■連載/阿部純子のトレンド探検隊
1962 年に発売された「味の素 KK コンソメ」(以下、「コンソメ」)」は63年にわたるロングセラー商品。 年間販売金額は約82億円、82%と圧倒的なマーケットシェアを誇る。(出典:インテージ SRI+ コンソメ・ブイヨン市場 24年4月~25年3月 販売容量シェア)
2020年度はコロナによる内食需要増の影響もあり伸長したが、2021年度以降はその反動を受けて縮小を続け、2024年度はコロナ前の水準(2019年)に。再び拡大できるのか、縮小が続くか、同社の「コンソメ」事業にとって重要な局面を迎えた2025年、秋季から17年ぶりに品質改訂されたリニューアル品が発売される。
コンソメは何から作られる?コンソメとブイヨンの違いは?
コンソメはフランス語で「完成された」という意味を持ち、もとは宮廷料理で出されていたスープで、フレンチシェフがコンソメスープを作るためには、少なくとも1日以上の時間がかかる、複雑な工程を要する料理。
コンソメとブイヨンは混同されがちだが、コンソメは完成されたスープで、ブイヨンは肉や香味野菜、ハーブ等を煮込んだ洋風だしのこと。
1962年の高度経済成長期に発売された当初は、食の洋風化が進む中でパンにも合う洋風スープの素として「味の素 KK コンソメスープ」として発売。1キューブで2人分の洋風スープができる製品設計となっており、1969年には顆粒タイプも発売された。
食の洋風化がさらに進む中で、コンソメはスープとして用いられるだけではなく、調味料として利用されるケースが増加。調理のベースとして使い勝手の良いコンソメ「クノール コンソメ」が発売された。
「クノール コンソメ」は「コンソメ」に比べて、食塩の配合量が少ない、砂糖が入っていない、肉エキスが多く含まれている、香辛料の配合が少ないといった特徴がある。
おいしいコンソメスープを作るために最も重要な工程は、素材を長時間鍋で煮込むということ。ひとつの鍋で肉と野菜を長時間煮込むことで、肉や野菜のうま味やコクが混ざり合いおいしさが生まれる。
「コンソメ」の原料は牛肉、鶏肉、白菜、玉ねぎ、ニンニク、ショウガが使われる。白菜は本来のコンソメには含まれていないが、日本人が好む、コンソメ味に近づけるために使用。鶏肉は国産鶏を一部使用し丸鶏は骨ごと使っている。牛肉はニュージーランド産(一部オーストラリア産を含む)の1stグレードの肉を使用し、「コンソメ」に必要な本格的な肉だし感を再現。ニンニク、ショウガは仕込み前に焼くことで香りを引き出している。
「家庭で5L分のコンソメスープを手作りしようとすると約7,800円分の食材が必要となり、調理に1日以上かかります。キューブなら17キューブ(約300円)をポンと鍋に入れるだけですので、コスパ、タイパは圧倒的に違います。
『コンソメ』ブランドのもうひとつのこだわりが形状です。キューブ形状のコンソメが市場で圧倒的に少ないのは製造難易度の高いことが理由にあります。輸送中の様々な衝撃に耐えることができ、なおかつお使いの際にすぐに溶ける絶妙なキューブの固さを日夜研究しています。約4年に1回のペースで、キューブの固さは改良されており、ユーザーの使い勝手向上を実現しています。
現在のキューブは70℃のお湯で2分間混ぜるとしっかり溶けるように設計されており、スープや煮込み料理を作る際の煮込み時間よりも短い時間で溶けるように作られています。コンソメに使われている脂は本来水に溶けにくいものですが、水やお湯に溶けやすくするために『造粒(粒を作ること)』しています。これによって、スープだけではなく炒め物や副菜にコンソメを使ってもダマにならず、均等にコンソメ味で味付けができます」(以下「」内、味の素株式会社 マーケティング担当 関口雄太氏)
「コンソメ」は、82%という圧倒的な市場シェアを誇るものの、売上はコロナ禍以降伸び悩んでおり、この状況を打開するため、17年ぶりに製品の味を改良し、若年層や単身世帯をターゲットにした新パッケージ戦略を展開することで、25年4月~9月では前年比106%(味の素 出荷金額)の成長率となり、V次回復を目指している。(出典:インテージ SRI+ コンソメ・ブイヨン市場 24年4月~25年3月 販売容量シェア)
「17年ぶりのリニューアルは、家庭での調理スタイルの変化に対応するために実施しました。ここ数年の物価高による節約志向の高まりで、家にストックした食材でスープを作るため、具だくさんスープが主流となり、従来の味覚品質では味が決まりきらず、塩コショウ等で調整いただいていることが多くありました。
長年の味を変える最大の挑戦は、既存顧客を失わず新規顧客を獲得するための味の着地点を見極めることでした。3年の開発期間と100回以上の社内議論、約400回の試作を重ねて、120名の消費者テストを実施しました。
今回の改訂では、塩分量を2.5gから2.4gへ微減させつつ、牛肉のだし感や脂を際立たせることで最初に感じるうま味やコクをより強く感じるように再設計して、これひとつで味が決まるというニーズに応えました。
単身世帯は量が調整できる顆粒タイプを使う方が多かったのですが、若年層へのアピールとして、『くまのプーさん』100周年に合わせたディズニーパッケージ(各4デザイン)を12月から順次展開する計画です」







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