働き方改革の影響もあって、多くの企業で労働時間の管理が厳格化している昨今。様々な仕事がある中で、特に残業時間が少ない業種はいったい何だろうか?
転職サービス「doda」はこのほど、20~59歳のビジネスパーソン15,000人を対象に「2025年の平均残業時間の実態」を調査し、その結果を発表した。
平均残業時間は20.6時間/月で、前回より0.4時間減少
今回(2025年4~6月の月平均)の平均残業時間は20.6時間で、前回(2024年4~6月の月平均)の21.0時間から0.4時間減少した。2023年から3年連続のマイナスで、残業時間は減少傾向にあるといえるだろう。
2019年からの7年間の平均残業時間の推移を見てみると、2019年は24.9時間だったが、働き方改革関連法が施行されたことやコロナ禍の影響もあり、2020年と2021年にはそれぞれ20.6時間、20.8時間と減少した。その後、コロナ禍で停滞していた経済活動の回復を受けて、2022年には22.2時間へと増えたものの、2023年以降は3年連続で再び減少へと転じている。
平均残業時間の少ない職種:1位は「医療事務」で、10.5時間
残業時間の少ない職種1位は前回と同様に「医療事務」で、前回の10.3時間から大きく変わらず0.2時間増加し10.5時間となった。2位には「一般事務」が、前回の15.2時間から4.2時間減少し、11.0時間でランクインしている。前回2位だった「貿易事務」は、前回の11.1時間から3.9時間増加し、15時間で11位となった。
職種分類で見ると、上記の職種のほか4位の「営業事務」(12.1時間)や5位の「秘書/受付」(12.3時間)など「事務/アシスタント」が10位までに5職種、20位までには7職種ランクインし、いずれも最多を占めている。
TOP20の中で前回から特に大きく減った職種は、7位の「品質管理/品質保証(医療系)」でした。前回は27.9時間、今回は12.8時間で、15.1時間減少した。
平均残業時間の多い職種:1位は「総合商社の営業」で、29.8時間
残業時間の多い職種1位は「総合商社の営業」で、前回の29.3時間から0.5時間増加し、29.8時間となった。前回最も多かった「インフラコンサルタント」は、前回の39.4時間から16.7時間と大幅に減少し、22.7時間でTOP20位圏外だった。また、2024年4月の法改正で上限規制が適用された運送業は、前回の29.0時間から1.0時間減少し、28.0時間という結果になった。
前回は、月の残業時間が平均30時間を超える職種が6職種あったが、今回該当する職種はなかった。前回比べると、残業時間の多い職種も、全体平均と同様に残業時間の水準は減少傾向にあることがわかる。
年代×職種分類別の平均残業時間:すべての年代で「事務/アシスタント」が最少
年代別に平均残業時間を見ると、前回と比べて減ったのは20代(1.5時間減少、前回:18.0時間→今回:16.5時間)、30代(0.5時間減少、前回:20.2時間→今回:19.7時間)、40代(0.6時間減少、前回:23.1時間→今回:22.5時間)でした。増えたのは50代(0.3時間増加、前回:21.3時間→今回:21.6時間)となっている。
20代が他年代と比べて減っている背景には、ワーク・ライフ・バランスを重視する傾向の強いZ世代など若年層の採用強化のために、残業時間の削減をより意識した人事制度の導入を進める企業の動きなどがあると推測できる。
年代×職種分類別で平均残業時間を見ると、すべての年代で「事務/アシスタント」が最少になった。最も多い職種は、20代では「企画/管理」(24.7時間)、30代では「モノづくりエンジニア」と「建築/土木系エンジニア」(23.9時間)、40代では「モノづくり系エンジニア」(27.1時間)、50代では「建築/土木系エンジニア」(24.1時間)となっている。
解説:doda編集長 桜井 貴史氏
2025年の調査では、全体の平均残業時間が月20.6時間となり、3年連続で減少しました。働き方改革や業務のデジタル化が進み、「0~5時間未満」の残業層が最多となるなど、短時間勤務が定着しつつあるといえるでしょう
職種別では、AIやRPAによる自動化が進みやすい「事務/アシスタント」が最も少なく、TOP10のうち5職種がこの分類に含まれています。一方、最も多い「総合商社の営業」は、グローバル対応や複雑な商談、長時間の顧客折衝など、業務の性質上、残業が避けられない状況が影響していると考えられます。
残業時間の変化は技術の進展や職種の特性、ほかにも法制度の影響や世代間の役割分担等が複雑に絡み合った結果であると推測できます。こうした状況の中で、自分に合った、そして自分が望むはたらき方やキャリアの方向性を見極めるためには、自身のキャリア形成に主体的に取り組んでいく「キャリアオーナーシップ」の発揮がますます重要になるでしょう。
【解説者プロフィール】doda編集長 桜井 貴史(さくらい・たかふみ)
新卒で大手人材会社に入社し、一貫して国内外の学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。2016年11月、パーソルキャリア株式会社に中途入社。
同年、株式会社ベネッセホールディングスとの合弁会社、株式会社ベネッセi-キャリアに出向、新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げを牽引し、初代dodaキャンパス編集長に。その後、同社 商品サービス本部 本部長として、キャリア講座やアセスメントをはじめとした、大学生向けサービスの責任者を務める。
2023年4月、doda副編集長 兼 クライアントP&M本部 プロダクト統括部 エグゼクティブマネジャーに就任し、法人向け採用支援プロダクト全体を管掌。2024年4月、doda編集長に就任。サービスを通じてこれまで60万人以上の若者のキャリア支援に携わり、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している。
<調査概要>
【対象者】20~59歳の男女
【雇用形態】正社員
【調査方法】ネットリサーチ会社を利用したインターネット調査(ネットリサーチ会社保有のデータベースをもとに実施、doda会員登録の状況については不問)
【実施期間】2025年8月1日~8月8日
【有効回答数】15,000件
※ウェイトバック:正社員の地域・年代・性別に合わせて実施
※記事中の割合データは、小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%にならない場合がある
出典元:転職サービス「doda」
構成/こじへい







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