ったり、物を壊したり暴力を振るったりしますが、発作が治まると「なぜあんなことをしてしまったのか…」と深く後悔します。

2.窃盗症(万引きを繰り返す)

お金や物が欲しいわけではなく、盗む瞬間のスリルや、緊張からの解放を求めて万引きをしてしまいます。盗んだ物自体には関心がないことが多く、捨ててしまうこともあります。

3.放火症(火への執着)

火を見たい、騒ぎを感じたいという衝動から放火をしてしまいます。誰かへの恨みなどではなく、火そのものに異常な興味や興奮を感じてしまうのが特徴です。

4.その他の関連する行動

ギャンブル、抜毛(髪を抜く)、買い物依存なども、不快なストレスを消すために行動がやめられなくなる点で、この心の病と深く関わっています。

性格的な衝動性との違い

「ついカッとなった」「衝動買いをした」という行動は誰にでもありますが、それが性格によるものなのか、心の病によるものなのかを見分けるには、行動の動機やコントロールできるかどうかに注目する必要があります。

主な違いを3つのポイントに分けて説明します。

1.行動のきっかけ――「楽しみ」を求めるか、「苦しさ」から逃げるか

性格的に衝動的な人は、単純に「楽しそう」「欲しい」「腹が立つ」といった素直な感情や欲求がきっかけで行動します。そこには、ポジティブな期待や、直接的な感情の発散があります。

一方でインパルスコントロール障害の人は、行動の前に強烈な不快な緊張感や、ムズムズする焦りを感じています。何かが欲しいからというよりも、その苦しい緊張状態から逃れるために、やむを得ず行動を起こしてしまうのです。

例)買い物のケース
・性格的な人:「この服、すごく可愛いから欲しい!」と思って衝動買いをする。
・心の病の人:「イライラや緊張が限界で、何かを買って気を紛らわせないと頭がおかしくなりそう」という切迫感で買う(買った物自体には興味がないことも多い)。

2.コントロール力――「ブレーキ」が効くか、効かないか

性格的な衝動性であれば、状況が悪ければ我慢することができます。理性のブレーキは正常に機能しているため、リスクとリターンを天秤にかけることができるのです。

しかしインパルスコントロール障害の場合、ブレーキが壊れているような状態です。「これをしたら警察に捕まる」「仕事を失う」と頭ではわかっていても、衝動のエネルギーが強すぎて制御できず、行動してしまいます。

例)怒りのケース
・性格的な人:上司に腹が立っても、「ここで怒鳴ったらクビになる」と考えて我慢したり、言い方を工夫したりする。
・心の病の人:相手が上司であろうと誰であろうと、怒りのスイッチが入った瞬間に理性が吹き飛び、物を投げたり暴言を吐いたりしてしまう。

3.行動後の結果――「反省」で終わるか、「悪循環」に陥るか

性格的な衝動性による行動のあとは、後悔することはあっても、「あースッキリした」という満足感や、「次は気をつけよう」という反省で終わることが多いです。

インパルスコントロール障害の場合は、行動した瞬間に深い解放感を得ますが、その後すぐに激しい自己嫌悪や罪悪感に襲われます。「自分はダメな人間だ」と落ち込みますが、そのストレスでまた緊張が高まり、同じ行動を繰り返してしまうという悪循環に陥りやすいのが特徴です。

例)ギャンブルやゲームのケース
・性格的な人:「今月は使いすぎちゃったな。来月は節約しよう」と反省し、行動を修正できる。
・心の病の人:やった直後は「やっと楽になれた」と感じるが、すぐに「またやってしまった」と絶望する。しかし、その絶望感(ストレス)を消すために、またギャンブルやゲームに逃げ込んでしまう。

文・構成/藤野綾子

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精神保健福祉士、産業カウンセラー、EAPメンタルヘルスカウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種の資格を持つ。大学に通い直し、心理の国家資格取得に向けて勉強中。教育施設、就労移行施設などでカウンセラー研修、実務も続けている。

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